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戦い
私の日常
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朝、私は起きた。素早く階段を降りて髪の毛をセットする。まだ開ききっていない目を覚ますために冷たい水を勢いよく顔にかける。
リビングに入った。
「おはよう。」
リビングにはお父さんとお母さんとお姉ちゃんがいる。いつも通りの朝だ。皆忙しなく歩き回っている。私の声なんて、聞こえるわけもない。そんなことでいちいち傷ついていたら我が家では生きていけないだろう。
席につき、パジャマのままご飯を食べる。菓子パンが並べられているのでそこから一番好きなアンパンをとる。
「やっぱ、これが一番。」
そう心の中でつぶやきながら頬張る。毎日アンパンを選ぶが、ちっとも飽きない。私の味方だ。
制服に着替えて、玄関から外へ出ると私は落ち着く。やっと、学校だ。この生活で一番落ち着くのは学校だ。そんなことを言う友達はいないが、別にどうでもいい。とりあえず落ち着くのだから。
「おはよう。」
「おはよう!」
友達は挨拶を交わしてくれる。が、幼なじみの美奈香以外はそれぐらいの関係。特に誰とも喋ることなく、席へ着くと、ちょうどチャイムがなった。
先生のしょうもない長い話が終わって、授業が始まる。今日は数学、英語、音楽、理科、社会という時間割。理科以外好きな教科が見当たらない。でも、楽しまなくては、身が持たない。家で楽しいことなど一つもないのだから。
家にいる時よりも短く感じる学校での生活は、今日もあっという間に終わってしまう。
学校帰りに美奈香と話している時ほど、短く感じることはない。なるべくゆっくりと歩いて、家まで帰る。帰りたくは、ない。
「ただいま。」
もちろん返事はない。出かけていて誰もいないとか、寝ているとか、そういうことではないのは言うまでもない。玄関で寝ている唯一の家族であるリマはこちらを見てしっぽを振ってくれている。
さぁ、嫌な時の始まりだ。
お父さんがいつものように酒に入り浸っている。私はリビングの入口でぼうっと突っ立っていた。まるで自分の番を待つかのように。
三十分後、お父さんはギロリと私を睨んで、低く声をだす。
「お前、いたのか。」
いつだったか、とふと思う。誕生日を家族で祝ったのは。今日は私の誕生日だが、家族は誰も覚えていない。姉は床に転がっている。くつろいでいるわけではない。まぁ、いつも通り殴られたのだろう。別にもう喚くほどのことでもない。私は随分と前にこの生活に慣れてしまった。次は、私だ。鈍い音が耳に響いて、姉の隣に転がり落ちる。
私の前にある姉の顔は元々綺麗な顔立ちだ。普通の家に生まれて、普通の生活をして、普通の高校生だったなら、姉はこの上ない美人に育っていたかもしれない。私にはそんな取り柄はひとつもないので、ただ虚しくなるだけだったが。
まぁ、これが世間で言う虐待ってやつだろう。助けて欲しいとか、自分が可哀想とか思わない。もう、どうでもよかったから。
痛みが引いてきて、私はむくりと立つ。リマの散歩のためだ。玄関まで行くと既に伏せをして散歩を待っていた。リードをつけて外へ出る。
「行ってきます。」
リマが我が家へ来たのは私が小四の時だ。公園に捨てられていたリマを私が責任をもって飼うことにした。だからリマのお世話をするのは私だけだ。散歩で楽しそうに歩いている背中を見ると、どうでも良くなる。ただ、この子が幸せでいてくれるなんて、なんて幸せなんだと思う。リマが笑っているように見えるだけで、私は少しだけ救われた。
家に帰って、リマにご飯をあげてリビングに入った。
「ご飯よ。」
お母さんはいつも転がっている私たちを無視して、ご飯を作る。と言っても、スーパーで売っている惣菜を並べて、お箸を置くだけだが。もう美味しいとか思わない。ただただお腹を満たす為だけにご飯をかき込んで、なんとも思わずそのままベッドに落ち着いた。
それで、今日も終わる。寝る時は静かに寝れるが、夢を見ることは無くなった。最後の夢など、思い出すことは無かった。
リビングに入った。
「おはよう。」
リビングにはお父さんとお母さんとお姉ちゃんがいる。いつも通りの朝だ。皆忙しなく歩き回っている。私の声なんて、聞こえるわけもない。そんなことでいちいち傷ついていたら我が家では生きていけないだろう。
席につき、パジャマのままご飯を食べる。菓子パンが並べられているのでそこから一番好きなアンパンをとる。
「やっぱ、これが一番。」
そう心の中でつぶやきながら頬張る。毎日アンパンを選ぶが、ちっとも飽きない。私の味方だ。
制服に着替えて、玄関から外へ出ると私は落ち着く。やっと、学校だ。この生活で一番落ち着くのは学校だ。そんなことを言う友達はいないが、別にどうでもいい。とりあえず落ち着くのだから。
「おはよう。」
「おはよう!」
友達は挨拶を交わしてくれる。が、幼なじみの美奈香以外はそれぐらいの関係。特に誰とも喋ることなく、席へ着くと、ちょうどチャイムがなった。
先生のしょうもない長い話が終わって、授業が始まる。今日は数学、英語、音楽、理科、社会という時間割。理科以外好きな教科が見当たらない。でも、楽しまなくては、身が持たない。家で楽しいことなど一つもないのだから。
家にいる時よりも短く感じる学校での生活は、今日もあっという間に終わってしまう。
学校帰りに美奈香と話している時ほど、短く感じることはない。なるべくゆっくりと歩いて、家まで帰る。帰りたくは、ない。
「ただいま。」
もちろん返事はない。出かけていて誰もいないとか、寝ているとか、そういうことではないのは言うまでもない。玄関で寝ている唯一の家族であるリマはこちらを見てしっぽを振ってくれている。
さぁ、嫌な時の始まりだ。
お父さんがいつものように酒に入り浸っている。私はリビングの入口でぼうっと突っ立っていた。まるで自分の番を待つかのように。
三十分後、お父さんはギロリと私を睨んで、低く声をだす。
「お前、いたのか。」
いつだったか、とふと思う。誕生日を家族で祝ったのは。今日は私の誕生日だが、家族は誰も覚えていない。姉は床に転がっている。くつろいでいるわけではない。まぁ、いつも通り殴られたのだろう。別にもう喚くほどのことでもない。私は随分と前にこの生活に慣れてしまった。次は、私だ。鈍い音が耳に響いて、姉の隣に転がり落ちる。
私の前にある姉の顔は元々綺麗な顔立ちだ。普通の家に生まれて、普通の生活をして、普通の高校生だったなら、姉はこの上ない美人に育っていたかもしれない。私にはそんな取り柄はひとつもないので、ただ虚しくなるだけだったが。
まぁ、これが世間で言う虐待ってやつだろう。助けて欲しいとか、自分が可哀想とか思わない。もう、どうでもよかったから。
痛みが引いてきて、私はむくりと立つ。リマの散歩のためだ。玄関まで行くと既に伏せをして散歩を待っていた。リードをつけて外へ出る。
「行ってきます。」
リマが我が家へ来たのは私が小四の時だ。公園に捨てられていたリマを私が責任をもって飼うことにした。だからリマのお世話をするのは私だけだ。散歩で楽しそうに歩いている背中を見ると、どうでも良くなる。ただ、この子が幸せでいてくれるなんて、なんて幸せなんだと思う。リマが笑っているように見えるだけで、私は少しだけ救われた。
家に帰って、リマにご飯をあげてリビングに入った。
「ご飯よ。」
お母さんはいつも転がっている私たちを無視して、ご飯を作る。と言っても、スーパーで売っている惣菜を並べて、お箸を置くだけだが。もう美味しいとか思わない。ただただお腹を満たす為だけにご飯をかき込んで、なんとも思わずそのままベッドに落ち着いた。
それで、今日も終わる。寝る時は静かに寝れるが、夢を見ることは無くなった。最後の夢など、思い出すことは無かった。
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