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三章 街角の襲撃

40.街中の襲撃-2

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 真子が叫んだ瞬間、四人それぞれがスラリと剣を抜き馬上から氷の槍をバキバキと折っていった。
 真子はアレクサンドラたちに次々と襲いかかるディアナの攻撃を、震えながらただ見守ることしか出来なかった。

 ソリが荒野を抜けると目の前には岩山がそびえたっていた。
 岩山の荒れたでこぼこ道をディアナが氷の道で平らに整え、ソリはすごい速さで岩山を登っていく。
 馬たちは岩に足を取られ若干そのスピードを落としたが、ソリもまた背後から飛んでくる火球を避けながら進んでいるので徐々にその距離は縮まっていった。
 ディアナは青い魔力玉をいくつも宙に浮かべると、アレクサンドラたちの上に大量の氷の矢を降らせた。

「きゃあっ!!」

 真子の悲鳴が殻の中で響く。

 しかしアレクサンドラが軽く手を振ると、氷の矢の全てが一瞬で炎に包まれ焼き払われた。ディアナがそれを見て舌打ちした。

「クソッ!!」

 岩山を進むソリの前方には大きな崖がパックリと口を開けていた。
 ディアナはすぐに向こう岸まで届く大きさの氷の橋をかけた。
 アレクサンドラが一際大きな火球を作り氷の橋まで飛ばして溶かそうとするが、ディアナが溶かされるそばから氷の橋を再生していくので溶かしきれない。

「ふんっ、アタシの勝ちね」

 ソリが氷の橋を渡り始めた。

 橋を渡り終えた後に壊されてしまえばアレクサンドラたちは追いつけなくなるだろう。

 その瞬間、マリーベルが真子と自分を包んでいる殻をふっと解いた。

 殻の周りを覆っていた氷の塊が、急に殻が消えたせいで支えを失ってゴトンとソリの床の上に落ちた。
 マリーベルはそのまま真子の身体を抱えこんでソリの縁に足をかけると、崖に向かって勢いよく飛び降りた。
 マリーベルが真子をギュッと抱える。
 二人の身体は崖下に向かって真っ逆さまに落ちていった。

「このっ! 逃すかっ!!」

 頭上からディアナの叫び声が聞こえて、大量の氷の矢が降ってきた。

「ごめん、マコちゃん」

 ふとマリーベルの魔力を流されたと思ったら、真子の身体が白く光り谷全体を白い光が包んだ。
 マリーベルは大きな茶色の魔力玉を出すと、柔らかく弾力のある大きな塊を作って崖下に広げ、ボスン、と二人の身体を受け止めさせた。
 頭上から降ってきた大量の氷の矢が柔らかい塊にボスボスと突き刺さり、塊はすぐに消えてしまった。
 そのまま二人の身体は地面に落ちたが、地面まで大して距離が無かったので真子は少し尻餅をついただけですんだ。

 マリーベルはすぐに真子を自分の身体の下に隠すように抱え直し、もう一度真子に魔力を流した。
 崖下に白い光が広がり、マリーベルは二人の全身を包むように大きな殻を作っていく。
 二人を包む殻は頭上から降ってくる氷の矢をガツガツと跳ね返した。

「マリーベルちゃん……?」

 マリーベルは真子の頭をギュッと抱えこんだまま、ジッとそのまま黙り込んでいた。
 そのうち氷の矢の攻撃が止んで周りが静かになった。
 しばらく動かないで待っていると、遠くの方から二人を呼ぶアレクサンドラの声が聞こえた。

「マーコ! マリーベル! 無事?」

「マリーベルちゃん、アレクサンドラさんが来てくれたよ!」

 真子がマリーベルをポンポンと叩くと、マリーベルはグラリと体勢を崩して真子の上に倒れ込んだ。
 そして真子とマリーベルを包んでいた大きな殻がふっと溶けるように消えた。
 殻が消えると、アレクサンドラたちが崖下に向かって岩壁を馬ごとゆっくりと降りてきているのが見えた。

 ホッとしてマリーベルの身体をどかそうとすると、真子の手のひらに生暖かいぬるりとした感触が伝わってきた。
 真子が自分の手のひらを見ると、その手は真っ赤に染まっていた。
 慌ててマリーベルの身体の下から抜け出すと、マリーベルの背中には大きな氷の矢がいくつも刺さっていた。

「きゃあーーっ!! マリーベルちゃん!!」

 谷底に真子の悲痛な叫び声が響き渡った。
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