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1.とあるマンションの一室で

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「お姉さん、もう少し足を開けますか?」

 目の前にいる美しい顔をした少年が私に話しかける。
 まるで美少女のようなその少年は、手にスマホを持ちそのカメラを私に向けていた。
 私は少年に言われた通りにゆっくりと足を広げ、クチュ、という水音ともに声を漏らす。

「んっ……」

 ここはとあるマンションの一室。
 いまここには私と少年のふたりきりだ。
 ベッドの上で足を広げて自慰を行う私を、少年がスマホのカメラを構えてしっかりと撮影している。
 私はどうしてもすぐに足を閉じてしまい、少年にそれを指摘されるたび、おずおずと足を開くのを繰り返していた。
 私は自分の中から溢れでる蜜を指ですくっては、快感の芽である突起に塗り込める。
 見られている羞恥心が呼び水となって蜜はとめどなく溢れ、それは私の指だけでなく尻まで濡らしていた。

「ん……はっ……」

 ピチャピチャと鳴る卑猥な水音はもちろん、耐えきれずに口から漏れ出る声もカメラはきっと拾ってしまっているのだろう。

 いったいなぜこんなことになってしまったのだろうか。
 私は頭の片隅でそのきっかけを思い出していた。


 *****


 私、今野依こんのよりは二十一歳の大学生だ。

 後期の試験も終え、今、大学は春休みになっている。
 この休みを終えたら四年生になる予定だ。
 いや、予定だった。
 それなのに今、私は四年生になれるかどうか非常にあやしいことになっている。
 単位はちゃんと取れている。
 なんなら成績だって優秀な方だ。

 ただ、お金が――ない。

「はぁーっ」

「今野さん、ため息をつくと幸せが逃げるよ」

「あ、店長。仕事中にごめんなさい」

「いいよ。どうせお客さん誰もいないしね」

 大きなため息をつく私を心配して、バイト先の喫茶店の店長が声をかけてくれる。
 お客さんに聞かれなかったのは幸いだが、まぁ、いつも大体ふたりきりなのだが。

 私のバイト先は、雑居ビルの二階にある喫茶店「喫茶クルーズ」だ。
 店内には帆船の模型が飾ってあったり、舵が壁にかかっていたり、他にもガラスの浮き玉が天井から吊るされていたりと、どうやら船がコンセプトのようだった。
 制服代わりの黒いエプロンも、胸元に白で船の絵が描かれている。
 一等地にあるのにいつもこんなに客が来なくて潰れないのかと心配になるが、店長によるとこのビルのオーナーが半ば趣味でやっているため店のため利益は度外視なんだとか。
 まったくもってうらやましい話だ。
 お金はやっぱりあるとこにはあるもんなだなと考えてから、自分の状況をふり返って情けなくなる。
 そう、私にはお金がない。

「はぁーっ」

 私はまたひとつ大きなため息をついた。
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