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15.そして、ねたばらし-3
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魔王との繋がりは絶たれたが、代わりにコーヘイはマリエルと繋がりを持った。
そのため、今のコーヘイにはマリエルの場所や感情がうっすらと伝わってくるのだった。
「マリエルによろしくな~」
「よろしく言えるわけないでしょ。僕まだ監禁されてることになってるんだよ?」
コーヘイは買ったものをポイポイと監禁小屋に転送していく。
「なぁ、それ、いつネタバラシすんの?」
「うーん、もうちょっとふたりの時間を楽しんでからかな?」
「なんだよその新婚ごっこ」
「へへ、いーでしょ!」
魔王を倒したらマリエルを口説き落としてこの世界にいられるようにする、とコーヘイが意気込んでいたのをアランは知っていた。
コーヘイがマリエルにさらわれたあと、マリエルもコーヘイと無理矢理繋がりを持とうとしていたことをゴードンに教えてもらい、アランはゴードンと一緒にふたりが戻ってくるのを魔王城近くの村でのんびり待っていたところだった。
「アラン。僕は君の無神経で女癖が悪いとこ、ほんっとーに最低だと思ってるけど、色々教えてもらったのは助かった。それだけは感謝しとく!!」
くるりと振り向いたコーヘイが鼻息荒くアランに感謝の言葉を述べる。
「もっと色々感謝することあるだろーが!」
「あと、ゴードン。あの手枷、ほんっと最高だった……っ! ありがとう!!」
「どうやって使ったかは聞かないでおきます」
「え、おまえ、あのマリエルに手枷つけてヤッたの!?」
「アラン、想像しないで! 殺すよ?」
「やめろ! お前が言うと冗談にならねーぞ!」
「それに僕がマリエルを拘束するわけないじゃんね」
この先はわからないけど、とコーヘイが口の中でつぶやく。
「なんかさ、僕って魔法が効かないし、そもそも魔王にも魔法が効かなかったじゃん?」
「そうですね」
「魔王には勇者の攻撃しか効かねーからな」
「それって逆もそうじゃない?」
「……そうですね」
「まぁ、お互い魔法が効かないわけだからな」
「魔王ってもしかして元は僕と同じ異世界人だったのかもね」
もしかして魔王は何も知らずにこの世界の人と繋がりを持ってしまい、帰るに帰れなかったのかもしれない。
コーヘイ自身は、自分が元の世界に帰るとおそらく病気の身体に戻って死んでしまうだろうと本能的に理解していた。
だからコーヘイは帰りたいと思わなかったが、魔王も同じだったとは限らない。
コーヘイは魔王と繋がっていた十年間の間でも、何度もこの世界と元の世界が近づいているのを感じていた。
そしてそのたびに元の世界に引き寄せられるような感覚があった。
おそらくその時に魔王との繋がりが切れていれば、コーヘイは自然と元の世界に戻れたのだろう。
しかしその感覚は年を経るごとにどんどん薄れていった。
このままあと数年もすれば、たとえマリエルとの繋がりが切れてしまっていたとしても二度と元の世界に戻れない気がする。
「なんだよ。同胞を殺したかもって罪悪感か?」
「あー、違う違う。そうじゃなくて、もしかしたら僕も魔王になれるんじゃ? って思っただけ」
「……」
「……」
「あ、大丈夫、大丈夫。僕、マリエルがいればそれでいいから。魔王になんてなるつもりないし」
荷物をすべて転送し終えたコーヘイは、最後に自身を監禁小屋まで転送するための魔法を発動する。
「あ、そうだ! 君たちは先に王城に戻ってていいよ~。そのうち僕らもそっちに行くから! その時はまたよろしくね~!!」
それだけ言うとコーヘイは転移魔法でマリエルの待つ小屋へと帰っていった。
残されたアランとゴードンは複雑な顔をして互いに視線をかわす。
「新たな魔王が生まれないように、このままマリエルには生贄になっててもらわねーとな」
「ま、本人たちが幸せならそれでいいんじゃないですかね」
ふたりは何事もなかったかのように手元のカップを口に運ぶと、少し冷めてしまったお茶をそのままズズーッと飲み干すのであった。
そのため、今のコーヘイにはマリエルの場所や感情がうっすらと伝わってくるのだった。
「マリエルによろしくな~」
「よろしく言えるわけないでしょ。僕まだ監禁されてることになってるんだよ?」
コーヘイは買ったものをポイポイと監禁小屋に転送していく。
「なぁ、それ、いつネタバラシすんの?」
「うーん、もうちょっとふたりの時間を楽しんでからかな?」
「なんだよその新婚ごっこ」
「へへ、いーでしょ!」
魔王を倒したらマリエルを口説き落としてこの世界にいられるようにする、とコーヘイが意気込んでいたのをアランは知っていた。
コーヘイがマリエルにさらわれたあと、マリエルもコーヘイと無理矢理繋がりを持とうとしていたことをゴードンに教えてもらい、アランはゴードンと一緒にふたりが戻ってくるのを魔王城近くの村でのんびり待っていたところだった。
「アラン。僕は君の無神経で女癖が悪いとこ、ほんっとーに最低だと思ってるけど、色々教えてもらったのは助かった。それだけは感謝しとく!!」
くるりと振り向いたコーヘイが鼻息荒くアランに感謝の言葉を述べる。
「もっと色々感謝することあるだろーが!」
「あと、ゴードン。あの手枷、ほんっと最高だった……っ! ありがとう!!」
「どうやって使ったかは聞かないでおきます」
「え、おまえ、あのマリエルに手枷つけてヤッたの!?」
「アラン、想像しないで! 殺すよ?」
「やめろ! お前が言うと冗談にならねーぞ!」
「それに僕がマリエルを拘束するわけないじゃんね」
この先はわからないけど、とコーヘイが口の中でつぶやく。
「なんかさ、僕って魔法が効かないし、そもそも魔王にも魔法が効かなかったじゃん?」
「そうですね」
「魔王には勇者の攻撃しか効かねーからな」
「それって逆もそうじゃない?」
「……そうですね」
「まぁ、お互い魔法が効かないわけだからな」
「魔王ってもしかして元は僕と同じ異世界人だったのかもね」
もしかして魔王は何も知らずにこの世界の人と繋がりを持ってしまい、帰るに帰れなかったのかもしれない。
コーヘイ自身は、自分が元の世界に帰るとおそらく病気の身体に戻って死んでしまうだろうと本能的に理解していた。
だからコーヘイは帰りたいと思わなかったが、魔王も同じだったとは限らない。
コーヘイは魔王と繋がっていた十年間の間でも、何度もこの世界と元の世界が近づいているのを感じていた。
そしてそのたびに元の世界に引き寄せられるような感覚があった。
おそらくその時に魔王との繋がりが切れていれば、コーヘイは自然と元の世界に戻れたのだろう。
しかしその感覚は年を経るごとにどんどん薄れていった。
このままあと数年もすれば、たとえマリエルとの繋がりが切れてしまっていたとしても二度と元の世界に戻れない気がする。
「なんだよ。同胞を殺したかもって罪悪感か?」
「あー、違う違う。そうじゃなくて、もしかしたら僕も魔王になれるんじゃ? って思っただけ」
「……」
「……」
「あ、大丈夫、大丈夫。僕、マリエルがいればそれでいいから。魔王になんてなるつもりないし」
荷物をすべて転送し終えたコーヘイは、最後に自身を監禁小屋まで転送するための魔法を発動する。
「あ、そうだ! 君たちは先に王城に戻ってていいよ~。そのうち僕らもそっちに行くから! その時はまたよろしくね~!!」
それだけ言うとコーヘイは転移魔法でマリエルの待つ小屋へと帰っていった。
残されたアランとゴードンは複雑な顔をして互いに視線をかわす。
「新たな魔王が生まれないように、このままマリエルには生贄になっててもらわねーとな」
「ま、本人たちが幸せならそれでいいんじゃないですかね」
ふたりは何事もなかったかのように手元のカップを口に運ぶと、少し冷めてしまったお茶をそのままズズーッと飲み干すのであった。
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