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一章 精霊の愛し子
15.バズとアクアさま-2
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「「魚の愛し子?」」
アミルとルルティアの驚いた声が重なった。
「魚ってアクアさまのことだよね? 愛し子って巫女のこと? バズはおしゃべりが上手なのね。アクアさまは私にもほとんど喋ってくれないのに」
「アクアさまって?」
「私の精霊。アクアさま!」
ルルティアが呼びかけると、周りの温度がわずかに下がり冷たい水に触れたようなひんやりとした空気が二人を包んだ。
チュポンと現れた青い魚が長いヒレをなびかせながらふよふよとルルティアの周りを優雅にただよう。
「青い魚!?」
アミルは目を丸くしながらも、その目はルルティアの周りをただようアクアさまの姿をしっかりと捉えていた。
「やっぱりアミルにも見えるんだ!」
ルルティアはパチンと手を叩いて喜びの声を上げる。
「アクアさまっていうの。今は私と一緒にいるけど、昔からずっとこのアイラナにいらっしゃるのよ!」
「これはあんたの精霊じゃないのか?」
「これじゃなくてアクアさま! うーんと、アクアさまはこの島に宿ってるけど、次の巫女が産まれたりしたらその子の方に行くし、それまでは私がアクアさまの巫女だよ」
「……あぁ、そっか。そういやバズも俺が産まれる前は違うところにいたんだっけ……」
アミルは一人で納得して何やらブツブツとつぶやいている。
バズは話に興味がないようで、くぁ~と大きなあくびをしてかしかしと耳の後ろをかいていた。
「そうだ、アクアさま。アミルのケガ治せる?」
「あんたの精霊はそんなことできるのか?」
「うん。アクアさまは癒しの力があるから。といっても私以外には少ししか効かないんだけど」
「あーでも、俺のケガはバズがほとんど治してくれたから大丈夫だ」
「バズにも癒しの力があるの?」
「いいや。今までバズにそんな力は無かった。多分さっきの一体化のせいだな。あの時は何だか力が湧いてきて身体が回復するのを感じたから」
一体化なんてしたのは初めてだからよくわからないけど、とつけ足してアミルは手をグーパーさせながら首をひねっていた。
「でもまだちょっと痛そうだよ。アクアさま、お願い」
アクアさまがプクプクと音を立て淡い水色の光をまとい、ヒレを揺らしながらアミルの周りをゆったりと泳ぐ。
「うわ、すげぇな、痛みが引いた。……あぁ、ケガも治ってく」
「ほんと? 良かった! あれ? なんか効き目が強いみたい。アミルは精霊の加護を受けやすいとかあるのかな?」
ルルティアは傷のほとんど無くなったアミルの手を取って顔に近づけてまじまじと見た。
するとアミルの気まずそうな声がした。
「なぁ、もう良いだろ」
顔を上げるとアミルが耳の端を赤く染めながら横を向いていた。
アミルの手をがっつりと握っているのに気づき、ルルティアも恥ずかしくなりあわてて手を離した。
アミルとルルティアの驚いた声が重なった。
「魚ってアクアさまのことだよね? 愛し子って巫女のこと? バズはおしゃべりが上手なのね。アクアさまは私にもほとんど喋ってくれないのに」
「アクアさまって?」
「私の精霊。アクアさま!」
ルルティアが呼びかけると、周りの温度がわずかに下がり冷たい水に触れたようなひんやりとした空気が二人を包んだ。
チュポンと現れた青い魚が長いヒレをなびかせながらふよふよとルルティアの周りを優雅にただよう。
「青い魚!?」
アミルは目を丸くしながらも、その目はルルティアの周りをただようアクアさまの姿をしっかりと捉えていた。
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「アクアさまっていうの。今は私と一緒にいるけど、昔からずっとこのアイラナにいらっしゃるのよ!」
「これはあんたの精霊じゃないのか?」
「これじゃなくてアクアさま! うーんと、アクアさまはこの島に宿ってるけど、次の巫女が産まれたりしたらその子の方に行くし、それまでは私がアクアさまの巫女だよ」
「……あぁ、そっか。そういやバズも俺が産まれる前は違うところにいたんだっけ……」
アミルは一人で納得して何やらブツブツとつぶやいている。
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「そうだ、アクアさま。アミルのケガ治せる?」
「あんたの精霊はそんなことできるのか?」
「うん。アクアさまは癒しの力があるから。といっても私以外には少ししか効かないんだけど」
「あーでも、俺のケガはバズがほとんど治してくれたから大丈夫だ」
「バズにも癒しの力があるの?」
「いいや。今までバズにそんな力は無かった。多分さっきの一体化のせいだな。あの時は何だか力が湧いてきて身体が回復するのを感じたから」
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「でもまだちょっと痛そうだよ。アクアさま、お願い」
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「うわ、すげぇな、痛みが引いた。……あぁ、ケガも治ってく」
「ほんと? 良かった! あれ? なんか効き目が強いみたい。アミルは精霊の加護を受けやすいとかあるのかな?」
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するとアミルの気まずそうな声がした。
「なぁ、もう良いだろ」
顔を上げるとアミルが耳の端を赤く染めながら横を向いていた。
アミルの手をがっつりと握っているのに気づき、ルルティアも恥ずかしくなりあわてて手を離した。
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