上 下
15 / 16

それから②

しおりを挟む
「…………え?」

「あの、家賃も半分出します」

 シン君があわてて言い足す。

「え、ちょっと、何、言ってるの? だってお金出すのは親御さんでしょう? ダメに決まってるでしょ」

「それなら、大丈夫。ウチの親は舞衣歌ちゃんのこと知ってるから」

「なんで!?」

「シンが急に勉強にやる気出したのを不思議がってたからさ、好きな人ができたからだってバラしちゃった」

「兄さん!」

 シン君があわてた顔をして、カイさんの方を見た。

 カイさんは男らしくていつも自信満々で表情をくるくる変えるから、整った顔立ちの割にシン君とはあまり似ていないな……なんて思ってたけれど、こうやって並べてみると案外似てるんだな、と舞衣歌はいまいち状況が掴めていない頭でボーッと考えていた。

「シンは舞衣歌ちゃんと一緒にいたくてがんばったから許してあげて、って親を説得済みだから」

 カイさんがウインクをしながら歯を見せて笑う。

「あの、舞衣歌さん、俺、正月の後すぐ、兄さんに大学受かったら兄さんの家に住ませてもらえないかって相談して」

「そうそう。でも俺、ハワイであかりにプロポーズしてOKもらってたから、無理って言ったんだよね。それで、それなら舞衣歌ちゃんちに住まわせてもらえば? って」

「えっと、初耳なんですけど」

「うん、初めて言うもん」

 大の男がもんとか言ってても全然可愛くない、と舞衣歌はカイさんをにらんだ。

「あかりは知ってたの?」

 カイさんの隣でニヤニヤ笑っているあかりを舞衣歌はジトッとにらんだ。

「へへ、いちおう。ごめんね、舞衣歌」

「……連絡も無しに放っておいて、シン君のことなんて忘れて彼氏を作ってるかもしれないじゃん」

 もしかしたらシン君から連絡があるかも……と何度もスマホを見ては、そのたびに落ち込んでいたことを思い出して舞衣歌は不満を口にした。

「いや、そこはほら、舞衣歌ちゃんを信用してたって言うか」

「今まで舞衣歌は何年も彼氏できてなかったから、大丈夫かな~って」

「カイさん!! あかり!!」

「だって、舞衣歌、男物のパンツ見ながらため息ついてて未練ありありなんだもん」

「キャーッ!! あかりー!!」

 変な事を次から次へとばらされて、舞衣歌はクッションをあかりに投げつけた。

「舞衣歌ちゃん、話さなくてごめんね。でも大学も受からないようなヤツに舞衣歌ちゃんは任せられないからさ。シンがちゃんと大学受かったら、親の説得も含めて協力してあげるって約束したんだよね」

「あの、俺、国立に受かったら一人暮らしさせてくれって親に頼んで、あれから必死に勉強しました!」

「三日前が合格発表で、やっと会いに来れたんだよな?」

 カイさんがシン君の肩をポンポンと叩いた。

「兄さん……」

「でも、舞衣歌ちゃん、嫌なら断ってもいーよ。その時はシンは別のとこで一人暮らしすれば良いだけだから」

「ちょっと、兄さん!!」

 カイさんの突然の裏切りに、シン君は驚愕した顔をしてカイさんを見上げた。

「協力はするけど、俺は舞衣歌ちゃんの味方だもーん」

 シン君は真剣な顔をして舞衣歌に向きなおると、必死に言い募った。

「あの、俺、掃除、洗濯できます。料理も覚えます」

 だからお願いします、と訴えてくる。

「いやいや、シン君は勉強が忙しいでしょう? そんなことさせられないよ」

「……」

 シン君が眉をひそめて唇をグッと噛む。

「一緒にね、一緒にやるなら良いよ……」

 舞衣歌は恥ずかしさのあまり語尾が段々と小さくなってしまった。

「!!」

「私だって、いつもあんなに忙しいわけじゃないし」

 目を見開いて動かなくなってしまったシン君を見て、舞衣歌は顔を真っ赤にしてうつむいた。

「わぁお! 舞衣歌がOKするとは思わなかった」

「あかり! ……だって、私も、もう一回、シン君に会いたかったから」

 こんな公開告白のようなまねをして、恥ずかし過ぎて舞衣歌は両手で顔をおおった。
 そんな二人の様子を見てカイさんとあかりはニヤニヤしていた。

「では、お邪魔者は退散するんで」

「兄さん!」

「そうそう、あとは若い人どうしで」

「若い人って、同じ歳でしょ!」

「隣にいるんで、話が終わったら教えてね~」

 そう言うと、カイさんとあかりは手を振って仲良く部屋を出て行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

ミックスド★バス~混浴巡りしたい入浴剤開発者と後輩君のお話

taki
恋愛
【R18】温泉大好きな入浴剤開発者の温子(ぬくこ)が、会社の後輩くんと混浴温泉巡りをするお話です。えっちめシーンは❤︎マークです。

【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました

utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。 がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。

ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生

花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。 女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感! イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡

やさしい幼馴染は豹変する。

春密まつり
恋愛
マンションの隣の部屋の喘ぎ声に悩まされている紗江。 そのせいで転職1日目なのに眠くてたまらない。 なんとか遅刻せず会社に着いて挨拶を済ませると、なんと昔大好きだった幼馴染と再会した。 けれど、王子様みたいだった彼は昔の彼とは違っていてーー ▼全6話 ▼ムーンライト、pixiv、エブリスタにも投稿しています

憧れの童顔巨乳家庭教師といちゃいちゃラブラブにセックスするのは最高に気持ちいい

suna
恋愛
僕の家庭教師は完璧なひとだ。 かわいいと美しいだったらかわいい寄り。 美女か美少女だったら美少女寄り。 明るく元気と知的で真面目だったら後者。 お嬢様という言葉が彼女以上に似合う人間を僕はこれまて見たことがないような女性。 そのうえ、服の上からでもわかる圧倒的な巨乳。 そんな憧れの家庭教師・・・遠野栞といちゃいちゃラブラブにセックスをするだけの話。 ヒロインは丁寧語・敬語、年上家庭教師、お嬢様、ドMなどの属性・要素があります。

ミックスド★バス~湯けむりマッサージは至福のとき

taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。 温子の疲れを癒そうと、水川が温泉旅行を提案。温泉地での水川からのマッサージに、温子は身も心も蕩けて……❤︎ ミックスド★バスの第4弾です。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

処理中です...