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11.襲われる聖女
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(あの頃のキースはかわいかったな……)
幼いキースの姿を思い出しながら歩いていると、ツンと足を足元の段差に引っかけて転びそうになった。
すぐに横から伸びてきたたくましい腕が、私の身体を支える。
「フウリ様、足元にお気をつけください」
「あ、うん」
下を向いた頭の上からキースの低い声がする。
鍛えられた身体の硬さを感じ、寝る前に読んでいたらぶえっち小説のあれやこれやが思い出されてまともにキースの顔を見れない。
気まずくて顔を逸らすと、キースはすぐに私に触れている手を離した。
「すみません」
「……」
「……」
もうすぐお別れだというのに、キースとの間にはずっと変な空気が流れている。
今日は聖女を引退したあとに私が住むことになる屋敷の下見だ。
聖女は引退したあとも生活に困らないように、神殿が住むところや何やらを用意してくれる。
引退後は聖騎士と結婚する人も多いのだと、マイヤ様が教えてくれた。
(引退する前にキースと仲直りしたいな……)
屋敷の下見を終えて、神殿に向かう馬車の中で私は考えた。
おっぱいを変な目で見てきた人たちのことを思い出すと嫌な気持ちになる。
キースもそうなんだって思ったら最初は嫌な気持ちになったけど、でももしキースが他の人をあんな目で見たらって思うとそっちの方が辛い。
それにキースの子どもだったら欲しいって思ったし、できていなくてガッカリした気持ちもある。
(よし、神殿に着いたらキースに仲直りしようって言おう!)
グッと両手をおっぱいの前で組んだ瞬間、ガタリと馬車が揺れて止まった。
「キャっ!」
私はあわてて座席にしがみつくが、何やら外が騒がしい。
(なにがあったの? キースは!?)
息をひそめて外の様子をうかがっているとガタガタと馬車が揺れて、急に扉が開かれた。
「キース……?」
「あんたが『眠り姫』か」
そこにいたのは大きな身体の髭もじゃの男で、私を見つけて口の端を上げてニヤリと笑った。
「そのおっぱいでお偉いさんのをたくさん挟んできたんだろ! 淫乱聖女さまよぅ」
「ヤダ! 来ないで!!」
狭い馬車では逃げる場所もなく、身体を縮こませて震えていると、髭の男が手を伸ばしてくる。
「へへ、オレのも挟んで治してもらおうか……」
男の手が私に触れそうになった瞬間、男がズルリとその場で倒れた。
男の背後からキースが顔を出す。
「フウリ様!! ご無事ですか!?」
「キース……っ!!」
「敵はすべて倒しました。もう大丈夫です。とりあえず馬車から出ましょう」
キースが伸ばしてきた手を掴んだ瞬間、馬車がグラリと大きく揺れた。
「フウリ様!!」
そのままグイと腕を引っ張られ、キースの胸に抱えられながら私とキースはゴロゴロと転がり落ちた。
(ひゃあ! な、なに!?)
目が回りそうになりながらキースにしがみついたら、気がつくと私たちの動きは止まっていた。
ゆっくり目を開けると目の前にキースの胸板がある。
どうやら道の脇の崖を転がり落ちてしまったらしい。
見上げると上の方に馬車の車体が傾いて引っかかっている。
キースが私を抱きしめて守ってくれたので、私に大きなケガはなさそうだ。
「キース?」
私を抱きしめたままのキースに声をかけるが返事がない。
なんとかもがいてキースの腕から抜け出し顔を上げると、キースは頭から大量の血を流していた。
「やだ!! キース! キース!!」
私が叫びながら何度名前を呼んだが、キースは目を覚まさなかった。
幼いキースの姿を思い出しながら歩いていると、ツンと足を足元の段差に引っかけて転びそうになった。
すぐに横から伸びてきたたくましい腕が、私の身体を支える。
「フウリ様、足元にお気をつけください」
「あ、うん」
下を向いた頭の上からキースの低い声がする。
鍛えられた身体の硬さを感じ、寝る前に読んでいたらぶえっち小説のあれやこれやが思い出されてまともにキースの顔を見れない。
気まずくて顔を逸らすと、キースはすぐに私に触れている手を離した。
「すみません」
「……」
「……」
もうすぐお別れだというのに、キースとの間にはずっと変な空気が流れている。
今日は聖女を引退したあとに私が住むことになる屋敷の下見だ。
聖女は引退したあとも生活に困らないように、神殿が住むところや何やらを用意してくれる。
引退後は聖騎士と結婚する人も多いのだと、マイヤ様が教えてくれた。
(引退する前にキースと仲直りしたいな……)
屋敷の下見を終えて、神殿に向かう馬車の中で私は考えた。
おっぱいを変な目で見てきた人たちのことを思い出すと嫌な気持ちになる。
キースもそうなんだって思ったら最初は嫌な気持ちになったけど、でももしキースが他の人をあんな目で見たらって思うとそっちの方が辛い。
それにキースの子どもだったら欲しいって思ったし、できていなくてガッカリした気持ちもある。
(よし、神殿に着いたらキースに仲直りしようって言おう!)
グッと両手をおっぱいの前で組んだ瞬間、ガタリと馬車が揺れて止まった。
「キャっ!」
私はあわてて座席にしがみつくが、何やら外が騒がしい。
(なにがあったの? キースは!?)
息をひそめて外の様子をうかがっているとガタガタと馬車が揺れて、急に扉が開かれた。
「キース……?」
「あんたが『眠り姫』か」
そこにいたのは大きな身体の髭もじゃの男で、私を見つけて口の端を上げてニヤリと笑った。
「そのおっぱいでお偉いさんのをたくさん挟んできたんだろ! 淫乱聖女さまよぅ」
「ヤダ! 来ないで!!」
狭い馬車では逃げる場所もなく、身体を縮こませて震えていると、髭の男が手を伸ばしてくる。
「へへ、オレのも挟んで治してもらおうか……」
男の手が私に触れそうになった瞬間、男がズルリとその場で倒れた。
男の背後からキースが顔を出す。
「フウリ様!! ご無事ですか!?」
「キース……っ!!」
「敵はすべて倒しました。もう大丈夫です。とりあえず馬車から出ましょう」
キースが伸ばしてきた手を掴んだ瞬間、馬車がグラリと大きく揺れた。
「フウリ様!!」
そのままグイと腕を引っ張られ、キースの胸に抱えられながら私とキースはゴロゴロと転がり落ちた。
(ひゃあ! な、なに!?)
目が回りそうになりながらキースにしがみついたら、気がつくと私たちの動きは止まっていた。
ゆっくり目を開けると目の前にキースの胸板がある。
どうやら道の脇の崖を転がり落ちてしまったらしい。
見上げると上の方に馬車の車体が傾いて引っかかっている。
キースが私を抱きしめて守ってくれたので、私に大きなケガはなさそうだ。
「キース?」
私を抱きしめたままのキースに声をかけるが返事がない。
なんとかもがいてキースの腕から抜け出し顔を上げると、キースは頭から大量の血を流していた。
「やだ!! キース! キース!!」
私が叫びながら何度名前を呼んだが、キースは目を覚まさなかった。
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