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13.そして、ねたばらし-1
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魔王城のすぐ近くの村で、金髪の見事な美丈夫と黒いフードを目深に被ったあやしい人物がお茶を飲んでいる。
「あのふたり、今頃ヤッてんのかね?」
「そうなんじゃないですか?」
「ちゃんとヤれんのかね。ふたりともやり方知らなそ~」
「ふたりとも、そういうことから遠ざけられてきましたからね」
「あんな気持ちいいこと知らなかったなんて、はぁ~かわいそっ」
金髪の美丈夫がさも気の毒だという顔をする。
ふたりがこの地方特産である少し癖のある香りのお茶をズズーッと飲んでいると、すぐ近くにひとりの男が現れた。
「ねぇ、僕たちのこと想像すんのやめてくんない?」
「おや、コーヘイですか」
「おまえ、マリエルに監禁されてたんじゃねーの?」
急に現れたコーヘイに驚くことなくふたりが応じると、コーヘイは金髪の剣士アランとあやしい魔法使いゴードンのすぐの近くに腰を下ろした。
「監禁はされてるけど、色々と必要なものが足りなかったので買い出し」
コーヘイがひょいと手をやったほうに目をやれば、買い出しを終えたあとなのだろう、そこには生活に必要なものがたくさん買い込まれて置いてあった。
「監禁されてるほうが買い出しって監禁の意味ねーな」
「だって、マリエルだけに任せてたら不安だし」
「おまえが外に出られること、マリエルにバレるんじゃねーの?」
「別にバレても構わないんだけど、マリエルにはもうちょっと出られないって思ってて欲しいかも。僕らやっと、ふたりっきりになれたんだし。とりあえずこれはゴードンが魔法で送ってくれたって言っておこうかな」
「ゴードン、いいように名前を使われてっぞ」
「別にそれくらい構いませんよ」
ツンツンとフードを引っ張るアランの手をゴードンがうっとうしそうにふり払う。
「そもそもさぁ、僕に魔法が効くわけないんだよね」
「それはそーだ」
「ですね」
「そんなことゴードンには最初からわかってたでしょ」
あの小屋や手枷にかけられていた魔法はゴードンのものだった。
そもそも監禁や拘束をするような複雑な魔法を、聖魔法以外ろくに使えないマリエルがかけられるはずがない。
そしてゴードンの魔法を含め、コーヘイに魔法が効かないことはみんなよく知っていたはずだ。
この世界の者でない勇者コーヘイは魔王と同様にあらゆる魔法が使え、同時にあらゆる魔法攻撃を無効化できるのだから。
魔王に傷をつけられるのは勇者コーヘイただひとりで、コーヘイに傷をつけられるのもまた魔王ただひとりだった。
「なんでマリエルはそれに気づかねーの?」
「『この魔法ならコーヘイにも効きます』って言ったら、すぐに信じてましたね」
「あいつ、そんな素直で大丈夫かぁ?」
アランが呆れたような声を出すと、すかさずコーヘイが蕩けそうな甘い顔をして微笑む。
「そういうところが、かわいいんじゃないか。それになにかあったら僕が守ってあげるから、マリエルはあのままでいいんだよ」
「そんなもんかねぇ」
「ところで、ゴードンは僕に効かないってわかってて、なんであんな魔法かけたの?」
コーヘイが改めてゴードンに尋ねると、ゴードンはフードを深く被り直しながら答えた。
「あのふたり、今頃ヤッてんのかね?」
「そうなんじゃないですか?」
「ちゃんとヤれんのかね。ふたりともやり方知らなそ~」
「ふたりとも、そういうことから遠ざけられてきましたからね」
「あんな気持ちいいこと知らなかったなんて、はぁ~かわいそっ」
金髪の美丈夫がさも気の毒だという顔をする。
ふたりがこの地方特産である少し癖のある香りのお茶をズズーッと飲んでいると、すぐ近くにひとりの男が現れた。
「ねぇ、僕たちのこと想像すんのやめてくんない?」
「おや、コーヘイですか」
「おまえ、マリエルに監禁されてたんじゃねーの?」
急に現れたコーヘイに驚くことなくふたりが応じると、コーヘイは金髪の剣士アランとあやしい魔法使いゴードンのすぐの近くに腰を下ろした。
「監禁はされてるけど、色々と必要なものが足りなかったので買い出し」
コーヘイがひょいと手をやったほうに目をやれば、買い出しを終えたあとなのだろう、そこには生活に必要なものがたくさん買い込まれて置いてあった。
「監禁されてるほうが買い出しって監禁の意味ねーな」
「だって、マリエルだけに任せてたら不安だし」
「おまえが外に出られること、マリエルにバレるんじゃねーの?」
「別にバレても構わないんだけど、マリエルにはもうちょっと出られないって思ってて欲しいかも。僕らやっと、ふたりっきりになれたんだし。とりあえずこれはゴードンが魔法で送ってくれたって言っておこうかな」
「ゴードン、いいように名前を使われてっぞ」
「別にそれくらい構いませんよ」
ツンツンとフードを引っ張るアランの手をゴードンがうっとうしそうにふり払う。
「そもそもさぁ、僕に魔法が効くわけないんだよね」
「それはそーだ」
「ですね」
「そんなことゴードンには最初からわかってたでしょ」
あの小屋や手枷にかけられていた魔法はゴードンのものだった。
そもそも監禁や拘束をするような複雑な魔法を、聖魔法以外ろくに使えないマリエルがかけられるはずがない。
そしてゴードンの魔法を含め、コーヘイに魔法が効かないことはみんなよく知っていたはずだ。
この世界の者でない勇者コーヘイは魔王と同様にあらゆる魔法が使え、同時にあらゆる魔法攻撃を無効化できるのだから。
魔王に傷をつけられるのは勇者コーヘイただひとりで、コーヘイに傷をつけられるのもまた魔王ただひとりだった。
「なんでマリエルはそれに気づかねーの?」
「『この魔法ならコーヘイにも効きます』って言ったら、すぐに信じてましたね」
「あいつ、そんな素直で大丈夫かぁ?」
アランが呆れたような声を出すと、すかさずコーヘイが蕩けそうな甘い顔をして微笑む。
「そういうところが、かわいいんじゃないか。それになにかあったら僕が守ってあげるから、マリエルはあのままでいいんだよ」
「そんなもんかねぇ」
「ところで、ゴードンは僕に効かないってわかってて、なんであんな魔法かけたの?」
コーヘイが改めてゴードンに尋ねると、ゴードンはフードを深く被り直しながら答えた。
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