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一章 白い光に包まれて
13.初めての銀夜祭-1
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真子が少しずつミラーシアの生活に慣れてきたころ、執務室で仕事をしていたアレクサンドラが当たり前のように言った。
「マーコ、明日は銀夜祭よ」
「銀夜祭?」
「そう。金の月が隠れて銀の月だけが昇る夜。マーコの世界には無かった?」
「うん。というか月がふたつもあるの?」
「あら! マーコの世界は月がふたつ無いの?」
「ひとつしかないよ」
「へぇ、変わっているのねぇ」
以前アレクサンドラが口にした「ふたつの月」とはどうやらそのまま言葉通りの意味で、この世界には月がふたつあるらしい。
「王都で色々な催しがあるから、当日はアタシが案内してあげるわね」
そう言ってアレクサンドラが真子にウインクした。
*****
銀夜祭の当日、シルヴィオに呼び出され真子はアレクサンドラと一緒に王宮に向かった。
気づいたら真子はアレクサンドラと引き離されて、何人かの女の人に裸にされ風呂に入れられ、頭のてっぺんから足の先までキレイに磨かれていた。
(えぇ? 何これ~?)
この世界に来てからなんだかしょっちゅう人に身体を洗われている気がする。
相変わらずアレクサンドラも一緒にお風呂に入ってきて洗ってくるので、いい加減慣れてしまったが。
風呂上がりに用意されていたのは黒いきらびやかな衣装だった。
「髪や目の色と合って、とてもお似合いですよ」
着付けを手伝ってくれた女の人が真子を褒めてくれた。
黒い衣装は上衣がハイネックにノースリーブのチャイナドレスみたいな形をしていて、カワイイけれど身体のラインがしっかり出て少し恥ずかしかった。
全体的にカラフルな糸で刺繍がほどこされており、それはまるで暗闇を蝶が舞っているように見える。
上衣のスリットの隙間からは下衣が覗き見えており、薄手のロングスカートの形をしていた。
真子がその場で小さくクルッと回ってみると、下衣がふわっと広がった。
短い髪の両サイドは、長い赤い紐と一緒に器用に編み込まれていて、余った紐は首の後ろで結んで背中に垂らされた。
紐の先に小さな鈴が付いていて、頭を動かすたびに微かにリンリンと音を立てる。
軽くだけどお化粧もされて、真子はなんだかお姫さまになった気がした。
着飾り終わった真子は別の部屋に案内され、部屋に入ると先客がいた。
銀の髪をきれいに結い上げたまばゆいばかりの美女がそこにいた。
「マコさん、とても似合っていますよ、今回は間に合わなくて既製品ですが、次の銀夜祭にはマコさんにぴったりの衣装を仕立てましょうね」
「え……、シルヴィオさん?」
「今日の私はシルヴィアです。銀夜祭の夜はシルヴィアに戻るんです」
「えっと、じゃあ、シルヴィアさん。って、わぁ、くびれ細っ」
シルヴィアは肩を細いストラップだけが支える銀色の上衣をまとい、形の良い胸と細くくびれたウエストが美しかった。
後ろの裾は床の上で扇状に広がっていて、それこそお姫さまのドレスのようだった。
そしてフロント部分に大きく入ったスリットから覗く黒い下衣は、細く長い足を美しく見せるデザインをしている。
これなら男の人に見間違えることなんてないだろう。
普段後ろに下ろしている長い髪も今日は綺麗に編みこんで、ゆらゆらと揺れる飾りをいくつも頭にさしており、動くたびにシャラリシャラリと音を奏でていた。
真子がシルヴィアに見惚れていると、部屋のドアがノックされた。
「マーコ、明日は銀夜祭よ」
「銀夜祭?」
「そう。金の月が隠れて銀の月だけが昇る夜。マーコの世界には無かった?」
「うん。というか月がふたつもあるの?」
「あら! マーコの世界は月がふたつ無いの?」
「ひとつしかないよ」
「へぇ、変わっているのねぇ」
以前アレクサンドラが口にした「ふたつの月」とはどうやらそのまま言葉通りの意味で、この世界には月がふたつあるらしい。
「王都で色々な催しがあるから、当日はアタシが案内してあげるわね」
そう言ってアレクサンドラが真子にウインクした。
*****
銀夜祭の当日、シルヴィオに呼び出され真子はアレクサンドラと一緒に王宮に向かった。
気づいたら真子はアレクサンドラと引き離されて、何人かの女の人に裸にされ風呂に入れられ、頭のてっぺんから足の先までキレイに磨かれていた。
(えぇ? 何これ~?)
この世界に来てからなんだかしょっちゅう人に身体を洗われている気がする。
相変わらずアレクサンドラも一緒にお風呂に入ってきて洗ってくるので、いい加減慣れてしまったが。
風呂上がりに用意されていたのは黒いきらびやかな衣装だった。
「髪や目の色と合って、とてもお似合いですよ」
着付けを手伝ってくれた女の人が真子を褒めてくれた。
黒い衣装は上衣がハイネックにノースリーブのチャイナドレスみたいな形をしていて、カワイイけれど身体のラインがしっかり出て少し恥ずかしかった。
全体的にカラフルな糸で刺繍がほどこされており、それはまるで暗闇を蝶が舞っているように見える。
上衣のスリットの隙間からは下衣が覗き見えており、薄手のロングスカートの形をしていた。
真子がその場で小さくクルッと回ってみると、下衣がふわっと広がった。
短い髪の両サイドは、長い赤い紐と一緒に器用に編み込まれていて、余った紐は首の後ろで結んで背中に垂らされた。
紐の先に小さな鈴が付いていて、頭を動かすたびに微かにリンリンと音を立てる。
軽くだけどお化粧もされて、真子はなんだかお姫さまになった気がした。
着飾り終わった真子は別の部屋に案内され、部屋に入ると先客がいた。
銀の髪をきれいに結い上げたまばゆいばかりの美女がそこにいた。
「マコさん、とても似合っていますよ、今回は間に合わなくて既製品ですが、次の銀夜祭にはマコさんにぴったりの衣装を仕立てましょうね」
「え……、シルヴィオさん?」
「今日の私はシルヴィアです。銀夜祭の夜はシルヴィアに戻るんです」
「えっと、じゃあ、シルヴィアさん。って、わぁ、くびれ細っ」
シルヴィアは肩を細いストラップだけが支える銀色の上衣をまとい、形の良い胸と細くくびれたウエストが美しかった。
後ろの裾は床の上で扇状に広がっていて、それこそお姫さまのドレスのようだった。
そしてフロント部分に大きく入ったスリットから覗く黒い下衣は、細く長い足を美しく見せるデザインをしている。
これなら男の人に見間違えることなんてないだろう。
普段後ろに下ろしている長い髪も今日は綺麗に編みこんで、ゆらゆらと揺れる飾りをいくつも頭にさしており、動くたびにシャラリシャラリと音を奏でていた。
真子がシルヴィアに見惚れていると、部屋のドアがノックされた。
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