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13.目覚め
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「依さん、起きられる?」
累くんの声でゆっくりと目を覚ます。
どうやら意識を失っていたようだ。
スマホの時計を確認すると午前二時を過ぎている。
スマホには依頼主からの『依頼完了』のメッセージが入っていた。
私はシーツを身体に巻いてベッドから下りると、ふらつく足取りのままリビングに向かいカバンから自分のスマホを取り出した。
スマホを操作して銀行口座の残高を確認してホッと息を吐く。
五十万円ちゃんと無事に振り込まれている。
(あぁ、良かった……。これで大学を辞めないですむ)
あれ以来キャッシュカードの暗証番号も変えたし、通帳も印鑑も常に持ち歩いている。
(これでもう大丈夫)
私はスマホを裸の胸にギュッとかき抱いた。
「依さん」
私の後ろに立った累くんはいつの間にかきちんと洋服を着ていた。
「累くんもちゃんもお金もらえた?」
私の質問に累くんは軽く肩をすくめて目を細める。
(あれ? こんな風に笑う子だった……?)
「ねぇ、依さん。僕がもっとお金をあげようか?」
「累、くん……?」
「依頼主は僕なんだよね」
累くんはポケットから自分のスマホを取り出して操作する。
するとすぐに命令受信用のスマホが音を立てた。
『ピロン』
累くんがそれを手に取って画面を私に見せてくる。
『依さん』
「ほらね」
どちらの画面にも私の名前が映っていて、累くんがニコリと微笑む。
「僕、この辺りの地主なんだよね。このマンションも依さんがアルバイトしてる喫茶店のビルも僕のなんだ」
「え?」
「あ、あと、依さんが看板を眺めてた風俗ビルのオーナーも僕だよ」
累くんが言っている言葉の意味がよくわからず、まったく頭に入ってこない。
「僕のフルネーム来栖累って言うんだ」
(フルネーム? それが何? でも、来栖……くるす……聞いたことがあるような……)
そうだ、喫茶クルーズのあるビルの名前がそんな名前だった。
クルスビルと喫茶クルーズで駄洒落なのかと店長と一緒に笑った気がする。
その時に店長が、オーナーの名前を口にしてはいなかったか。
「いや、でも、だって、累くん、未成年でしょう?」
「いやだなぁ。そりゃあ僕は童顔だけど、これでも成人してるよ? 早生まれだからこの前十八歳になったばっかりだけど。成人するまでは色々な手続きを安西にお願いしたりもしてたけど、今は名実共に僕がオーナーだね」
安西――私をこんなバイトに誘ったスーツの常連さんの名前だ。
「だって、だって、累くん、映像の学校に行きたいって」
「うん、嘘じゃないよ? 大学はもう飛び級で卒業しているから、今度は映像系の勉強もしてみたくて。お金ならいくらでもあるしね」
累くんがクスクス笑う。
その顔はさっきまでの初心な少年と変わらないはずなのに、私の肌がゾワリと粟立った。
累くんの声でゆっくりと目を覚ます。
どうやら意識を失っていたようだ。
スマホの時計を確認すると午前二時を過ぎている。
スマホには依頼主からの『依頼完了』のメッセージが入っていた。
私はシーツを身体に巻いてベッドから下りると、ふらつく足取りのままリビングに向かいカバンから自分のスマホを取り出した。
スマホを操作して銀行口座の残高を確認してホッと息を吐く。
五十万円ちゃんと無事に振り込まれている。
(あぁ、良かった……。これで大学を辞めないですむ)
あれ以来キャッシュカードの暗証番号も変えたし、通帳も印鑑も常に持ち歩いている。
(これでもう大丈夫)
私はスマホを裸の胸にギュッとかき抱いた。
「依さん」
私の後ろに立った累くんはいつの間にかきちんと洋服を着ていた。
「累くんもちゃんもお金もらえた?」
私の質問に累くんは軽く肩をすくめて目を細める。
(あれ? こんな風に笑う子だった……?)
「ねぇ、依さん。僕がもっとお金をあげようか?」
「累、くん……?」
「依頼主は僕なんだよね」
累くんはポケットから自分のスマホを取り出して操作する。
するとすぐに命令受信用のスマホが音を立てた。
『ピロン』
累くんがそれを手に取って画面を私に見せてくる。
『依さん』
「ほらね」
どちらの画面にも私の名前が映っていて、累くんがニコリと微笑む。
「僕、この辺りの地主なんだよね。このマンションも依さんがアルバイトしてる喫茶店のビルも僕のなんだ」
「え?」
「あ、あと、依さんが看板を眺めてた風俗ビルのオーナーも僕だよ」
累くんが言っている言葉の意味がよくわからず、まったく頭に入ってこない。
「僕のフルネーム来栖累って言うんだ」
(フルネーム? それが何? でも、来栖……くるす……聞いたことがあるような……)
そうだ、喫茶クルーズのあるビルの名前がそんな名前だった。
クルスビルと喫茶クルーズで駄洒落なのかと店長と一緒に笑った気がする。
その時に店長が、オーナーの名前を口にしてはいなかったか。
「いや、でも、だって、累くん、未成年でしょう?」
「いやだなぁ。そりゃあ僕は童顔だけど、これでも成人してるよ? 早生まれだからこの前十八歳になったばっかりだけど。成人するまでは色々な手続きを安西にお願いしたりもしてたけど、今は名実共に僕がオーナーだね」
安西――私をこんなバイトに誘ったスーツの常連さんの名前だ。
「だって、だって、累くん、映像の学校に行きたいって」
「うん、嘘じゃないよ? 大学はもう飛び級で卒業しているから、今度は映像系の勉強もしてみたくて。お金ならいくらでもあるしね」
累くんがクスクス笑う。
その顔はさっきまでの初心な少年と変わらないはずなのに、私の肌がゾワリと粟立った。
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