【R18/完結】私のことは忘れてください〜できそこないの魔女は俺様な侯爵令息に溺愛される〜

河津ミネ

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四章 青空と太陽

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「俺が再びソフィアを見つけたのは、王立学園にソフィアが入学した後だ」

 レオルドはゆっくりと昔語りを始めた。

「俺を助けてくれたあとに魔女として王宮に連れ去られたと知って、あの怖いというおじさんから離れて幸せにやってるのだろうと思っていた。思いたかった」

 だが――と大きく眉をしかめる。

「アイツは学園内でソフィアに呪いを移させていただろう? それを見て、俺は考えを改めた」

「……あれを見ていたのですね」

 たしかに王立学園時代に何度か学園内でルーパスの呪いを移したことがあったが、まさかあれを見られていたとは知らなかった。
 おそらくそこではルーパスが、いつものようにソフィアを罵っていたのだろう。

「幸せにしたい者は、誰かに任せるのではなく自分の手で幸せにするべきだったと深く後悔した」

 レオルドがソフィアの手を強く握りしめる。

「あの頃の俺は人々に忘れられないよう派手な振る舞いをして、『黄金の獅子と白銀の狼』などと並べたてられていたが、所詮いち貴族の令息でしかなかった。陰嫁候補になるほど偉大な魔女のソフィアを手に入れることなど不可能に近かった」

「そんな……」

「そしてソフィアを手に入れるために、いかに陰嫁を辞めさせるかをずっと考えていた。ソフィアが手に入るのなら王位を狙っても良かったが、陰嫁として迎えてソフィアを抱けないのでは意味がないからな」

「抱け……」

 レオルドの直接的な言葉にソフィアが頬を染めてうつむく。

「陰嫁を辞めさせるために呪いを解く手筈を整え、そして人も金も力も手に入れた。ようやく準備が整ったので、ソフィアの心を手に入れようと近づいたんだ」

 転んだソフィアの手を引いてくれたあの時――あの時に、ようやくソフィアを手に入れる準備が整ったのだと、レオルドはそう言った。

「あの時……」

「あぁ」

「……でも、何も聞いていなかったので驚きました」

 レオルドにふり回されることを嫌ではなかったし、そんなに長いこと想っていてくれたのだと知れて嬉しい。
 しかしさすがに驚かされ過ぎたので、カネスに話す前に相談して欲しかったとほんの少し頬を膨らまる。
 すると口の端を上げながら、レオルドが指の背でソフィアの膨らんだ頬をなでた。

「仕方ないだろう。ソフィアは嘘がつけないからな」

「だからって……!」

「こんなに上手くいくとは思わなかった」

 珍しく弱気な言葉に驚いて顔を上げると、レオルドの赤い目とソフィアの薄紫の目が絡み合う。

「元より何があろうと、ここでソフィアのすべてをもらう気でいた」

「レオルド様……」

「もし呪いが解けなかったとしても、そのままソフィアをさらって隣国まで逃げる事だって考えていたんだ。例え何が起ころうと、ソフィアの手を離す気はなかったさ」

 ソフィアを抱きしめる手にグッと力が込められた。
 レオルドの赤い目の奥に欲望の炎が揺らめき、恐れと期待でソフィアが喉を鳴らす。

「刺客どもを誘き出すのに人気のない所をうろうろしていたが、独り寝のたびにあの夜のソフィアが思い出されて身体が昂って大変だった」

「あ……」

 ソフィアを抱きしめるレオルドの熱が高くなった気がする。
 真っ赤な顔をしたソフィアの耳にレオルドが口を寄せた。

「俺がいない間、ソフィアは俺を思い出してくれたか?」

「ひとときも忘れたことなどありません」

 レオルドと離れていた数日間、ソフィアだってあの幸せな時間を何度も思い出しては帰りを待ち焦がれていた。
 小さく震える声を聞いて、レオルドはソフィアのあごに手を添えて口づけを落とした。
 すぐに口づけは深くなり、レオルドの手がソフィアの身体の線を確かめるようにゆっくりと動き回る。

「は……」

 熱い吐息をこぼしながら二人の唇が離れた。
 レオルドの赤い目には蕩けた顔をしたソフィアが映っている。
 ソフィアの柔らかい尻の下にはレオルドの熱く硬いものが押しつけられており、ソフィアの身体はそれを求めて疼きだしていた。
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