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1.はじめてのかんきん-1
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「魔王、覚悟ーー!!!!」
勇者コーヘイの高らかな叫び声が魔王城に響き渡る。
コーヘイが掲げた勇者の剣は、真っ直ぐに魔王の身体を貫いた。
バサリ、と音を立てて魔王のマントが床に落ちると、黒い霧のようなものが集まってできていた魔王の身体は一瞬で空中に霧散した。
「やった……!」
コーヘイは勇者の剣を魔王城の床に突き刺すと、それを杖のようにして身体を支えながら、ガクリと床に膝をついた。
「はぁっ、はあっ……!」
「コーヘイ! よくやった!!」
「お疲れ様です」
金髪の剣士アランと、フードを目深に被った魔法使いゴードンがコーヘイに駆け寄る。
アランとゴードンはこの国の第二王子と筆頭魔法使いで、魔王討伐のためのパーティーにコーヘイと共に編成された仲間だった。
魔王はあらゆる魔法が使え、同時にあらゆる魔法攻撃を無効化できるため、魔王に傷をつけられるのは勇者コーヘイただひとりだった。
そのためアランとゴードンはコーヘイの援護しかできず、ふたりは無事に魔王討伐を果たしたコーヘイをおおいに労った。
コーヘイは魔王を倒すため九歳のときにこの世界に召喚された勇者だ。
それから十年間、魔王を倒すために修行を続けた。
魔王討伐を果たしたこのあとは、おそらく勇者を元の世界に戻すための儀式が行われるだろう。
(だからその前に――)
パーティーの紅一点、長い銀の髪がきらめく聖女マリエルは、背中に隠したものをギュッとにぎりしめる。
アランが顔を上げてマリエルを呼んだ。
「マリエル、コーヘイを回復してやって」
「うん」
マリエルの背中でジャラリと音が鳴る。
(どうか……どうか、バレませんように……)
心の中で祈りながら、マリエルはゆっくりとコーヘイに近づいた。
*****
「……で、今こうなってるわけだけども」
「ごめんなさい! ごめんなさい、コーヘイ!」
マリエルがコーヘイに向かって頭を下げると、長い銀の髪がさらりとコーヘイの顔をくすぐる。
頭を下げるとはいっても、マリエルはベッドの上に寝転がるコーヘイの上に跨っているので、下げた頭はコーヘイのはるか上にあってあまり意味はなさそうだ。
「あとさ……これ、なに?」
「ごめんなさい……」
コーヘイが手を動かすと、手首に嵌められた黒い手枷型の魔道具の鎖がジャラリと不穏な音を立てた。
魔王討伐を終えてコーヘイの気が緩んだ瞬間を狙って、マリエルがコーヘイに手枷をはめ、ここまで転移魔法でさらってきたのだ。
ここはマリエルが用意した小さな小屋のベッドの上だ。
マリエルは転移魔法が得意でなくあまり遠くまでは飛べないので、魔王城のすぐ近くの村の外れにあるこの小屋を転移先に選んでいた。
なんならつい最近まで、パーティーみんなでここを拠点にして暮らしていたくらいだ。
アランやゴードンも一緒に、ここで魔王討伐のための態勢を整えていたのも記憶に新しい。
見慣れたベッドの上でマリエルに組み敷かれているコーヘイは、下からマリエルの顔を心配そうにのぞき込む。
「えっと、こんなことするって、マリエルにも何か事情があるんだよね? どうしたの?」
こんな時でも優しいコーヘイに、マリエルは涙が出そうになった。
それでも泣くのは我慢して、勇気を出してコーヘイにお願いをする。
「コーヘイ、お願い……私に監禁されて?」
勇者コーヘイの高らかな叫び声が魔王城に響き渡る。
コーヘイが掲げた勇者の剣は、真っ直ぐに魔王の身体を貫いた。
バサリ、と音を立てて魔王のマントが床に落ちると、黒い霧のようなものが集まってできていた魔王の身体は一瞬で空中に霧散した。
「やった……!」
コーヘイは勇者の剣を魔王城の床に突き刺すと、それを杖のようにして身体を支えながら、ガクリと床に膝をついた。
「はぁっ、はあっ……!」
「コーヘイ! よくやった!!」
「お疲れ様です」
金髪の剣士アランと、フードを目深に被った魔法使いゴードンがコーヘイに駆け寄る。
アランとゴードンはこの国の第二王子と筆頭魔法使いで、魔王討伐のためのパーティーにコーヘイと共に編成された仲間だった。
魔王はあらゆる魔法が使え、同時にあらゆる魔法攻撃を無効化できるため、魔王に傷をつけられるのは勇者コーヘイただひとりだった。
そのためアランとゴードンはコーヘイの援護しかできず、ふたりは無事に魔王討伐を果たしたコーヘイをおおいに労った。
コーヘイは魔王を倒すため九歳のときにこの世界に召喚された勇者だ。
それから十年間、魔王を倒すために修行を続けた。
魔王討伐を果たしたこのあとは、おそらく勇者を元の世界に戻すための儀式が行われるだろう。
(だからその前に――)
パーティーの紅一点、長い銀の髪がきらめく聖女マリエルは、背中に隠したものをギュッとにぎりしめる。
アランが顔を上げてマリエルを呼んだ。
「マリエル、コーヘイを回復してやって」
「うん」
マリエルの背中でジャラリと音が鳴る。
(どうか……どうか、バレませんように……)
心の中で祈りながら、マリエルはゆっくりとコーヘイに近づいた。
*****
「……で、今こうなってるわけだけども」
「ごめんなさい! ごめんなさい、コーヘイ!」
マリエルがコーヘイに向かって頭を下げると、長い銀の髪がさらりとコーヘイの顔をくすぐる。
頭を下げるとはいっても、マリエルはベッドの上に寝転がるコーヘイの上に跨っているので、下げた頭はコーヘイのはるか上にあってあまり意味はなさそうだ。
「あとさ……これ、なに?」
「ごめんなさい……」
コーヘイが手を動かすと、手首に嵌められた黒い手枷型の魔道具の鎖がジャラリと不穏な音を立てた。
魔王討伐を終えてコーヘイの気が緩んだ瞬間を狙って、マリエルがコーヘイに手枷をはめ、ここまで転移魔法でさらってきたのだ。
ここはマリエルが用意した小さな小屋のベッドの上だ。
マリエルは転移魔法が得意でなくあまり遠くまでは飛べないので、魔王城のすぐ近くの村の外れにあるこの小屋を転移先に選んでいた。
なんならつい最近まで、パーティーみんなでここを拠点にして暮らしていたくらいだ。
アランやゴードンも一緒に、ここで魔王討伐のための態勢を整えていたのも記憶に新しい。
見慣れたベッドの上でマリエルに組み敷かれているコーヘイは、下からマリエルの顔を心配そうにのぞき込む。
「えっと、こんなことするって、マリエルにも何か事情があるんだよね? どうしたの?」
こんな時でも優しいコーヘイに、マリエルは涙が出そうになった。
それでも泣くのは我慢して、勇気を出してコーヘイにお願いをする。
「コーヘイ、お願い……私に監禁されて?」
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