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3.聖女フウリの悩み
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いわゆる聖女の聖紋は両方の手のひらに現れることが多く、聖水晶を手で包んで癒しの力を与えるのが一般的だ。
しかし私の二つの聖紋はなぜか両方のおっぱいに現れ、私はいつも『太くて硬い』聖水晶をおっぱいに挟んで癒しの力を与えている。
聖紋が現れてすぐの頃はまだおっぱいが小さくてなかなかうまく聖水晶を挟めなかったけれど、おっぱいが立派に育った今では小さめの聖水晶ならほぼ挟めるようになった。
(でも小さい聖水晶しか作れないから、ずっと落ちこぼれ聖女のままだったな)
手のひらに聖紋のある聖女なら両手を広げた大きさの聖水晶まで扱えるが、私は他の聖女がわざわざ力を与えないような小さめの聖水晶しか扱えないのだ。
私はため息をつきながら、おっぱいの谷間から取り出した『太くて硬い』聖水晶をながめた。
聖水晶は薄いピンク色に光っており、十分に癒しの力が与えられているのがわかる。
聖女が癒しの力を与えると聖水晶はそれぞれの聖女特有の色に光るのだが、私の作る聖水晶は髪や目の色とおそろいのピンク色だ。
私は取り出した聖水晶をゆっくりと撫でまわしながら、傷やムラが無いかを確かめていく。
すると、すぐそばでハァと小さく息を吐く音が聞こえた。
顔を上げるとキースが私の手の中の聖水晶を、やけに真剣な顔でじっと見つめている。
「キース?」
「んんっ、なんですか? フウリ様」
慌てたようにキースが小さく咳払いをする。
熱でもあるのか顔もわずかに赤くなっているように見える。
(やっぱりどこかを悪くしていて、聖水晶を欲しがってるとか?)
私は気まずくなって、急いでキースに聖水晶をわたした。
「お待たせ。はい、どうぞ」
「確かに受け取りました。さすがフウリ様です。今日もお見事です」
キースは受け取った聖水晶を神殿にわたす箱にしまって鍵をする。
聖水晶の数は神殿にきちんと管理されているから、キースでも勝手に盗ることなんてできないだろう。
「あの……」
「はい、なんですか?」
「……ううん、なんでもない」
キースはどこが悪いの? ――私はその言葉を飲み込んだ。
(もしどこか悪かったら、キースは私の護衛騎士じゃなくなっちゃうのかな)
眠ってばかりで神殿からほとんど外に出ない私にとって、いつも一緒にいるキースは家族のようなものだった。
(どうせ私が聖女を引退する日までしか一緒にいられないなら、それまではそばにいて欲しい)
それに護衛騎士は身元が確かな者しかなれず、キースはたしか男爵家の三男だったはずだ。
聖女になる前は普通の庶民だった私は、聖女を引退したらきっとキースとは会えなくなってしまう。
もしかしたら今すぐ治療しなくてはいけない病気かもしれないのに、キースと離れるのが嫌で病気について尋ねられない。
(私、最低だ……)
下を向く私の顔をキースがのぞき込んだ。
「フウリ様? 顔色がよくありませんが、どこか具合が悪いのですか?」
「あ、ううん! 大丈夫!」
「医師を呼びましょうか?」
「ちょっとボーッとしちゃっただけだから!」
「フウリ様は働きすぎなんです。無理しないでくださいね」
「うん。でも聖女でいられるのもあと少しだから、できるだけがんばりたいの」
(あっ! わざわざお別れを意識させるような事を言っちゃった。なるべくそのことは考えたくないのに)
落ちこむ私を見てキースが少しだけ眉をひそめた。
「大事なお身体なんですから、なにかあったらすぐに言ってくださいね」
「……キースこそ」
(具合が悪いのはそっちじゃない……)
心配そうに眉をひそめながら、キースが新しい聖水晶を渡してくる。
私はなんだか気まずくて、顔を逸らしたままパッとキースに手を伸ばす。
すると手が当たって聖水晶が床に落ちてしまった。
しかし私の二つの聖紋はなぜか両方のおっぱいに現れ、私はいつも『太くて硬い』聖水晶をおっぱいに挟んで癒しの力を与えている。
聖紋が現れてすぐの頃はまだおっぱいが小さくてなかなかうまく聖水晶を挟めなかったけれど、おっぱいが立派に育った今では小さめの聖水晶ならほぼ挟めるようになった。
(でも小さい聖水晶しか作れないから、ずっと落ちこぼれ聖女のままだったな)
手のひらに聖紋のある聖女なら両手を広げた大きさの聖水晶まで扱えるが、私は他の聖女がわざわざ力を与えないような小さめの聖水晶しか扱えないのだ。
私はため息をつきながら、おっぱいの谷間から取り出した『太くて硬い』聖水晶をながめた。
聖水晶は薄いピンク色に光っており、十分に癒しの力が与えられているのがわかる。
聖女が癒しの力を与えると聖水晶はそれぞれの聖女特有の色に光るのだが、私の作る聖水晶は髪や目の色とおそろいのピンク色だ。
私は取り出した聖水晶をゆっくりと撫でまわしながら、傷やムラが無いかを確かめていく。
すると、すぐそばでハァと小さく息を吐く音が聞こえた。
顔を上げるとキースが私の手の中の聖水晶を、やけに真剣な顔でじっと見つめている。
「キース?」
「んんっ、なんですか? フウリ様」
慌てたようにキースが小さく咳払いをする。
熱でもあるのか顔もわずかに赤くなっているように見える。
(やっぱりどこかを悪くしていて、聖水晶を欲しがってるとか?)
私は気まずくなって、急いでキースに聖水晶をわたした。
「お待たせ。はい、どうぞ」
「確かに受け取りました。さすがフウリ様です。今日もお見事です」
キースは受け取った聖水晶を神殿にわたす箱にしまって鍵をする。
聖水晶の数は神殿にきちんと管理されているから、キースでも勝手に盗ることなんてできないだろう。
「あの……」
「はい、なんですか?」
「……ううん、なんでもない」
キースはどこが悪いの? ――私はその言葉を飲み込んだ。
(もしどこか悪かったら、キースは私の護衛騎士じゃなくなっちゃうのかな)
眠ってばかりで神殿からほとんど外に出ない私にとって、いつも一緒にいるキースは家族のようなものだった。
(どうせ私が聖女を引退する日までしか一緒にいられないなら、それまではそばにいて欲しい)
それに護衛騎士は身元が確かな者しかなれず、キースはたしか男爵家の三男だったはずだ。
聖女になる前は普通の庶民だった私は、聖女を引退したらきっとキースとは会えなくなってしまう。
もしかしたら今すぐ治療しなくてはいけない病気かもしれないのに、キースと離れるのが嫌で病気について尋ねられない。
(私、最低だ……)
下を向く私の顔をキースがのぞき込んだ。
「フウリ様? 顔色がよくありませんが、どこか具合が悪いのですか?」
「あ、ううん! 大丈夫!」
「医師を呼びましょうか?」
「ちょっとボーッとしちゃっただけだから!」
「フウリ様は働きすぎなんです。無理しないでくださいね」
「うん。でも聖女でいられるのもあと少しだから、できるだけがんばりたいの」
(あっ! わざわざお別れを意識させるような事を言っちゃった。なるべくそのことは考えたくないのに)
落ちこむ私を見てキースが少しだけ眉をひそめた。
「大事なお身体なんですから、なにかあったらすぐに言ってくださいね」
「……キースこそ」
(具合が悪いのはそっちじゃない……)
心配そうに眉をひそめながら、キースが新しい聖水晶を渡してくる。
私はなんだか気まずくて、顔を逸らしたままパッとキースに手を伸ばす。
すると手が当たって聖水晶が床に落ちてしまった。
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