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二章 出会いと別れ

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 ルーパスの背中を見送りながらソフィアはレオルドの服を握りしめた。

(私のせいでルーパス殿下がレオルド様に酷いことをするかもしれない……)

 その震える冷えた身体を、レオルドの熱い身体が優しく包みこむ。

「もう大丈夫だ、ソフィア」

 そのあたたかさに触れ、ようやく身体の強ばりが少し解け、ソフィアの目から涙がこぼれ落ちた。

「レオ、レオルドさま……」

「ソフィア」

 傷ついたソフィアを抱きしめながら、レオルドがその目を細めて痛ましげな顔をする。
 外は既に陽が落ちていて、わずかに差し込む月の光だけが礼拝堂の中をぼんやりと照らしている。
 ソフィアが落ち着くまでレオルドは冷えた身体を優しくなでて温めてくれた。

「礼拝堂の扉がオンボロで助かったな。だがこのままじゃ身体が冷える。移動するぞ」

 ソフィアが泣き止むのを待ってから、レオルドは自分の上着をソフィアにしっかりと着せ、上からさらにマントで包んでソフィアの姿を周りから見えないようにした。

「レオルド様……?」

「俺の部屋に向かう」

 レオルドはソフィアを抱き上げ騎士団寮のレオルドの部屋へと向かう。
 人目につかぬように注意しながら部屋まで辿り着くと、包んだマントの中からソフィアを取り出した。

「レオルド様、あの……」

「まずは傷の手当てだ。ソフィア、こっちを向け」

 レオルドが自ら傷の手当てをしようと薬を手に取る。
 しかしなぜか、ソフィアはレオルドの膝の上に乗せられていた。

「あの、レオルド様……下ろしていただけませんか?」

「ダメだ。こんなに呪いが強まっているのに離れたらソフィアを忘れてしまうかもしれない」

「そんな……あ……」

 レオルドの熱い手がソフィアの頬の上を優しくすべる。

「痛むかもしれないが、少しだけ我慢しろ」

「ん……はい……」

 レオルドの熱い手で触れられるたび、呪いと襲われた恐怖でガチガチに強ばっていたソフィアの身体が少しずつ溶かされていく。

「痕にならないといいが」

「あの、もう大丈夫ですから」

「こういうのはあとから腫れてくる。これは騎士団でも使ってる薬だ。よく効くぞ」

「……はい」

 レオルドの熱くたくましい身体に包まれていると安心できて、ここにいればもう何が起きても大丈夫な気がした。
 それでも大丈夫なはずはなく、ソフィアは自分のことを心配そうに見ながら薬を丁寧に塗るレオルドを見つめた。
 レオルドとルーパスの間にはソフィアの知らない何かがあるようだが、それでも自分のせいでレオルドが罰せられて欲しくない。
 ふたりの事情を知れば、なにか助けになれないだろうかと考える。

「レオルド様」

「なんだ?」

「あの……先ほどのルーパス殿下との会話はどういう意味ですか?」

「あぁ、あれか。上位貴族の間では公然の秘密になっていることだが」

 レオルドがそう前置きをして口を開いた。

「俺の父親はカネス王太子殿下だ」
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