【R18/完結】私のことは忘れてください〜できそこないの魔女は俺様な侯爵令息に溺愛される〜

河津ミネ

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二章 出会いと別れ

8.-3

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 咳払いをしたメモリアが、今の状況について教えてくれた。

「陛下の側近から事情を伺ったところ、コリウス陛下は一時期の危ない状態からは落ち着いて、ひとまず持ち直したそうです」

「そうか。あのあとアイツはどうなった?」

 アイツ、と聞いてルーパスの恐ろしく冷たい目を思い出してしまい、ソフィアの背筋にゾクリと悪寒が走る。
 微かに震える手をレオルドの熱い手が包みこんだ。

「扉の前に倒れていた護衛はルーパス殿下の親衛隊に回収させました。コリウス陛下のことでバタついていた事もあり、レオルド様のルーパス殿下への暴行は今のところ問題になっておりません」

 レオルドの身が心配になってギュッと手を握りしめると、レオルドが安心させるように指の腹でとんとんとソフィアの手を叩いてなだめる。

「取り乱したルーパス殿下がソフィア様に暴行しかねなかったため、レオルド様がルーパス殿下を止めたとお伝えしてあります」

「それでいい。アイツがソフィアに何かしていたら結局のところ困るのはアイツだ。それを止めてやったんだから俺に感謝して欲しいぐらいだ。ただし、ソフィアにあれ以上の事をしていたらアイツは今頃生きていなかっただろうがな」

 レオルドが目の奥でギラリと殺気を光らせる。

「……私のせいでレオルド様が罰せられるのは嫌です」

「そんなヘマはしないさ。それに俺はこれから忘却の呪いを解きに行くことをカネス殿下に認めさせている。当分、俺には手を出せまいよ」

「レオルド様は本当に忘却の呪いを解くおつもりですか?」

「もちろんだ。古の魔女の亡骸はウィザ村の近くの森の奥に封印されている。そこには古の魔女の呪いが詰まった依代がある。それを壊せば呪いが解けるはずだ」

「呪いを解く方法がわかっていて、どうしてこれまで解けなかったのですか?」

「呪いをかけられた王家の血筋の者しか、その依代を破壊できない。しかし周囲にも強い呪いが漏れ出ていて迂闊には近づけなかった。そのため今まで誰も呪いを解けなかった。だが王家の血を引いてなおかつ呪いに耐性のある俺ならば依代を壊せる」

 レオルドがソフィアの手を強く握りしめて赤い目に強い意志を滲ませる。

「この時のために備えてきた。必ず呪いを解くぞ」  

 そして呪いを解くため、近いうちにウィザ村まで行くつもりだとソフィアに告げた。
 それを聞いたソフィアはすぐにレオルドにすがりついた。

「レオルド様、私も連れて行ってください」

 一緒に行って何ができるかはわからない。
 けれど、なぜかそうしないといけない気がした。

「俺だってソフィアとは離れたくない。だが王家がソフィアを外に出すだろうか」

 流されてあきらめるのが当たり前だった自分がこんなわがままを言うなんて、ソフィアは自分でも自分の行動に驚いてしまう。
 それでもレオルドと離れたくないその一心でソフィアが頼みこむと、レオルドは難しい顔をして考え込んだ。

「レオルド様を忘れたくありません」

「俺だってそうだ」

 お互い呪いに耐性はあるが、長い間離れていれば忘れてしまうかもしれない。
 するとメモリアが口に人差し指をあてて思案するようなしながら、ひとつの提案をした。

「レオルド様、私にひとつ考えがあります。うまくいけばソフィア様を連れてウィザ村まで行けるかもしれません。ただし、今よりももっと状況が悪くなる可能性もあります」

「よし、話してみろ」

「はい。それは……」

 メモリアの提案に耳を傾けながら、どうすればいいかを話し合う。
 結局その日は夜遅くまで、レオルドの部屋での話し合いが続いたのだった。
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