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六章 オネエの騎士に溺愛されています

98.涙-2

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「……ジェーンに身体の様子を診てもらわないとね」

 アレクサンドラが真子を抱く手を緩め、そっと真子をベッドの上に横たえた。
 アレクサンドラはお手伝いさんを呼んで真子の目が覚めた事を伝え、ジェーンを呼んでくれるようお願いしていた。
 それからベッドサイドに用意されていた水差しの水を魔術で器用に温めてお湯にすると、果物の蜂蜜漬けをお湯に溶かした蜂蜜茶を真子に渡す。
 真子がコクンと一口飲み込むと、少し酸味のある温かい甘さが身体中に染み渡った。
 真子はコクコクと蜂蜜茶を飲み干した。
 空になったカップを受け取りながらアレクサンドラが尋ねる。

「おかわりは?」

「ん、大丈夫」

 喉が潤ってかすれた声がだいぶマシになった。

「はぁっ……良かった……」

 アレクサンドラはベッドサイドの椅子に座り、毛布の上に置かれた真子の手の上に自分の手を重ねると、そのままポスンとベッドに頭を乗せて動かなくなってしまった。

「? アレク……?」

 するとコンコンとドアがノックされジェーンが部屋に入ってきた。

「マコ!? 良かった、目が覚めたのね。どこか具合の悪いところは無い?」

「ジェーンさん!」

 ジェーンはベッドサイドまで小走りで駆け寄ると、真子の手を取って脈を取りおでこに手を当てて熱を測る。

「あなた、丸一日以上寝ていたのよ」

 真子が助け出されたのは昨日の朝で、それからアレクサンドラが真子を抱えて馬に乗り、ほぼ一日かけて王都に戻ったらしい。
 そしてその後は月の宮の真子の部屋に寝かされ、今はもう夕方だと言う。

「あの、身体はちょっとダルいけどたぶん大丈夫。それより、これ……」

 真子はベッドに頭を突っ伏すようにして倒れているアレクサンドラの姿をジェーンに見せた。
 ジェーンがアレクサンドラを見つめて困ったように頭をかいた。

「あぁ。この人ね、マコがいなくなってからほとんど寝ていなかったのよ」

「え!?」

「マコが見つかるまではね、昼はマコを探し回って、夜は月の光を浴びながらマコの気配を探って、ってほとんど寝ていなかったからね。マコが見つかってからも目が覚めるまでは不安で眠れないみたいで、ずっとここで様子を見ていたから」

 安心したのね、とジェーンが苦笑する。

「アレク……」

 真子はベッドに突っ伏すアレクサンドラの髪を撫でた。

「とはいえ、ここで寝られると邪魔でしょ。誰か人を呼んで来るわ」

「あ、ジェーンさん」

 くるりと向きを変えて人を呼びに行こうとするジェーンを真子が呼び止める。
 真子が少しだけ手を上げると、意識の無いはずのアレクサンドラの手が真子の手をがっちり握っていた。
 ジェーンと真子は目を見合わせて笑った。
 真子は身体をずらして自分のベッドに隙間を作るとジェーンを見上げた。

「手伝ってくれる?」

「マコにもゆっくり休んで欲しいんだけど……」

 ジェーンはふぅ、とため息をつきながらも、アレクサンドラの身体を持ち上げて真子の横に寝かせてくれた。
 ジェーンに薬をもらい、お手伝いさんが持ってきてくれたスープを片手を使って飲んでから、真子ももう一度ベッドに潜り込んだ。

 隣にアレクサンドラがいる。

 真子は嬉しくて、すりとアレクサンドラの肩に顔を寄せた。
 アレクサンドラのお日様のような香りを胸いっぱいに吸い込んで、真子はゆっくりと目を閉じた。
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