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六章 オネエの騎士に溺愛されています

99.プロポーズ-1

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 次の日の朝、真子とアレクサンドラの二人はベッドの中で共に目を覚ました。
 目を合わせて微笑みあってから、チュッと軽くキスをして、互いの存在を確かめるように強く抱きあう。

「はぁ、起きたくないわね」

 アレクサンドラは真子の頭に頬ずりをしてから半身を起こし、真子に覆い被さるように両手をつくと額にキスを落としてからベッドを抜け出した。
 名残惜しくて真子がアレクサンドラの服の裾をツンと引っぱると、アレクサンドラは笑顔を浮かべながらベッドに腰かけてもう一度真子にキスをした。
 コンコンとノックの音とほぼ同時にドアが開き、そこにフェリシアが立っていた。

「おいこら。まだ身体は繋げるなよ」

「!! フェリシア様、下品!」

「ノックと同時に開けないでください」

 真子とアレクサンドラが同時に非難する。

「マコ、具合はどうだ?」

「大丈夫。もう何も問題無いよ。フェリシア様もありがとうございました」

 真子を助けるためにフェリシアも色々手を尽くしてくれたと、昨日ジェーンから聞いていた。

「今日から魔術の訓練だってできそう! って、バングル壊れちゃったんだった……」

 真子がバングルの無くなった手首を触る。

「訓練は続けるとしても、マコはもう弟子卒業だな」

「え!?」

 フェリシアは真子の部屋に入って来るとソファにどっかと座って足を組んだ。

「わしのバングル無しで魔力のコントロールができたんだからもう一人前だ」

「本当? ありがとうございます!!」

「おめでとう、マーコ」

 アレクサンドラが真子の頭を撫でて、真子もアレクサンドラを見つめて笑う。

「ただ、以前話したように好きな所に住んで良いというのは少し難しくなった」

「どういう事ですか?」

 アレクサンドラが眉をひそめて少し険しい声を出した。
 フェリシアも困ったような顔をしながら膝の上で手を組んだ。

「マコには今後も王宮内に住んでもらいたい。このまま月の宮に住んでも良いし、別の部屋を用意することもできる。マコの能力が強すぎるのでな。マコの安全のため……というのが建前だな」

「建前?」

「ようはマコの能力を他の国に奪われないように囲い込みたいというのが本音だ。今回は運良く助かったが、もしまたマコが狙われて万一にでも国にあだなす者どもの手にわたると困る」

 フェリシアは眉間にシワを寄せながら真子を見つめた。

「常闇の連中を捕まえる時に、活躍しすぎたな」

「そんなぁ……。アレクと一緒に住みたかったのに……」

 真子がアレクサンドラの顔を見て、へにょりと眉を下げる。

「今回はヘレナに出し抜かれたが、それでも王宮より安全なところはそうそう無い。ここにいる限りはわしがおぬしの味方になるし、シルヴィオやカイラがいるから王族どもも無茶な要求はできないだろう。他の国よりよっぽど安全で自由に過ごせると思うぞ?」

 フェリシアが首を傾げて、どうだ? と尋ねる。
 アレクサンドラが真子の手をギュッと握った。

「マーコ。マーコが嫌なら断って良いのよ。なんならアタシがこのババアを倒してミラーシアから逃げても良いし」

「おいこら」

「あら、ババアじゃなくてジジイだったかしら?」

「ふん、おぬしにやられるほど耄碌しとらん」

 真子はクスクス笑って二人のやりとりを止めた。

「アレク。私、この国が好きだよ。みんなにいっぱい優しくしてもらったからお返しできるならしたい。……もしいつか他の国に行きたいって思ったら、その時はアレクにお願いするかもしれないけど!」

「マコが不自由な思いをしないように、おぬしの希望はできる限りかなえるように努力はする」

 フェリシアがそう約束してくれた。

「でも、やっぱりアレクと一緒に住みたかったなぁ」

 真子がそうこぼすと、フェリシアがあきれたような顔をしてアレクサンドラに目を向けた。

「はぁ。いい加減おぬしも月の宮に引っ越してきたらどうだ? まとめて面倒みてやるぞ。どうせわしの元にいると迷惑がかかるとでも思って出ていったのだろう? さっさと戻ってこい、このバカ息子が」

「…………息子?」

 アレクサンドラが怪訝な顔をする。

「不満か? おぬしを拾った時から、わしはおぬしの親のつもりでいるぞ。弟子にするっていうのはそういう事だ」

「ねぇねぇ、フェリシア様! 私も?」

「まぁな。マコもこの世界でのわしの子だ。それにしても、わしの子らは問題児ばかりだな」

「ふふ、親に似たんじゃないですかね?」

 フェリシアがことさらに大きくため息をつくので、真子はニヤリと笑いながら言い返した。
 黙ったままのアレクサンドラが気になって、真子はアレクサンドラの顔を覗いた。

「アレク?」

「息子なんて……そんなの初めて聞きました……」

「まぁ、言ったこと無いからな。今までのおぬしだったら他人から与えられる愛情など、素直に受け取れなかっただろう?」

 チラリと真子の方に目線をやって、言外に今は違うだろう、と伝える。
 アレクサンドラは頬を赤らめると、片手で口元を隠して下を向いた。
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