【R18/完結】オネエの騎士に溺愛されています〜家の階段から落ちた先は美女の騎士団の頭の上で!?〜

河津ミネ

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一章 白い光に包まれて

8.魔術騎士-1

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 次の日の朝、起きると真子は部屋に一人だった。
 そこは見慣れぬ天井の見慣れぬ部屋で、最初真子はまだ夢を見ているのかと思った。
 しかし部屋を見回すうちに、幾何学模様の刺繍をほどこされたカーテンにリネン類、派手な色で彩られた馴染みのない柄の壁紙にカーペットは、昨日泊まった宿屋の物だと思い出した。

(夢……じゃなかったんだ……)

 起きたら元の世界に戻っているのではなんて期待もむなしく、真子はまだ別の世界にいるままだった。
 昨日は森に野宿だったのでそんな事を考える暇もなかったけれど、今朝はゆっくりベッドで寝ていたせいか余計に不安が襲ってきた。
 真子の目にじんわり涙が浮かんできたちょうどその時、部屋のドアが開いてアレクサンドラが入ってきた。

「あら、起きた?」

 アレクサンドラは手に大きな袋を持っていた。真子は昨日のお風呂での出来事を思い出して涙が引っ込んだ。

「お、おはようございます」

「おはよう。よく眠れたかしら? 色々買って来たわよ」

 アレクサンドラは真子のベッドの横に立つと手に持った袋から次々に中身を取り出した。

「マーコはこれを着てくれる?」

 それは真子のサイズに合った、黄色い服に赤い糸で刺繍してある服だった。

「あと、これもね」

 次に取り出したのは前をボタンで止めるスポブラみたいな形のブラジャーと、横を紐で結ぶタイプのショーツだった。

「!!……あ、ありがとうございます」

 真子は顔を赤くして下を向いてつぶやいた。

「アレクサンドラさんは女の人、女の人だから……」

 そんな真子の様子などお構いなしにアレクサンドラは袋から靴を取り出した。

「靴のサイズは大丈夫かしら」

 アレクサンドラはベッドサイドに跪くと、真子の片足をそっと手のひらに乗せて靴を履かせてくれた。
 それはまるで小さい頃に読んだシンデレラの絵本の一ページみたいで、真子はなんだかドギマギしてしまった。

「あ、ピッタリ!」

 アレクサンドラは真子の足をしげしげと眺めてサイズがピッタリなのを確認して喜んだ。
 アレクサンドラの用意してくれた服は、シルヴィオが着ていたようなダボっとしたシャツ型の上衣だった。

(あれ? これってもしかして男性用かな? この世界では女装、男装するののが普通なの?)

 真子が衝立の向こうで着替えている間に、アレクサンドラは部屋の荷物を手早くまとめて宿を出る準備を終えていた。


 *****


 昨晩と同じ食事処では、他の皆がもうテーブルに着いて待っていた。

「おはよう~、マコ」

「マコちゃん、よく眠れた?」

 ジェーンとマリーベルが真子たちに手を振って挨拶してくれる。
 ジェーンの上衣の襟が少し緩んでいて喉仏のようなものがチラリと見えた。
 真子はジェーンにこっそりと聞いた。

「……あの、もしかしてジェーンさんも男の人なの?」

「あら、バレちゃった? あ、もしかして、男だってバレるようなことを団長がマコにしたのかしら?」

「え、えぇ!?」

 真子は昨晩のお風呂でのことを思い出して真っ赤になった。
 真子の反応を見て、マリーベルがいぶかしげに真子の背後に立つアレクサンドラを見上げた。

「団長、マコちゃんに何をしたんですか?」

「何もしてないわよ。ふたつの月に誓って」

「あぁ、ふたつの月に誓ったのならまぁ……」

 マリーベルもジェーンも、なぜかそれで納得したようだった。

(ふたつの月ってなんだろう?)

 真子が不思議に思っていると、ジェーンがそっと耳打ちした。

「マリーベルもカイラも男よ」

 その言葉に驚いて、真子アレクサンドラの方に振り向いた。
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