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三章 街角の襲撃
52.魔力操作-3
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魔力操作の訓練を続けて、真子はようやくビー玉くらいの大きさの魔力玉を維持できるようになった。
「イメージです。しっかりと頭の中に想像してください」
「はい」
真子が集中すると、魔力玉を白い小さな蝶の形にすることができた。
小さな蝶はひらひらとシルヴィオの耳元まで飛んだ。
『できたかな?』
真子の声を伝えた蝶はふわりと消えた。
「上出来です。もう少し扱える魔力の量が増えれば鳥の形も作れて、運べる距離や言葉も増えますよ」
それからシルヴィオが良いことを思いついた、という顔をする。
「具体的な目標があった方ががんばれそうですね。鳥を飛ばせるようになったら、団長に恋文を送りましょうか」
「へ? 恋文って……」
「団長から返事をもらえれば、耳元で本人の声で愛の言葉を囁いてくれますよ。後に残せないのが難点ですが」
アレクサンドラの声で愛の言葉……と想像して、真子は頬を赤く染める。
「団長は普段どんな風に愛を囁くんですか?」
「えぇ~……」
シルヴィオが真子のノロケを聞き出そうとさらに尋ねるが、真子はふとあることに気づいてしまった。
「……私、アレクサンドラさんに好きって言われたことない、かも」
「そうなんですか? 団長は普段から好き好き言ってそうなのに不思議ですね」
「カワイイは言われるけど……」
真子は途端に不安になった。
真子がお願いして手を出してもらったけれど、その後は真子だけを気持ち良くしてアレクサンドラは中には挿れずに終わっていた。
もしかして、真子がたのんだから仕方なくだったのだろうか。
その日の休憩のお茶の時間に、まったく集中できずに淹れたお茶の味にダメ出しをされながら真子はフェリシアに泣きついた。
「私がアレクサンドラさんのこと好きって言ったから? アレクサンドラさんは優しいから、やっぱり同情だったのかな?」
「馬鹿らしい。おぬしはあやつの言葉しか信用ならんのか?」
「えぇ?」
真子は半泣きでフェリシアを見つめる。
「わしがもし今おぬしのことを好きだ、愛していると言ったら信用できるのか?」
フェリシアに嫌われているとは感じないが、恋愛的な好意を向けられているとはとても思えない。
真子はゆっくりと首を横に振るが、それでもまだ泣きそうな顔をしているとフェリシアがふぅとため息をついた。
「あやつは臆病だからな。一方的に自分から与える分には平気だったが、与えられ受け取るとなったら怖くなったんだろうな」
フェリシアは真子の淹れた美味しくないお茶をもう一口飲んで顔をしかめながら、ふん、と鼻を鳴らした。
「どういうこと?」
「おぬしはナーゴを知っておるか?」
「アレクサンドラさんが飼っていた猫のこと?」
「あやつが拾って愛しみ育てた黒猫だ。あやつにとっては初めての家族だった。わしの弟子になってからも、やつの出自からあてこするやつはいくらでもいた。そんな中で唯一心を許した存在だった」
ナーゴはアレクサンドラと十年共に過ごした、とフェリシアは言った。
「アレクサンドラが仕事で留守の際に怪我を負い、回復魔術をかけても完全には治らず、結局その時の怪我が元で亡くなった。あやつは大切な存在をまた失うことを恐れているんだろう。臆病者だからおぬしを大切に思っていることを認めてもそれを口に出す勇気が無い。どうせそんなところだ」
ふん、情けない、とまた鼻を鳴らしてから挑発するように真子を見つめた
「言葉が無いと、あやつに思われている自信が無いか?」
真子は今までアレクサンドラがしてくれた様々なことや、自分へ触れる際の手つき、自分に向ける目線を思い出す。
『マーコ』
アレクサンドラが真子の名を呼ぶ声が心に響く。
真子はゆっくりと首を横に振った。
「大切にしてもらっている……と思う」
真子が顔を上げると、フェリシアとシルヴィオがそんな真子の姿を見て満足そうに笑っていた。
「イメージです。しっかりと頭の中に想像してください」
「はい」
真子が集中すると、魔力玉を白い小さな蝶の形にすることができた。
小さな蝶はひらひらとシルヴィオの耳元まで飛んだ。
『できたかな?』
真子の声を伝えた蝶はふわりと消えた。
「上出来です。もう少し扱える魔力の量が増えれば鳥の形も作れて、運べる距離や言葉も増えますよ」
それからシルヴィオが良いことを思いついた、という顔をする。
「具体的な目標があった方ががんばれそうですね。鳥を飛ばせるようになったら、団長に恋文を送りましょうか」
「へ? 恋文って……」
「団長から返事をもらえれば、耳元で本人の声で愛の言葉を囁いてくれますよ。後に残せないのが難点ですが」
アレクサンドラの声で愛の言葉……と想像して、真子は頬を赤く染める。
「団長は普段どんな風に愛を囁くんですか?」
「えぇ~……」
シルヴィオが真子のノロケを聞き出そうとさらに尋ねるが、真子はふとあることに気づいてしまった。
「……私、アレクサンドラさんに好きって言われたことない、かも」
「そうなんですか? 団長は普段から好き好き言ってそうなのに不思議ですね」
「カワイイは言われるけど……」
真子は途端に不安になった。
真子がお願いして手を出してもらったけれど、その後は真子だけを気持ち良くしてアレクサンドラは中には挿れずに終わっていた。
もしかして、真子がたのんだから仕方なくだったのだろうか。
その日の休憩のお茶の時間に、まったく集中できずに淹れたお茶の味にダメ出しをされながら真子はフェリシアに泣きついた。
「私がアレクサンドラさんのこと好きって言ったから? アレクサンドラさんは優しいから、やっぱり同情だったのかな?」
「馬鹿らしい。おぬしはあやつの言葉しか信用ならんのか?」
「えぇ?」
真子は半泣きでフェリシアを見つめる。
「わしがもし今おぬしのことを好きだ、愛していると言ったら信用できるのか?」
フェリシアに嫌われているとは感じないが、恋愛的な好意を向けられているとはとても思えない。
真子はゆっくりと首を横に振るが、それでもまだ泣きそうな顔をしているとフェリシアがふぅとため息をついた。
「あやつは臆病だからな。一方的に自分から与える分には平気だったが、与えられ受け取るとなったら怖くなったんだろうな」
フェリシアは真子の淹れた美味しくないお茶をもう一口飲んで顔をしかめながら、ふん、と鼻を鳴らした。
「どういうこと?」
「おぬしはナーゴを知っておるか?」
「アレクサンドラさんが飼っていた猫のこと?」
「あやつが拾って愛しみ育てた黒猫だ。あやつにとっては初めての家族だった。わしの弟子になってからも、やつの出自からあてこするやつはいくらでもいた。そんな中で唯一心を許した存在だった」
ナーゴはアレクサンドラと十年共に過ごした、とフェリシアは言った。
「アレクサンドラが仕事で留守の際に怪我を負い、回復魔術をかけても完全には治らず、結局その時の怪我が元で亡くなった。あやつは大切な存在をまた失うことを恐れているんだろう。臆病者だからおぬしを大切に思っていることを認めてもそれを口に出す勇気が無い。どうせそんなところだ」
ふん、情けない、とまた鼻を鳴らしてから挑発するように真子を見つめた
「言葉が無いと、あやつに思われている自信が無いか?」
真子は今までアレクサンドラがしてくれた様々なことや、自分へ触れる際の手つき、自分に向ける目線を思い出す。
『マーコ』
アレクサンドラが真子の名を呼ぶ声が心に響く。
真子はゆっくりと首を横に振った。
「大切にしてもらっている……と思う」
真子が顔を上げると、フェリシアとシルヴィオがそんな真子の姿を見て満足そうに笑っていた。
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