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三章 街角の襲撃
44.月の宮-1
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祈りの部屋に入ってきた美しい青年はズカズカと真子の側までやってきた。
青年は立派な体躯を屈めて真子の顎に手をかけると、ズイと上を向かせて真子の顔を覗き込んだ。
真子を覗き込むその顔はおそろしく整っている。
「む、魔力の河の流れが乱れておるな」
青年は眉間に深く皺を寄せた。
「おぬし、やるなと言ったのに魔力付与をしたな。河の流れを無理矢理変えるようなものだから止めろと言っただろうが」
青年は真子のことを知っているようで、顔を近づけて真子を覗き込むその目は虹色の不思議な目をしていた。
その目の色に真子は見覚えがあった。
「……もしかしてフェリシア様?」
「ん? あぁ、そうだ。今は男装だから呼び名としてはフェリクスだな」
「えぇ! だって全然見た目が違う!!」
「わしの見た目は幻術だと言っただろうが」
フェリシアならぬフェリクスはあきれた顔をした。
性別だけでなく体型や年齢までも変わるとは思っていなかったので、あまりの変わりように真子は驚いた。
フェリクスは真子のおでこをペシペシと叩いた。
「それより、おぬし。このまま河の流れが乱れて魔力の河を失っていたら、その身がどうなっていたかわからんのだぞ」
「……だって」
「だってじゃない。普通の魔術士だって魔力切れを起こせば倒れるし、場合によっては命を落としかねん。ほとんどの場合休めば回復するが、おぬしの場合は回復するかどうかもわからんのだぞ」
真子がフェリクスにパシンと一際強くおでこを叩かれながら怒られていると、祈りの部屋の扉の方から声がした。
「マコさん、いらっしゃいますか?」
「シルヴィオさん!!」
「マリーベルの容態は落ち着きました。回復まではもう少し時間がかかりそうですが、とりあえず命の心配はありません」
「良かった……」
「マコさん。これ、団長から預かりました」
手渡されたのは真子の着替え一式だった。
「あ……。ありがとうございます」
「団長は今回の事件の後始末で手が離せないので、私が代わりに持って来ました」
「そう……ですか……」
真子はアレクサンドラと顔を合わせずに済んでホッとしたような、申し訳ないような、よくわからない気持ちになった。
真子はフェリクスの研究室に備え付けられているシャワーを借りて新しい服に着替えた。
シャワーを浴びると、フェリクスとシルヴィオは研究室のソファに座りお茶を飲んでいた。
シルヴィオは真子に砂糖とミルクのたっぷり入った温かいお茶をすすめ、カップを置いて話し始める。
「先日の魔術士団の訓練場でマコさんの魔力があふれた時の事が、魔術士団の中で噂になっていたみたいです。それをどこからか知ったディアナがマコさんを狙った、というのが今回の事件の真相のようです」
「ご、ごめんなさい」
「マコさんのせいじゃありません」
「まぁ、特に口止めもしとらんかったしな」
「マコさんがこの世界に来た時、私たちはディアナを追っていました。その時ディアナもマコさんの白い光を浴びて魔力付与されていたのかもしれません」
「そこにマコの噂を聞いて確かめにきた、というところか」
ふむ、とフェリクスがお茶のカップを置いて膝の上で手を組んだ。
「ひとまずその荒れた河の流れを鎮めて魔力を整える必要があるな。アレクサンドラもしばらく留守だし、おぬしはわしの宮で過ごせ」
「宮?」
「月の宮だ。王宮内にあるわしの家だ。星見の塔のすぐ近くにある。そこの窓から覗けば見えるんじゃないか?」
「フェリクス様は王宮内に住んでいるの? えっと王様なの?」
「王ではない。わしはこの国お抱えの大魔法使いだからな。宮の一つや二つくらいもらえる」
「さすがに二つはあげられませんよ」
フフン、とフェリクスが得意げな顔を浮かべるていのを見て、シルヴィオが苦笑した。
「まぁ、王族というなら此奴やカイラの方か」
「え?」
フェリクスの言ったことの意味がわからず真子は首を傾げた。
青年は立派な体躯を屈めて真子の顎に手をかけると、ズイと上を向かせて真子の顔を覗き込んだ。
真子を覗き込むその顔はおそろしく整っている。
「む、魔力の河の流れが乱れておるな」
青年は眉間に深く皺を寄せた。
「おぬし、やるなと言ったのに魔力付与をしたな。河の流れを無理矢理変えるようなものだから止めろと言っただろうが」
青年は真子のことを知っているようで、顔を近づけて真子を覗き込むその目は虹色の不思議な目をしていた。
その目の色に真子は見覚えがあった。
「……もしかしてフェリシア様?」
「ん? あぁ、そうだ。今は男装だから呼び名としてはフェリクスだな」
「えぇ! だって全然見た目が違う!!」
「わしの見た目は幻術だと言っただろうが」
フェリシアならぬフェリクスはあきれた顔をした。
性別だけでなく体型や年齢までも変わるとは思っていなかったので、あまりの変わりように真子は驚いた。
フェリクスは真子のおでこをペシペシと叩いた。
「それより、おぬし。このまま河の流れが乱れて魔力の河を失っていたら、その身がどうなっていたかわからんのだぞ」
「……だって」
「だってじゃない。普通の魔術士だって魔力切れを起こせば倒れるし、場合によっては命を落としかねん。ほとんどの場合休めば回復するが、おぬしの場合は回復するかどうかもわからんのだぞ」
真子がフェリクスにパシンと一際強くおでこを叩かれながら怒られていると、祈りの部屋の扉の方から声がした。
「マコさん、いらっしゃいますか?」
「シルヴィオさん!!」
「マリーベルの容態は落ち着きました。回復まではもう少し時間がかかりそうですが、とりあえず命の心配はありません」
「良かった……」
「マコさん。これ、団長から預かりました」
手渡されたのは真子の着替え一式だった。
「あ……。ありがとうございます」
「団長は今回の事件の後始末で手が離せないので、私が代わりに持って来ました」
「そう……ですか……」
真子はアレクサンドラと顔を合わせずに済んでホッとしたような、申し訳ないような、よくわからない気持ちになった。
真子はフェリクスの研究室に備え付けられているシャワーを借りて新しい服に着替えた。
シャワーを浴びると、フェリクスとシルヴィオは研究室のソファに座りお茶を飲んでいた。
シルヴィオは真子に砂糖とミルクのたっぷり入った温かいお茶をすすめ、カップを置いて話し始める。
「先日の魔術士団の訓練場でマコさんの魔力があふれた時の事が、魔術士団の中で噂になっていたみたいです。それをどこからか知ったディアナがマコさんを狙った、というのが今回の事件の真相のようです」
「ご、ごめんなさい」
「マコさんのせいじゃありません」
「まぁ、特に口止めもしとらんかったしな」
「マコさんがこの世界に来た時、私たちはディアナを追っていました。その時ディアナもマコさんの白い光を浴びて魔力付与されていたのかもしれません」
「そこにマコの噂を聞いて確かめにきた、というところか」
ふむ、とフェリクスがお茶のカップを置いて膝の上で手を組んだ。
「ひとまずその荒れた河の流れを鎮めて魔力を整える必要があるな。アレクサンドラもしばらく留守だし、おぬしはわしの宮で過ごせ」
「宮?」
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「さすがに二つはあげられませんよ」
フフン、とフェリクスが得意げな顔を浮かべるていのを見て、シルヴィオが苦笑した。
「まぁ、王族というなら此奴やカイラの方か」
「え?」
フェリクスの言ったことの意味がわからず真子は首を傾げた。
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