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5.聖女たちの優雅なるお茶会
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「フウリ様~」
明るい茶色の髪をした女性が、私に向かって大きく手をふっている。
「マイヤ様。今日はお招きありがとうございます」
ぺこりとお辞儀して顔を上げると、マイヤ様が私の胸に飛び込んできた。
今日は同じ聖女であるマイヤ様の部屋でお茶会にお呼ばれだ。
マイヤ様の護衛騎士である聖騎士のレベッカと女子三人でおしゃべりをするのだ。
このお茶会は聖女として行動を制限されている私たちの、数少ない楽しみのひとつだった。
マイヤ様は私の3歳年下の20歳で、白い頬に散らばったそばかすがとてもかわいらしい。
マイヤ様がポフとおっぱいに顔を埋めながらため息をつく。
「はぁ~フウリ様とももうすぐお別れと思うとさびしいな~」
「うん。私もマイヤ様に会えなくなるのはさびしいな」
ただでさえ聖女は神殿外の人と会うのは制限されているのに、私はいつも眠ってばっかりだからなかなか人と仲良くなる機会がなかった。
その中でも仲良くしてくれるマイヤ様は、私のとても大切なお友達だった。
マイヤ様を抱きしめながら頭を撫でていると、レベッカがクスクスと声をあげて笑う。
マイヤ様の護衛騎士であるレベッカは大きな商家の娘らしいが、どうしても騎士になりたいと聖騎士になった変わり者だ。
さらりと長い金の髪を高いところで結び、いつもキリッとしていてとてもかっこいい。
「聖女さまは引退してからも神殿の奥まで来れますから、フウリ様もぜひマイヤ様のために神殿まで遊びにいらしてください」
「うーん、でも聖女でもないのに神殿に入るのは気後れしちゃう」
するとマイヤ様がおっぱいに顔を埋めながら、グリグリと頭を動かす。
「フウリ様の功績を考えれば気後れする必要なんて全然ないから~!」
「功績って、私は小さな聖水晶を作るしかできない落ちこぼれの聖女だよ?」
すぐにマイヤ様がガバリと顔を上げた。
「落ちこぼれって! フウリ様がたくさん聖水晶を作ったから、今まででは助からなかったような病人や怪我人も助けられるようになったんじゃない!!」
「へ?」
私は初めて聞くことに首をかしげてしまう。
「今までは王族とか高位貴族の偉い人のために大きな聖水晶を作るのを優先していたからさ、少ししか聖水晶を作れなかったじゃない? でもフウリ様が持ち運びやすい大きさの聖水晶をたくさん作ったから、そのおかげで騎士団の遠征先とか地方の病院でも聖水晶を使えるようになってたくさんの人が助かるようになったんだよ?」
「えっと、そうなの?」
それが本当に自分の話だと思えず、レベッカを見ると彼女も大きくうなずいている。
「なんでフウリ様は本人なのに知らないの?」
「フウリ様は眠ってらっしゃる時間が長いですから、なかなか世の中のことがお耳に入らないのかもしれませんね」
確かに私が起きているのは食事やお風呂、神殿でのお祈りの時間くらいで、それ以外はほぼ眠って過ごしている。
「神殿も最近は方針を変えて、フウリ様がされたように小さな聖水晶を多く作らせようとしているんですよ」
「そうそう。最近は私のとこにも大きい聖水晶と小さい聖水晶の両方がくるね~。ま、その方が金持ちにも高く売れるもんね」
「それでも助かる人が増えるのは良いことです」
「そうなんだ……。私、何にも知らなかった」
眠ってばかりいるせいで、何も知らない自分が恥ずかしい。
それにしてもレベッカの「助かる人」と聞いて、私の頭にキースの苦しそうな顔が思い浮かぶ。
(この前のキースのこと聞いてみようかな。もしかしたらどんな病気かわかるかもしれないし)
「あの、実はマイヤ様とレベッカに聞きたいことがあって……」
「なになに? 私でわかることならなんでも答えるよ~!」
マイヤ様とレベッカのふたりなら私よりもずっと物知りなので、なにかわかるるかもしれない。
私はお昼寝中に見たキースの様子について、ふたりに相談してみることにした。
明るい茶色の髪をした女性が、私に向かって大きく手をふっている。
「マイヤ様。今日はお招きありがとうございます」
ぺこりとお辞儀して顔を上げると、マイヤ様が私の胸に飛び込んできた。
今日は同じ聖女であるマイヤ様の部屋でお茶会にお呼ばれだ。
マイヤ様の護衛騎士である聖騎士のレベッカと女子三人でおしゃべりをするのだ。
このお茶会は聖女として行動を制限されている私たちの、数少ない楽しみのひとつだった。
マイヤ様は私の3歳年下の20歳で、白い頬に散らばったそばかすがとてもかわいらしい。
マイヤ様がポフとおっぱいに顔を埋めながらため息をつく。
「はぁ~フウリ様とももうすぐお別れと思うとさびしいな~」
「うん。私もマイヤ様に会えなくなるのはさびしいな」
ただでさえ聖女は神殿外の人と会うのは制限されているのに、私はいつも眠ってばっかりだからなかなか人と仲良くなる機会がなかった。
その中でも仲良くしてくれるマイヤ様は、私のとても大切なお友達だった。
マイヤ様を抱きしめながら頭を撫でていると、レベッカがクスクスと声をあげて笑う。
マイヤ様の護衛騎士であるレベッカは大きな商家の娘らしいが、どうしても騎士になりたいと聖騎士になった変わり者だ。
さらりと長い金の髪を高いところで結び、いつもキリッとしていてとてもかっこいい。
「聖女さまは引退してからも神殿の奥まで来れますから、フウリ様もぜひマイヤ様のために神殿まで遊びにいらしてください」
「うーん、でも聖女でもないのに神殿に入るのは気後れしちゃう」
するとマイヤ様がおっぱいに顔を埋めながら、グリグリと頭を動かす。
「フウリ様の功績を考えれば気後れする必要なんて全然ないから~!」
「功績って、私は小さな聖水晶を作るしかできない落ちこぼれの聖女だよ?」
すぐにマイヤ様がガバリと顔を上げた。
「落ちこぼれって! フウリ様がたくさん聖水晶を作ったから、今まででは助からなかったような病人や怪我人も助けられるようになったんじゃない!!」
「へ?」
私は初めて聞くことに首をかしげてしまう。
「今までは王族とか高位貴族の偉い人のために大きな聖水晶を作るのを優先していたからさ、少ししか聖水晶を作れなかったじゃない? でもフウリ様が持ち運びやすい大きさの聖水晶をたくさん作ったから、そのおかげで騎士団の遠征先とか地方の病院でも聖水晶を使えるようになってたくさんの人が助かるようになったんだよ?」
「えっと、そうなの?」
それが本当に自分の話だと思えず、レベッカを見ると彼女も大きくうなずいている。
「なんでフウリ様は本人なのに知らないの?」
「フウリ様は眠ってらっしゃる時間が長いですから、なかなか世の中のことがお耳に入らないのかもしれませんね」
確かに私が起きているのは食事やお風呂、神殿でのお祈りの時間くらいで、それ以外はほぼ眠って過ごしている。
「神殿も最近は方針を変えて、フウリ様がされたように小さな聖水晶を多く作らせようとしているんですよ」
「そうそう。最近は私のとこにも大きい聖水晶と小さい聖水晶の両方がくるね~。ま、その方が金持ちにも高く売れるもんね」
「それでも助かる人が増えるのは良いことです」
「そうなんだ……。私、何にも知らなかった」
眠ってばかりいるせいで、何も知らない自分が恥ずかしい。
それにしてもレベッカの「助かる人」と聞いて、私の頭にキースの苦しそうな顔が思い浮かぶ。
(この前のキースのこと聞いてみようかな。もしかしたらどんな病気かわかるかもしれないし)
「あの、実はマイヤ様とレベッカに聞きたいことがあって……」
「なになに? 私でわかることならなんでも答えるよ~!」
マイヤ様とレベッカのふたりなら私よりもずっと物知りなので、なにかわかるるかもしれない。
私はお昼寝中に見たキースの様子について、ふたりに相談してみることにした。
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