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8.はじめてのこくはく-2
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「コーヘイ?」
「僕さ、元の世界に戻ったら死んじゃうかもって、なんとなく感じてた。だから魔王を倒したら、元の世界に戻らないように誰かと繋がらなくちゃならないって思ってた。……でもさ、別にその相手は誰でもいいんだよ。だから……マリエルが僕のために犠牲になることはないんじゃないかな……」
コーヘイはそう言って悲しそうに眉をひそめると、マリエルの胸の間にぐりぐりと顔を埋めた。
「犠牲だなんて!」
「マリエルはさ、僕の命を助けたから責任を感じてるだけじゃない?」
「違う! それは違うわ!!」
「ほんと?」
コーヘイはマリエルの胸の間からほんの少し顔を上げると、潤んだ目でマリエルを見つめる。
マリエルはこれ以上コーヘイに悲しい気持ちになって欲しくなくて、自分の心の内を打ち明ける。
「ごめんなさい、コーヘイ。私、アランが妹姫をあなたに嫁がせたいって言ってるのも聞いてしまったの。本当はその方がコーヘイのためになるってわかってたのに、コーヘイが私以外の誰かのものになるなんて嫌だったからその前にって、こんなことを……」
「じゃあ、マリエルは義務感とかじゃなく、ちゃんと僕を欲しがってくれたってこと?」
「えぇ、もちろん……。あなたの幸せを邪魔するようなことをしてごめんなさい」
マリエルはコーヘイの頭を抱く手を緩めて、そのまま身体を離そうとした。
(本当はこんなことまで話す気はなかったのに。自分勝手な私の気持ちを知って、コーヘイはきっと呆れてしまったわ……)
しかし、離れようとしたマリエルの身体を今度はコーヘイが強く抱きしめる。
手枷付きの腕をマリエルの頭の上から被せて、お風呂の時のようにコーヘイの腕の中に閉じ込めてしまう。
コーヘイの厚い胸板に、マリエルの頭がギュッと押しつけられた。
「うれしい。僕はずっとマリエルが欲しかった。もし僕が繋がるなら、マリエルがいいってずっと思ってた」
「コーヘイ。それ、本当?」
「うん。この世界に初めて召喚されて、死んでしまいそうなほど苦しかった時、マリエルが触れてくれてすごく楽になって、それでマリエルを見てたら天使かなって思った。こんなキレイな子を最期に見られて良かった、って」
「コーヘイ……」
「あの時からずっと、僕はマリエルのことが好きだよ」
「うれしい……コーヘイ……」
マリエルが顔を上げると、コーヘイがマリエルを見てお日さまのような笑顔を浮かべる。
そのままふたりの顔がゆっくりと近づいて静かに唇が重なった。
「僕さ、元の世界に戻ったら死んじゃうかもって、なんとなく感じてた。だから魔王を倒したら、元の世界に戻らないように誰かと繋がらなくちゃならないって思ってた。……でもさ、別にその相手は誰でもいいんだよ。だから……マリエルが僕のために犠牲になることはないんじゃないかな……」
コーヘイはそう言って悲しそうに眉をひそめると、マリエルの胸の間にぐりぐりと顔を埋めた。
「犠牲だなんて!」
「マリエルはさ、僕の命を助けたから責任を感じてるだけじゃない?」
「違う! それは違うわ!!」
「ほんと?」
コーヘイはマリエルの胸の間からほんの少し顔を上げると、潤んだ目でマリエルを見つめる。
マリエルはこれ以上コーヘイに悲しい気持ちになって欲しくなくて、自分の心の内を打ち明ける。
「ごめんなさい、コーヘイ。私、アランが妹姫をあなたに嫁がせたいって言ってるのも聞いてしまったの。本当はその方がコーヘイのためになるってわかってたのに、コーヘイが私以外の誰かのものになるなんて嫌だったからその前にって、こんなことを……」
「じゃあ、マリエルは義務感とかじゃなく、ちゃんと僕を欲しがってくれたってこと?」
「えぇ、もちろん……。あなたの幸せを邪魔するようなことをしてごめんなさい」
マリエルはコーヘイの頭を抱く手を緩めて、そのまま身体を離そうとした。
(本当はこんなことまで話す気はなかったのに。自分勝手な私の気持ちを知って、コーヘイはきっと呆れてしまったわ……)
しかし、離れようとしたマリエルの身体を今度はコーヘイが強く抱きしめる。
手枷付きの腕をマリエルの頭の上から被せて、お風呂の時のようにコーヘイの腕の中に閉じ込めてしまう。
コーヘイの厚い胸板に、マリエルの頭がギュッと押しつけられた。
「うれしい。僕はずっとマリエルが欲しかった。もし僕が繋がるなら、マリエルがいいってずっと思ってた」
「コーヘイ。それ、本当?」
「うん。この世界に初めて召喚されて、死んでしまいそうなほど苦しかった時、マリエルが触れてくれてすごく楽になって、それでマリエルを見てたら天使かなって思った。こんなキレイな子を最期に見られて良かった、って」
「コーヘイ……」
「あの時からずっと、僕はマリエルのことが好きだよ」
「うれしい……コーヘイ……」
マリエルが顔を上げると、コーヘイがマリエルを見てお日さまのような笑顔を浮かべる。
そのままふたりの顔がゆっくりと近づいて静かに唇が重なった。
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