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1月1日 新年①

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 ~ 1月1日 AM7:00 ~

「おはよう、シン君。あけましておめでとう」

「おめでとうございます」

 今日はちゃんとアラーム通りに起きられた舞衣歌が部屋から出ると、シン君もちょうど部屋から出てきたところだったので、改めて新年の挨拶をする。
 グレーの安物のスエット上下がオシャレな部屋着に見えてくるから美少年はすごい。

「あの、今日はスーパーお休みなんで、夕飯はコンビニでも良いですか?」

「全然良いよ~」

「何か希望とかありますか?」

 舞衣歌は頭の中でコンビニのメニューを思い浮かべるが、いまいちピンとこない。

「うーん。あ、そうだ。帰りに一緒に買いに行かない? 何があるか見たいし」

「それなら駅に着いたら連絡ください。迎えに行きます」

「明日はお休みだからビールも買っちゃおーっと」

「あ、俺、洗濯機回しておきます」

「どうもありがとうございます」

 舞衣歌がシン君に向かってペコリとお辞儀をすると、シン君が笑いながらわざとらしく目を細めて流し目をしてくる。

「いえ、宿代は身体で払うんで」

「ふふ、よろしくお願いします」

 一昨日のやり取りを思い出して笑ってしまった。
 舞衣歌が着替えて仕事に行く準備をしている間に、シン君が昨日スーパーで買った食パンを焼いてインスタントのコーヒーを入れてくれた。

「じゃあ、帰る時に連絡するね」

「はい。いってらっしゃい」

「いってきます」

 なんだか新婚家庭のような小っ恥ずかしいやりとりにむず痒くなりながら、舞衣歌は家を出た。


 ~ 1月1日 PM10:00 ~

 薬局を出る時に『帰るコール』をしたら、シン君が最寄りの駅まで迎えにきてくれた。

「舞衣歌さん、おかえりなさい」

「ただいま。わざわざありがとう」

 シン君が舞衣歌を見て目を細めてはにかんで笑うので、舞衣歌も釣られて笑ってしまう。
 二人は並んで帰り道の途中のコンビニに向かった。

「あ、お雑煮なんてあるんだ」

 コンビニのお弁当コーナーにはすましのお雑煮のカップが売っていて、かろうじてお正月の空気を醸し出していた。
 舞衣歌はせっかくだから、と缶ビールの入ったカゴにお雑煮のカップを入れた。

「お雑煮ですか?」

「うん。せっかくだから」

「じゃあ俺も」

 シン君の手にはボリュームたっぷりのハンバーグ弁当があったが、その上にお雑煮のカップをポンと乗せた。
 舞衣歌はレジでからあげも追加で頼んだ。
 コンビニを出てから舞衣歌は今日の仕事がいかに大変だったかをシン君にグチり、シン君は今日終えた課題の報告を舞衣歌にしながら仲良く歩いて帰った。
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