24 / 89
二章 巫女の舞
24.アイラナでの生活-2
しおりを挟む
お姉さんたちとの話が終わり、じゃあね~、と手をふって別れる。
「ずいぶんとモテるのね」
「言っただろ。この顔だから昔から女によく迫られるって」
「ふーん」
「なんだよ、ルー。あんた嫉妬してんのか?」
アミルがルルティアを見てニヤリと笑うのが腹立たしい。
「してません!」
「あれぐらい挨拶みたいなもんだろ。機嫌直せよ、ルー」
「だから違うってば! もう、アクアさま!!」
ルルティアの周りをただよっていたアクアさまはプクリと音を立てて小さな水の球を出すとアミルの顔にピュッとぶつけた。
「うわ、冷た! 何するんだよ!!」
往来で立ち止まって再び言い合いをしていると、向こうから背の高い見慣れた人影が近づいてきた。
「ヌイ! 往診中?」
「やぁ、ルル。君はこんなところでどうしたんだい?」
「アミルに町を案内してたの。あ、ねぇアミル。ヌイはお医者さんだから念のためケガを診てもらったら?」
「あ? ケガをしたのは二日も前だぞ?」
自分に話をふられると思っていなかったアミルが頭の後ろで組んでいた手を解いた。
ケガと聞いてヌイがアミルの腕を取る。
「ケガをしているのか? 君はこの前の宴にいた吟遊詩人だね」
「あの宴の後に崖から落ちたの」
「崖から!? それでこんな風に歩いて大丈夫なのか?」
「あ、えっと」
バズのことは内緒だったのを思い出し、ルルティアがなんと言い訳しようか考えていると、アミルがやれやれと言った風に口を開いた。
「崖って言っても低かったし大してケガもしなかった。それにアクアさまの力で治してもらったから」
「アクアさまにそこまで癒しの力があるのか?」
「えっと、なんか、アミルにはよく効いたみたいで」
(うん、嘘は言ってない……はず、多分)
最近ヌイを騙してばかりいるようでなんだか後ろめたい。
「そうそう、だからルーは俺の命の恩人なんだよな。色々と助けてもらったし。なぁ、ルー」
アミルがルルティアの肩をポンと叩いて顔をのぞきこみながらウインクする。
『色々』になんだか意味深なものを感じ取り、ルルティアは頬を染めて下を向いた。
そんな二人の様子を見てヌイが眉をひそめる。
ヌイはルルティアの手を取り自分のほうに引き寄せた。
「ルル、これからレナの診察だから一緒に帰ろう。今日の課題も終わって無いだろう」
「あ、うん。アミルは大丈夫?」
「あぁ。案内してくれてありがとな、ルー」
じゃあまた、とヌイに手を引かれながらルルティアが後ろをふり返り大声で返すと、とアミルはひらひらと手をふっていた。
*****
二人になってからヌイがルルティアに尋ねた。
「あれがルルを騙している変な男かい?」
「そんなんじゃないってば!!」
家に帰る道すがら、よく知らない人について行くんじゃないよ、とヌイが諭すように言う。
「うん。でもアクアさまが懐いてたから大丈夫だと思う」
ルルティアは自分が周りの人たちに巫女として大切にしてもらっていることも、世間知らずなこともよく知っていた。
でもアクアさまが自分に害を成す人を近づけるはずがない事もわかっていた。
「アクアさまの名前を出されたら確かめられない僕には何も言えないよ。ルルの言う事を信じるしかできないんだから」
「うん、わかってる。心配してくれてありがとう」
ヌイが仕方ない、という風にルルティアの頭をポンポンと叩いた。
「最近レナの調子が良いんだ。ルルの話を楽しみに待っているよ」
「ほんと? ふふ、色々あったからなんの話からしようかな。あ、そうだ! 外の国の歌を教えてもらったから歌ってあげようかな」
「あの変な男にかい?」
「もう! 変な男じゃなくてアミルよ。ねぇ、アミルに外の国の話を聞かせてもらえないかな? レナが喜びそう!」
「……ルルはずいぶんあの男を信用しているんだね」
ヌイが心配そうにルルティアを見つめて顔を曇らせる。
「うん……そうかも」
アミルのことはバズの加護を受けているという事以外ほとんど何も知らない。
いつもなら外の国から来たばかりの人をレナに会わせようなんて思わない。
でも、アクアさまとバズの様子を見ているとアミルを悪い人だとは思えなかった。
「でもきっと悪い人じゃないよ」
ヌイは少し思案した後、フーッとため息をついた。
「アリイさんに許可をもらえるか聞いてみよう」
「うん。ありがとう、ヌイ」
見上げて笑うルルティアの頭をヌイがもう一度ポンと叩いた。
「ずいぶんとモテるのね」
「言っただろ。この顔だから昔から女によく迫られるって」
「ふーん」
「なんだよ、ルー。あんた嫉妬してんのか?」
アミルがルルティアを見てニヤリと笑うのが腹立たしい。
「してません!」
「あれぐらい挨拶みたいなもんだろ。機嫌直せよ、ルー」
「だから違うってば! もう、アクアさま!!」
ルルティアの周りをただよっていたアクアさまはプクリと音を立てて小さな水の球を出すとアミルの顔にピュッとぶつけた。
「うわ、冷た! 何するんだよ!!」
往来で立ち止まって再び言い合いをしていると、向こうから背の高い見慣れた人影が近づいてきた。
「ヌイ! 往診中?」
「やぁ、ルル。君はこんなところでどうしたんだい?」
「アミルに町を案内してたの。あ、ねぇアミル。ヌイはお医者さんだから念のためケガを診てもらったら?」
「あ? ケガをしたのは二日も前だぞ?」
自分に話をふられると思っていなかったアミルが頭の後ろで組んでいた手を解いた。
ケガと聞いてヌイがアミルの腕を取る。
「ケガをしているのか? 君はこの前の宴にいた吟遊詩人だね」
「あの宴の後に崖から落ちたの」
「崖から!? それでこんな風に歩いて大丈夫なのか?」
「あ、えっと」
バズのことは内緒だったのを思い出し、ルルティアがなんと言い訳しようか考えていると、アミルがやれやれと言った風に口を開いた。
「崖って言っても低かったし大してケガもしなかった。それにアクアさまの力で治してもらったから」
「アクアさまにそこまで癒しの力があるのか?」
「えっと、なんか、アミルにはよく効いたみたいで」
(うん、嘘は言ってない……はず、多分)
最近ヌイを騙してばかりいるようでなんだか後ろめたい。
「そうそう、だからルーは俺の命の恩人なんだよな。色々と助けてもらったし。なぁ、ルー」
アミルがルルティアの肩をポンと叩いて顔をのぞきこみながらウインクする。
『色々』になんだか意味深なものを感じ取り、ルルティアは頬を染めて下を向いた。
そんな二人の様子を見てヌイが眉をひそめる。
ヌイはルルティアの手を取り自分のほうに引き寄せた。
「ルル、これからレナの診察だから一緒に帰ろう。今日の課題も終わって無いだろう」
「あ、うん。アミルは大丈夫?」
「あぁ。案内してくれてありがとな、ルー」
じゃあまた、とヌイに手を引かれながらルルティアが後ろをふり返り大声で返すと、とアミルはひらひらと手をふっていた。
*****
二人になってからヌイがルルティアに尋ねた。
「あれがルルを騙している変な男かい?」
「そんなんじゃないってば!!」
家に帰る道すがら、よく知らない人について行くんじゃないよ、とヌイが諭すように言う。
「うん。でもアクアさまが懐いてたから大丈夫だと思う」
ルルティアは自分が周りの人たちに巫女として大切にしてもらっていることも、世間知らずなこともよく知っていた。
でもアクアさまが自分に害を成す人を近づけるはずがない事もわかっていた。
「アクアさまの名前を出されたら確かめられない僕には何も言えないよ。ルルの言う事を信じるしかできないんだから」
「うん、わかってる。心配してくれてありがとう」
ヌイが仕方ない、という風にルルティアの頭をポンポンと叩いた。
「最近レナの調子が良いんだ。ルルの話を楽しみに待っているよ」
「ほんと? ふふ、色々あったからなんの話からしようかな。あ、そうだ! 外の国の歌を教えてもらったから歌ってあげようかな」
「あの変な男にかい?」
「もう! 変な男じゃなくてアミルよ。ねぇ、アミルに外の国の話を聞かせてもらえないかな? レナが喜びそう!」
「……ルルはずいぶんあの男を信用しているんだね」
ヌイが心配そうにルルティアを見つめて顔を曇らせる。
「うん……そうかも」
アミルのことはバズの加護を受けているという事以外ほとんど何も知らない。
いつもなら外の国から来たばかりの人をレナに会わせようなんて思わない。
でも、アクアさまとバズの様子を見ているとアミルを悪い人だとは思えなかった。
「でもきっと悪い人じゃないよ」
ヌイは少し思案した後、フーッとため息をついた。
「アリイさんに許可をもらえるか聞いてみよう」
「うん。ありがとう、ヌイ」
見上げて笑うルルティアの頭をヌイがもう一度ポンと叩いた。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる