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三章 街角の襲撃

46.常闇-1

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 真子とフェリシアはしばらく『祈りの部屋』に籠ることになった。
 真子の魔力操作の訓練はなるべく人目につかない方が良いという判断からだ。

「おぬしは基本的には瞑想していろ。魔力の流れを感じられるようになったら次に進む」

「はい」

 フェリシアは瞑想する真子の隣に座り、ポケットから銀色のものを取り出した。

「それは?」

「バングルだな。わしがこのバングルに魔力を込める。これを着ければおぬしの身体の周りをわしの魔力が覆うようになる。そうして魔力が外に溢れ出ないようにする」

「アレクサンドラさんにもらったブレスレットとは違うの?」

 真子が手を上げて、自分の左手に巻かれているブレスレットをひらひらと見せた。

「それはおぬしの場所がわかるだけだが、こっちの方が性能が良いぞ。多少の魔術攻撃なら防ぐし、バングルが壊れたり、おぬしに何か有ったりすればわしが気づくようになっているからな」

「ふぅん、GPS付きの防犯ブザーみたいな感じかな」

「なんだそのジーピーエスというのは」

「えーと……空に浮かんだ人工衛星から信号が出て場所がわかる……的な……?」

 真子があやふやな知識をなんとか総動員させて説明すると、フェリシアはそれはなんだ、どういうものだ、と興味深そうに次から次へと質問してくる。
 詳しく答えられない事が多かったけれど、それでも久しぶりに元の世界の話ができて真子は少し懐かしく思った。

 そうして真子は、自分がなんとなく元の世界の話を避けていたことに気がついた。

(思い出して帰りたくなったり、皆に変に思われたりするのが怖かったのかも)

「ふぅむ。おぬしの世界とは、やはりだいぶ違うようだな」

「うん。そうだね」

 こうして気軽に元の世界の話ができたことで、真子は少しだけ心が軽くなった。

「おぬしの世界に魔術騎士はいなかったか?」

「魔術士はいなかったけど、騎士は一応いるとこにはいるのかな? でも私の周りにはいなかったよ」

 あ、でも外国では呪術師とかいるってニュースで見たことあるな……と真子があれこれ頭を巡らせていると、フェリシアがなんて事の無いような声で聞いた。

「だから、マリーベルがおぬしを守って死ぬのに納得がいかんのか?」

「え?」

 フェリシアの手は虹色の小さな魔力玉をいくつも操り、バングルに器用に何か模様を刻んでいる。

「おぬしを守ってマリーベルが死ぬことと、マリーベルを助けようとしておぬしが死ぬことを同じだと思うか?」

「……それは、だって……みんな命は平等で……」

「あの場においておぬしとマリーベルの命は平等ではなかった。おぬしをディアナに渡すわけにはいかなかった」

「そんな! フェリシア様はマリーベルちゃんが死んでも良いって言うの!?」

「あぁ、そうだ」

 フェリシアが冷たく言い放った。
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