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第二条:仕事は正確に、完璧に遂行せよ。
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「……はぁ」
美代学園への突入と学園の制圧が"スタビリティ"の傭兵たちによって開始される中、そんな傭兵たちの手によって教師や生徒たちが無慈悲に殺されていく光景を遠目に眺めながら、新校舎の廊下に立つクララは独り、辟易したように小さく溜息をついていた。
「こういうのって、好きじゃないんだよね…………」
心の奥底から出てきた言葉だった。クララ自身、こういった一方的な殺しというか、無抵抗で無関係の人間を殺すことは好まない。寧ろ、嫌いな部類に入る。
それが、今目の前で繰り広げられている光景はどうだ。殆ど虐殺に等しいような、いや虐殺そのものではないか。逃げ惑う生徒を撃ち殺し、泣き喚いて命乞いをする少女をいたぶるようにじわじわと痛めつけてから殺し、抵抗を試みた勇気ある教師は、大口径ライフル弾で頭を柘榴みたいに原型が残らないほどに吹き飛ばされてしまう。
正直、クララは眼を背けたかった。というか、知らず知らずの内に背けていた。それ程までに嫌悪する行為が目の前で繰り広げられていて、そしてそんな嫌悪する行為の一端に自分も関わってしまっていることが、何より辛かった。
「……嫌だ、嫌だ。嫌だね、本当に…………」
吐き捨てるように、クララがひとりごちる。仕事の上で、雇われたから仕方なく付き合ってはいるが、正直今すぐにでもクララは帰りたい気分だった。こんな馬鹿げた仕事内容だと分かっていれば、最初からこんな仕事、"スタビリティ"からの仕事なんて蹴っていたのに。
「そうかァ? 俺は楽しいけどな」
そんな嫌悪感丸出しのクララのすぐ傍で、ウォードッグがニヤニヤと嬉しそうに嗤いながら彼女の独り言に言い返していた。
ちなみにウォードッグ、今は丸刈りの体育教師の上にマウントを取り、ニコニコと嗤いながらそれを素手で楽しそうに撲殺している。クララとは異なり、ウォードッグは根っからの外道、殺しに道楽と快楽を見出すタイプの、ある意味でクララとは正反対の人間だった。
「君が悪趣味なだけだよ、ウォードッグ」
そんなウォードッグをチラリと横目に見て、小さな溜息をつきながらクララが呆れたように言い返す。
「……ん?」
すると、クララは近くで物音がするのに気が付いた。そして、誰かの気配もする。
一応用心して腰のホルスターから愛用のベレッタ・モデル70"ピューマ"を抜きながら、その気配の方へと近寄っていく。すると――――。
「ひっ……!」
そこには、茜色の髪の少女が縮こまるようにして隠れていて。ひとたびクララに見つけられると、震えた瞳で背の低い彼女を見上げた。まるで、命乞いするかのように。
「……はぁ」
そんな彼女――――クララは知らぬことだが、桐谷朱音という彼女の姿をクララは見ると、疲れたような溜息をつきながら、握り締めていたベレッタ・ピューマを腰のホルスターに戻した。
「ホントに、嫌だねこういう仕事って……」
ひとりごちながら、クララは朱音に背を向けて。そして一度振り返ると、
「僕は、君を見なかったことにするよ。だから君は、他の誰にも見つからないように頑張って隠れてるんだ」
「えっ……?」
戸惑う朱音に目もくれず、そのままクララは彼女の前から歩き去って行ってしまう。何事も無かったかのように、最初から誰も居なかったように装って。
「よォ、クララ。誰か居たのかァ?」
そうしてウォードッグの方に戻れば、お楽しみを終えた彼は既に立ち上がっていて。血にまみれた指無しグローブを付けた手をブンブンと軽く振りながら、戻ってきたクララに声を掛ける。
「誰も居ないよ」
クララはそんなウォードッグに素っ気ない態度で答え、もう一度大きな溜息をついた。
「…………」
やることも無いので、クララは片耳に付けたイヤホンから傭兵部隊の無線通信に意識を傾けてみた。
「……? 妙だね……」
ニヤニヤとするウォードッグに呆れた視線を向けながら無線通信を聞いていれば、すると妙な雰囲気が漂っていることにクララは気付いた。
――――無線通信に応答しない奴が、現れ始めているのだ。
「……?」
きっと、無線機が故障したか何かだろう。
そうは思うが、しかしクララの中で少しの疑念が渦巻いていた。そして同時に、妙な気配も感じ始めている。懐かしいような、そんな張り付く僅かな殺気を……。
「どうしたァ、クララ」
そんなクララの様子を怪訝に思ったのか、ウォードッグがクララに声を掛けてくる。しかしクララはそれに「ううん、なんでもない」とだけ答え、それ以上を言おうとはしなかった。
(――――まさか、ね)
彼女の知らないところで、一人の男が動き出そうとしていた。しかしそれを、クララもウォードッグもまだ気付けてはいなかった。
美代学園への突入と学園の制圧が"スタビリティ"の傭兵たちによって開始される中、そんな傭兵たちの手によって教師や生徒たちが無慈悲に殺されていく光景を遠目に眺めながら、新校舎の廊下に立つクララは独り、辟易したように小さく溜息をついていた。
「こういうのって、好きじゃないんだよね…………」
心の奥底から出てきた言葉だった。クララ自身、こういった一方的な殺しというか、無抵抗で無関係の人間を殺すことは好まない。寧ろ、嫌いな部類に入る。
それが、今目の前で繰り広げられている光景はどうだ。殆ど虐殺に等しいような、いや虐殺そのものではないか。逃げ惑う生徒を撃ち殺し、泣き喚いて命乞いをする少女をいたぶるようにじわじわと痛めつけてから殺し、抵抗を試みた勇気ある教師は、大口径ライフル弾で頭を柘榴みたいに原型が残らないほどに吹き飛ばされてしまう。
正直、クララは眼を背けたかった。というか、知らず知らずの内に背けていた。それ程までに嫌悪する行為が目の前で繰り広げられていて、そしてそんな嫌悪する行為の一端に自分も関わってしまっていることが、何より辛かった。
「……嫌だ、嫌だ。嫌だね、本当に…………」
吐き捨てるように、クララがひとりごちる。仕事の上で、雇われたから仕方なく付き合ってはいるが、正直今すぐにでもクララは帰りたい気分だった。こんな馬鹿げた仕事内容だと分かっていれば、最初からこんな仕事、"スタビリティ"からの仕事なんて蹴っていたのに。
「そうかァ? 俺は楽しいけどな」
そんな嫌悪感丸出しのクララのすぐ傍で、ウォードッグがニヤニヤと嬉しそうに嗤いながら彼女の独り言に言い返していた。
ちなみにウォードッグ、今は丸刈りの体育教師の上にマウントを取り、ニコニコと嗤いながらそれを素手で楽しそうに撲殺している。クララとは異なり、ウォードッグは根っからの外道、殺しに道楽と快楽を見出すタイプの、ある意味でクララとは正反対の人間だった。
「君が悪趣味なだけだよ、ウォードッグ」
そんなウォードッグをチラリと横目に見て、小さな溜息をつきながらクララが呆れたように言い返す。
「……ん?」
すると、クララは近くで物音がするのに気が付いた。そして、誰かの気配もする。
一応用心して腰のホルスターから愛用のベレッタ・モデル70"ピューマ"を抜きながら、その気配の方へと近寄っていく。すると――――。
「ひっ……!」
そこには、茜色の髪の少女が縮こまるようにして隠れていて。ひとたびクララに見つけられると、震えた瞳で背の低い彼女を見上げた。まるで、命乞いするかのように。
「……はぁ」
そんな彼女――――クララは知らぬことだが、桐谷朱音という彼女の姿をクララは見ると、疲れたような溜息をつきながら、握り締めていたベレッタ・ピューマを腰のホルスターに戻した。
「ホントに、嫌だねこういう仕事って……」
ひとりごちながら、クララは朱音に背を向けて。そして一度振り返ると、
「僕は、君を見なかったことにするよ。だから君は、他の誰にも見つからないように頑張って隠れてるんだ」
「えっ……?」
戸惑う朱音に目もくれず、そのままクララは彼女の前から歩き去って行ってしまう。何事も無かったかのように、最初から誰も居なかったように装って。
「よォ、クララ。誰か居たのかァ?」
そうしてウォードッグの方に戻れば、お楽しみを終えた彼は既に立ち上がっていて。血にまみれた指無しグローブを付けた手をブンブンと軽く振りながら、戻ってきたクララに声を掛ける。
「誰も居ないよ」
クララはそんなウォードッグに素っ気ない態度で答え、もう一度大きな溜息をついた。
「…………」
やることも無いので、クララは片耳に付けたイヤホンから傭兵部隊の無線通信に意識を傾けてみた。
「……? 妙だね……」
ニヤニヤとするウォードッグに呆れた視線を向けながら無線通信を聞いていれば、すると妙な雰囲気が漂っていることにクララは気付いた。
――――無線通信に応答しない奴が、現れ始めているのだ。
「……?」
きっと、無線機が故障したか何かだろう。
そうは思うが、しかしクララの中で少しの疑念が渦巻いていた。そして同時に、妙な気配も感じ始めている。懐かしいような、そんな張り付く僅かな殺気を……。
「どうしたァ、クララ」
そんなクララの様子を怪訝に思ったのか、ウォードッグがクララに声を掛けてくる。しかしクララはそれに「ううん、なんでもない」とだけ答え、それ以上を言おうとはしなかった。
(――――まさか、ね)
彼女の知らないところで、一人の男が動き出そうとしていた。しかしそれを、クララもウォードッグもまだ気付けてはいなかった。
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