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Execute.02:巴里より愛を込めて -From Paris with Love-
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『正面、曲がった先に五人だ。回避は不可能、向こうも君らに気付いてる。何とかするんだ、二人とも』
「簡単に言ってくれるよな、畜生め!」
廊下を全速力で走り抜けながら零士は毒づいて、横っ飛びになりながら突き当たりの曲がり角へと躍り出る。
「んなくそ!」
その先にはミリィの言った通り、五人の警備員が完全武装で待ち構えていた。だが零士は横っ飛びになりながら、空中でベネリM4自動ショットガンを構え。そうして何度も連続し引鉄を引き、連中にダブルオー・バックショット散弾で織り成す豪雨の洗礼を浴びせてやる。
そうして着地した零士が地面を転がり、背の高い大きな植木鉢の後ろに隠れるまで。それまでに撃ち放った散弾で五人の内二人を屠れていた。だが後の三人は警戒心が強かったのか、一歩引いた所に隠れていたから、散弾の豪雨から難を逃れていた。
「――――ノエル!」
ロングコートのポケットから取り出した新しいショットシェルを、一発ずつベネリM4に突っ込んで補弾しつつ零士が叫べば。
「っ!!」
すぐさま曲がり角――つい先刻、零士が飛び出してきたところ――から半身を乗り出したノエルが、膝を突きしゃがみ込んだ格好で構えたMP5K-PDWの銃口を奴らに向けて突き出す。
そうすれば、すぐさま彼女の構えたMP5Kの銃口に火花が迸り。隙を突いて零士を仕留めようと身を乗り出してきた残りの三人を怯ませ、その動きを制した。
単発のセミオートで、タンタンタンと短い間隔で一発ずつの発砲だ。だがその狙いは正確で、ノエルは最初の一撃で三人の内一人、その左の二の腕を撃ち貫いている。慣れない拾い物の獲物での、そんな正確な射撃を目の前で見せつけられてしまっては。零士も彼女の実力に舌を巻き、そして内心で認めざるを得ないと思ってしまう。
――――ノエル・アジャーニは、確かにミラージュのコードネームに相応しいだけの実力と素養、そして伸びしろがある。
弾倉交換までに残りの三人の中で、既に二人を仕留めている時点でそれは明らかだ。舞い踊る熱い空薬莢が、今はまるでノエルを際立てるバック・ダンサーのように見えてしまう。
しかも、これだけの激しい鉄火場に身を投じているというのに、MP5Kの細い銃床に頬を着ける彼女の横顔は、普段と同じように……いや、いっそ普段よりも冷静極まるクールな表情をしていた。
「…………」
漂う硝煙の香りに刺激され、銃口で瞬く激しい火花に可憐な横顔を照らされて。吹き付ける空調の微風にプラチナ・ブロンドの金糸みたいな髪を小さく揺らしながら、その手に握り締めた小さな獲物で殺戮の嵐を撒き散らす。そんなノエルの横顔に、いつの間にか零士は見とれてしまっていた。それこそ、ショットシェルを装填する左手が止まってしまうぐらいに。
それほどまでに、戦う彼女の横顔は美しかった。嘗てのミラージュが思い起こされるほどに、戦う彼女の姿は戦乙女かと見紛うほどに美しいものだった。
「何ボーッとしてんのさ、レイ!」
と、空になった弾倉を足元に投げ捨てる彼女に叱られ、やっとこさ零士はハッと我に返る。
「一応君の方が先輩なんだから、あんまり僕にばっかり押し付けない!」
「悪かったよ、ああクソッ!」
新たな弾倉を差し込みながらで叱りつけてくるノエルに詫び、そして自らを叱咤するように毒づき。零士は左手に残っていたショットシェル最後の一発を装填すれば、ベネリM4を構えながら立ち上がった。
植木鉢の陰から飛び出すように躍り出て、零士は引鉄を絞る。鈍器で殴られたような強い反動が零士の右肩を銃床越しに襲えば、赤色をしたプラスチックの空薬莢が蹴り出され舞い踊って。零士の構えるベネリM4の、12ゲージ径のズ太い銃口の睨む先で、大きな散弾の粒を一身に浴びた警備員が文字通り後ろに吹っ飛んでいく。当たり所の関係か、左の肩口から先を千切れ飛ばしながら吹っ飛んだその警備員は、まず間違いなくもう余命幾ばくもないような虫の息で横たわる。
「次!」
零士はそんな風に吹っ飛び横たわる男に一瞥もくれないまま、走りながらで銃口の向きを逸らし。最後に残った一人へ、やはり12ゲージのダブルオー・バックショット散弾を叩き込んだ。こちらの男は一度に二発分を胸に喰らい、案の定同じように後ろへ激しく吹っ飛ばされてしまう。胸と腹のバイタルゾーンを見るも無惨な挽き肉に加工されてしまったその男は、見るまでも無く即死だった。
『クリア、急いでくれ二人とも』
「急げって言われても、これだけ熱烈な歓迎じゃあな」
周囲を警戒しつつ、更にロングコートのポケットから左手で引っ張り出した新しいショットシェルをベネリM4に装填しながらで、零士がそんなミリィの言葉にボヤく。
「急ぎたいのは山々だ。かといってこれじゃあ、まるで軍隊を相手にしてる気分だ」
『実際、ある意味で間違ってはいないかもね』
「冗談を言ってる場合かよ、ミリィ」
呆れ気味に零士が言うと、ミリィは『悪かったよ』と返し、
『……とにかく、急いでくれ。今でこそターゲット両名は応接間から動いてはいないが、いつ逃走を始めるか分からない。これだけ派手に暴れ始めた以上、時間との勝負だ』
「だろうな」零士が頷く。「生憎、プランBには慣れっこだ。どうにか切り抜けてみせるさ」
『そうしてくれ、僕も僕で精いっぱいのサポートはさせて貰うつもりだから』
「頼りにしてるぜ、守護天使様よ」
冗談でも言うかのように軽薄な口調で零士が言えば、弾倉交換を終えたノエルがMP5Kを携えて彼の傍に合流してくる。
「ノエル、弾はまだ?」
「大丈夫、予備弾倉はあと一本ある。レイの方は?」
「大体、一二発ぐらいってところかな。コイツが尽きる前に、ターゲットの顔を拝めることを祈りたいね」
「ああ、その通りだ。――――行こうレイ、僕がフォローする」
「背中は預けたぜ。……相棒」
「簡単に言ってくれるよな、畜生め!」
廊下を全速力で走り抜けながら零士は毒づいて、横っ飛びになりながら突き当たりの曲がり角へと躍り出る。
「んなくそ!」
その先にはミリィの言った通り、五人の警備員が完全武装で待ち構えていた。だが零士は横っ飛びになりながら、空中でベネリM4自動ショットガンを構え。そうして何度も連続し引鉄を引き、連中にダブルオー・バックショット散弾で織り成す豪雨の洗礼を浴びせてやる。
そうして着地した零士が地面を転がり、背の高い大きな植木鉢の後ろに隠れるまで。それまでに撃ち放った散弾で五人の内二人を屠れていた。だが後の三人は警戒心が強かったのか、一歩引いた所に隠れていたから、散弾の豪雨から難を逃れていた。
「――――ノエル!」
ロングコートのポケットから取り出した新しいショットシェルを、一発ずつベネリM4に突っ込んで補弾しつつ零士が叫べば。
「っ!!」
すぐさま曲がり角――つい先刻、零士が飛び出してきたところ――から半身を乗り出したノエルが、膝を突きしゃがみ込んだ格好で構えたMP5K-PDWの銃口を奴らに向けて突き出す。
そうすれば、すぐさま彼女の構えたMP5Kの銃口に火花が迸り。隙を突いて零士を仕留めようと身を乗り出してきた残りの三人を怯ませ、その動きを制した。
単発のセミオートで、タンタンタンと短い間隔で一発ずつの発砲だ。だがその狙いは正確で、ノエルは最初の一撃で三人の内一人、その左の二の腕を撃ち貫いている。慣れない拾い物の獲物での、そんな正確な射撃を目の前で見せつけられてしまっては。零士も彼女の実力に舌を巻き、そして内心で認めざるを得ないと思ってしまう。
――――ノエル・アジャーニは、確かにミラージュのコードネームに相応しいだけの実力と素養、そして伸びしろがある。
弾倉交換までに残りの三人の中で、既に二人を仕留めている時点でそれは明らかだ。舞い踊る熱い空薬莢が、今はまるでノエルを際立てるバック・ダンサーのように見えてしまう。
しかも、これだけの激しい鉄火場に身を投じているというのに、MP5Kの細い銃床に頬を着ける彼女の横顔は、普段と同じように……いや、いっそ普段よりも冷静極まるクールな表情をしていた。
「…………」
漂う硝煙の香りに刺激され、銃口で瞬く激しい火花に可憐な横顔を照らされて。吹き付ける空調の微風にプラチナ・ブロンドの金糸みたいな髪を小さく揺らしながら、その手に握り締めた小さな獲物で殺戮の嵐を撒き散らす。そんなノエルの横顔に、いつの間にか零士は見とれてしまっていた。それこそ、ショットシェルを装填する左手が止まってしまうぐらいに。
それほどまでに、戦う彼女の横顔は美しかった。嘗てのミラージュが思い起こされるほどに、戦う彼女の姿は戦乙女かと見紛うほどに美しいものだった。
「何ボーッとしてんのさ、レイ!」
と、空になった弾倉を足元に投げ捨てる彼女に叱られ、やっとこさ零士はハッと我に返る。
「一応君の方が先輩なんだから、あんまり僕にばっかり押し付けない!」
「悪かったよ、ああクソッ!」
新たな弾倉を差し込みながらで叱りつけてくるノエルに詫び、そして自らを叱咤するように毒づき。零士は左手に残っていたショットシェル最後の一発を装填すれば、ベネリM4を構えながら立ち上がった。
植木鉢の陰から飛び出すように躍り出て、零士は引鉄を絞る。鈍器で殴られたような強い反動が零士の右肩を銃床越しに襲えば、赤色をしたプラスチックの空薬莢が蹴り出され舞い踊って。零士の構えるベネリM4の、12ゲージ径のズ太い銃口の睨む先で、大きな散弾の粒を一身に浴びた警備員が文字通り後ろに吹っ飛んでいく。当たり所の関係か、左の肩口から先を千切れ飛ばしながら吹っ飛んだその警備員は、まず間違いなくもう余命幾ばくもないような虫の息で横たわる。
「次!」
零士はそんな風に吹っ飛び横たわる男に一瞥もくれないまま、走りながらで銃口の向きを逸らし。最後に残った一人へ、やはり12ゲージのダブルオー・バックショット散弾を叩き込んだ。こちらの男は一度に二発分を胸に喰らい、案の定同じように後ろへ激しく吹っ飛ばされてしまう。胸と腹のバイタルゾーンを見るも無惨な挽き肉に加工されてしまったその男は、見るまでも無く即死だった。
『クリア、急いでくれ二人とも』
「急げって言われても、これだけ熱烈な歓迎じゃあな」
周囲を警戒しつつ、更にロングコートのポケットから左手で引っ張り出した新しいショットシェルをベネリM4に装填しながらで、零士がそんなミリィの言葉にボヤく。
「急ぎたいのは山々だ。かといってこれじゃあ、まるで軍隊を相手にしてる気分だ」
『実際、ある意味で間違ってはいないかもね』
「冗談を言ってる場合かよ、ミリィ」
呆れ気味に零士が言うと、ミリィは『悪かったよ』と返し、
『……とにかく、急いでくれ。今でこそターゲット両名は応接間から動いてはいないが、いつ逃走を始めるか分からない。これだけ派手に暴れ始めた以上、時間との勝負だ』
「だろうな」零士が頷く。「生憎、プランBには慣れっこだ。どうにか切り抜けてみせるさ」
『そうしてくれ、僕も僕で精いっぱいのサポートはさせて貰うつもりだから』
「頼りにしてるぜ、守護天使様よ」
冗談でも言うかのように軽薄な口調で零士が言えば、弾倉交換を終えたノエルがMP5Kを携えて彼の傍に合流してくる。
「ノエル、弾はまだ?」
「大丈夫、予備弾倉はあと一本ある。レイの方は?」
「大体、一二発ぐらいってところかな。コイツが尽きる前に、ターゲットの顔を拝めることを祈りたいね」
「ああ、その通りだ。――――行こうレイ、僕がフォローする」
「背中は預けたぜ。……相棒」
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