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五章 元の世界
94.私の名前を呼んで-2
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『マーコ』
名前を呼ばれた気がして真子が目を開けた。
そこはまだ暗闇の中だったが、それでも身体の下には地面があり肌が周りの空気をしっかりと感じるのでここが現実世界だとわかる。
真子は手をギュッと握って開いてをくり返し、感覚があるのを確かめる。
次に身体のあちこちを触って動かしてみて、怪我をしていないかを確かめた。
暗闇に目が慣れてくると、真子がいるのは洞窟のようだとわかった。
この前の坑道のような所ではなく、ゴツゴツした壁に天井も高く、むかし修学旅行で行った鍾乳洞に似ていた。
真子は風の吹いてくる方に向かってみることにした。
光る苔があるのか洞窟の壁は所々ぼんやりと光っていて、真子はそれを頼りに壁に手をつきながら少しずつ進んだ。
行き止まりの岩壁の天井の間にわずかな隙間があって、そこから風が吹いてきていた。
真子は試しに魔力を使ってみることにした。
すると真子の身体が白く光り出し、魔力がどんどん溢れ出していってしまう。
体内の魔力の河が一気に乱れたのがわかった。
このまま魔力を使うわけにはいかない。
真子はその場に座って瞑想して集中する。
フェリシアにもらったバングルは壊れてしまったけれど、魔力を使う感覚はちゃんと覚えている。
深く息を吸って吐いてを繰り返し、魔力の河の流れを妨げないようにほんの少しだけ魔力を掬うのをイメージをする。
真子は長い時間をかけて、やっと爪の先ほどの魔力の魔力玉を作り出すことができた。
真子は少しずつ少しずつ取り出す魔力を増やしていく。
何度も失敗を繰り返し、そしてようやくビー玉大の魔力玉を作り出せるようになって、真子はふぅと息を吐いた。
最近では手のひら大の魔力玉までは作り出せるようになっていたのだが、バングルの助けがない今の真子ではこれが精一杯だった。
これ以上大きい魔力玉を作るのは無理そうだ。
真子はビー玉大の魔力玉を作って自分に回復魔術を使った。
少しだけれど身体の疲れが楽になった。
幸いなことに魔力は尽きないので、真子はまた魔力玉を作り今度は伝令の蝶を作る。
暗闇の中で真っ白な蝶をふわりと飛ばす。
「アレクのところへ」
蝶はゆらゆらと天井の岩の隙間から外に飛んで行った。
真子は指の先に魔力をまとわせて強化すると、カリカリと岩の壁を削った。
魔力が薄れて指先が痛くなってくると回復魔術を使いまた指先を強化する。
そしてふわりと蝶を飛ばす。
真子はカリカリと壁を削り続けるが、いくら魔力で強化しているとはいえ硬い岩壁を指先で削るのは途方もなかった。
それでも真子は壁を削り、回復魔術を使い、蝶を飛ばした。
次第に真子の指先が痛みでジンジンしてきた。回復魔術の効果より、消耗する方が大きくなってきているのかもしれない。
真子はまた、ふわりと蝶を飛ばす。
「アレクのところへ」
小さな蝶の飛べる距離はほんのわずかだ。
真子が今いるこの洞窟が、一体どの辺りにあるのかはさっぱりわからない。
小さな蝶はアレクサンドラのところまで飛べないかもしれない。
それでも真子はふわりと小さな白い蝶を飛ばし続けた。
*****
時間の感覚もなくなり朦朧とする意識の中でカリカリと岩壁を削っていると、ガラ、と上の方から音がして岩が崩れ落ちてきた。
「きゃっ!」
真子はなんとか頭を守ったが、肩と足を痛めてしまった。
暗くてよく見えないが触るとぬるっとした感触があるので血が出ているのかもしれない。
真子は回復魔術を使おうとするが、ズキズキと痛みが襲い集中できない。
真子は震える手でなんとか蝶を出して飛ばすと、そのまま痛みで意識を失った。
名前を呼ばれた気がして真子が目を開けた。
そこはまだ暗闇の中だったが、それでも身体の下には地面があり肌が周りの空気をしっかりと感じるのでここが現実世界だとわかる。
真子は手をギュッと握って開いてをくり返し、感覚があるのを確かめる。
次に身体のあちこちを触って動かしてみて、怪我をしていないかを確かめた。
暗闇に目が慣れてくると、真子がいるのは洞窟のようだとわかった。
この前の坑道のような所ではなく、ゴツゴツした壁に天井も高く、むかし修学旅行で行った鍾乳洞に似ていた。
真子は風の吹いてくる方に向かってみることにした。
光る苔があるのか洞窟の壁は所々ぼんやりと光っていて、真子はそれを頼りに壁に手をつきながら少しずつ進んだ。
行き止まりの岩壁の天井の間にわずかな隙間があって、そこから風が吹いてきていた。
真子は試しに魔力を使ってみることにした。
すると真子の身体が白く光り出し、魔力がどんどん溢れ出していってしまう。
体内の魔力の河が一気に乱れたのがわかった。
このまま魔力を使うわけにはいかない。
真子はその場に座って瞑想して集中する。
フェリシアにもらったバングルは壊れてしまったけれど、魔力を使う感覚はちゃんと覚えている。
深く息を吸って吐いてを繰り返し、魔力の河の流れを妨げないようにほんの少しだけ魔力を掬うのをイメージをする。
真子は長い時間をかけて、やっと爪の先ほどの魔力の魔力玉を作り出すことができた。
真子は少しずつ少しずつ取り出す魔力を増やしていく。
何度も失敗を繰り返し、そしてようやくビー玉大の魔力玉を作り出せるようになって、真子はふぅと息を吐いた。
最近では手のひら大の魔力玉までは作り出せるようになっていたのだが、バングルの助けがない今の真子ではこれが精一杯だった。
これ以上大きい魔力玉を作るのは無理そうだ。
真子はビー玉大の魔力玉を作って自分に回復魔術を使った。
少しだけれど身体の疲れが楽になった。
幸いなことに魔力は尽きないので、真子はまた魔力玉を作り今度は伝令の蝶を作る。
暗闇の中で真っ白な蝶をふわりと飛ばす。
「アレクのところへ」
蝶はゆらゆらと天井の岩の隙間から外に飛んで行った。
真子は指の先に魔力をまとわせて強化すると、カリカリと岩の壁を削った。
魔力が薄れて指先が痛くなってくると回復魔術を使いまた指先を強化する。
そしてふわりと蝶を飛ばす。
真子はカリカリと壁を削り続けるが、いくら魔力で強化しているとはいえ硬い岩壁を指先で削るのは途方もなかった。
それでも真子は壁を削り、回復魔術を使い、蝶を飛ばした。
次第に真子の指先が痛みでジンジンしてきた。回復魔術の効果より、消耗する方が大きくなってきているのかもしれない。
真子はまた、ふわりと蝶を飛ばす。
「アレクのところへ」
小さな蝶の飛べる距離はほんのわずかだ。
真子が今いるこの洞窟が、一体どの辺りにあるのかはさっぱりわからない。
小さな蝶はアレクサンドラのところまで飛べないかもしれない。
それでも真子はふわりと小さな白い蝶を飛ばし続けた。
*****
時間の感覚もなくなり朦朧とする意識の中でカリカリと岩壁を削っていると、ガラ、と上の方から音がして岩が崩れ落ちてきた。
「きゃっ!」
真子はなんとか頭を守ったが、肩と足を痛めてしまった。
暗くてよく見えないが触るとぬるっとした感触があるので血が出ているのかもしれない。
真子は回復魔術を使おうとするが、ズキズキと痛みが襲い集中できない。
真子は震える手でなんとか蝶を出して飛ばすと、そのまま痛みで意識を失った。
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