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72.両方犯罪だな・・・。

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「その方等、責任を取れっ!!」


恐れ多いお方の御立腹に、それぞれの面子は緊張していた。
さっきまで「絶対褒美だぞG!」と興奮していたMを痛い顔で見る、トーカの子分G。


もうおわかりであろう。Mことマルクス、Gことガント。
そしてそれぞれの面子とは、お茶らけ隊の事だ。
突然此処ローレリアに呼び出され、祖の王の兄にねちねちと愚痴を言われ続けている…。


「実の親父よりそなた達を取ると言った言葉に、私がどれだけ傷つき、悲しいか分かるか?」
「「「(///マジか!!)」」」
「しかも、そこに居るジルまで付いて行くと言い出す始末・・・。面白い事が全てそっちに行ってしまう私の気持ちが、分かるか?」
「「「(こいつはいらねぇな・・・。それに俺等は面白くねぇし)」」」
「ルビナスのじじいまで、"面白そうじゃ、儂もあっちに行こうかの"って言い出しおる」
「「「(それはもっといらねぇな・・・)」」」
「ケンダロスは、桃花の金魚の糞だ。桃花が行く処に必ずついて行くだろう…。ケンダロスの父である宰相も寂しがっておるっ!!その気持ちが分かるか?!だから、責任を取れっ!!」


健太の事をはっきり糞と言ったこのお方…、失礼極まりないところは、やはり親子だなと感じた。健太の親父の前で言う言葉じゃねぇぞ?冷静にそれを受け流してる健太の親父もすごいが・・・。

そして、いつまで続くんだというぐらい、一方的に愚痴を言うトーカの親父に、段々と疲れて来た面子。


「クスクス…兄上、もう良いではないですか。ご自身もすでに、あのお披露目の時に納得しあの言葉を各国の王に言ったのでしょう?もう意地悪はおやめ下さい。この者達が困っているではないですか。もう本題に入られたらいかがです?私達は、そっちの方が早く聞きたくって、此処に同席しているのですよ。ねぇ、ミランダ」
「///はいっ!もう、ワクワクしてどの殿方がそうなのか、見定めに目がウロウロいたしますっ!」
「むー…、こやつ等の顔を見たら腹が立ったのだ。ふん、仕方ない。桃花の番候補前に出ろ」


ぶすっとして王座に肘をつき、お茶らけ隊全員にそう言った。一瞬その言葉に固まったが、横のベルナール達がスッと前に一歩出た。それ以外の俺達は、すかさず一歩後ろに下がる。何故か赤毛も後ろに下がった。

祖の王の御前だが、思わず赤毛に言葉が出る。

「何でお前も下がるんだ?!」
「ん?その質問の意味が分からんぞ。おっ、そうだ紹介する。あそこの隅に見え隠れしてるのが、俺の息子だっ!どうだ、俺に似て男前だろう?」
「あ゛ぁっ、お前妻帯者かよっ!!とんでもねぇ奴だな!」
「これっ!王の御前だぞ!!」

健太の親父に怒られ、慌てて口をつぐんでガキを見る。赤毛の5歳ぐらいのガキがカーテンの後ろでソワソワこっちを見てた。
ジト目で赤毛を見るとウシシシ・・と笑ってやがった。マジ殴りてぇ・・・。


そして前に出た面子を改めて見る。
あいつが姫様と分かっても、一歩も譲らねぇ愛か…。身分差半端ねぇぞと思って溜息が出た。

嬉しそうな祖の王夫妻と違って、顔を引きつらせるトーカの親父。

引き攣った理由の2人を見る。2mのおっさんとポポ。
うん、確かに両方犯罪だな。片方は親父より年上で、お前はロリコンかって突っ込む45歳のオヤジ。もう片方は、未成年。今度はトーカ自身が犯罪者だ。


「あー…、左の者に聞くが、その方老け顔か何かか?」
「45歳です。もうすぐ46になりますが?」
「・・・。」

笑いそうだ・・・。横のガントも小刻みに震えていた。
今ガントと目を合したら間違いなく吹きだす自信がある。絶対に目を合せないようお互い下を向いた。

「兄上より、4つ、いえ5つ上になりますね」


嬉しそうな祖の王に対して、ガックリと肩を落とすトーカの親父。

ミランダ妃が待っていられないように、今度はポポに年齢を聞いた。ポポの年齢を12歳と聞いたミランダ妃は、"それじゃ、結婚はポポさんがもう少し大人になってからになるわね"うふふふ…と笑った。
ガントと俺は、その言葉を "結婚は精通してからね" うふふふ…に置き換えた。


頭を再度抱えたトーカの親父が、上は45歳から下は12歳の番候補に対して言葉を掛ける。

「むぅぅ…、桃花はまだ子供だ。それを踏まえて接して欲しい。向うの世界では、17歳の結婚はまだまだだ。適齢期と言えば、20歳を超えてからだと思う。こっちの常識を押し付ける事なく、行動をしてほしい。この意味は分かるな?!」


顔が引きつった俺…。横のガントも引きつる。こいつ等の盛りに常識って言葉がどれだけほど遠いか知ってる俺等は、思わず口にチャックした。だが自覚のねぇこいつ等は、即答でこう言いやがった。


「「「勿論です!」」」


その言葉に腹が立った。理性を失って記憶が無いお前等が言うなよ!周りの俺等は大変迷惑してんだぞ!って言いたかったが、口のチャックは緩めなかった俺。

そんな俺に視線を送るギルスさん・・・。



戦いが終って一緒に飲みに言った時、ギルスさんが俺に賛辞の言葉を贈るかのように、恐ろしい言葉を吐いた。

「この旅で分かったのですが、マルクス殿はトーカ殿の鞘だと思いました。剣と盾は番認定者。それを押さえ込むのがマルクス殿・・・」


その言葉に、俺はゲロが出た。一気に胃が痛くなり、飲んだ酒が逆流したのだ…。
それがあってか、こっちを心配そうに見るギルスさん。ご心配の通り胃が痛たいです……。

ガントもまた俺を痛い目で見る。
この前ガントが俺の後頭部に白髪を見つけて、俺の立場が分かってか心労のせいだなと呟かれた。
また白髪が増えたと言われない為に、もうスキンヘッドにしようかと考える。

スキンヘッド…俺に似合うかなと悲しい目で遠くを見てたら、横のニヤニヤした赤毛が視野に入った。

ん?待てよ。今後この赤毛が警護人になるんだったら、こいつが今の俺の立場になるって事だよな。と言う事は、俺は晴れて貧乏くじの鞘じゃなくなるって事だ。

顔がぱぁっと明るくなり、重責が無くなった。憑き物が落ちたように万弁の笑みで、ガントを見ると「とうとう、おつむに来たか?」って言われた。



そんな時、扉が大きな音を立てて開く。礼儀も何もねぇ開けっぷりに、後ろを振り返るまでもなくバカ猿と推測が出来た。


『///皆が来てるって聞いて飛んで来たでっ!』


そう言ってドレスをたくし上げ、バタバタと走って来るトーカに、全員釘づけだ。
おーい…足、丸見えだぞー。黙ってれば、そこそこなのにその"雑"が残念だなと心で思う。

金魚の糞の健太も後ろから走ってついて来た。
ん、このデジャブのようなシチュエーションどっかで見たな。えーと…三上だっけ、確かこんな風に走って来てトーカが三上に抱き付いた事を思い出す。

どんどんスピードを緩めることなくやって来るモンキー娘に、グラン達がこの抱擁は番認定者に任せようと、隙間を開ける。勿論俺も同意見だ。
しかし、開けたはずの番認定者への隙間に行かずに、気のせいか、俺に来てねぇかとちょっと思い出した。それは当たっているようで、すでにガントは俺から遠く離れグランの横に移動していた。もし、三上という奴と同じなら剣で狙われないにしても、この後俺はベルナール+他の番認定者に殺される勢いで睨まれるはず。


「!(か…か、回避せねばっ!)」


嬉しそうに走ってやって来たモンキー娘に、指で向うへ行けと合図を送る。
そんなジェスチャーを俺の胸に飛び込んで来いと受け取り、存分にダイブされる。

「///ぐぇっ!!」
『マルクス―――!!会いたかったゾー!』

嬉しい気持ち一割程度で、残りは後ろの連中の事を考えるとゲロが出そうな気持が大半を占めた。
赤毛が、また要らない事をほざく。


「なぁ、お前の方が前に出る方じゃねぇのか?」


番認定者が俺を射るように見た。慌てて首を横に振り誤解だとジェスチャーする俺。そんなキョドっている俺の目に、カーテン奥から小っちゃい赤毛が走って来るのが見えた。ポスッとモンキー娘の足に抱き付き、上目遣いでとんでもない事を叫ぶ。


「///母上―――!!」
「なっ!」
「あ゛ぁ?!!」

番認定者のみならず、今度は母親認定のガキまで増えた事に、桃花の親父が絶句し固まった。

『///な、何やこの可愛い天使は?!』
「父上、母上がお空から帰って来たのですねっ!天界から戻って来られたのに、僕の事を天使と見間違っておいでですっ!!父上から、ご説明をっ!!」
「んー…ヒューズ、ちょっと落ち着こうか。確認するが、これがお前の母親像か?」
「///はいっ!!」
「う~ん、ほんじゃあそうするかぁ~」


ニヤッと笑って、赤毛が前に歩み出て番認定者の横に並んだ。

「あ゛ぁ??!」

俺が思わず声を出すと、その声の意味が分かってか皆に説明しだす赤毛。

「俺のつがい、ヒューズが生まれてすぐ死んじまってな。だから俺フリーな訳。こいつが母上って懐いたって事で、まっ、いっかと思ったわけだ。それにこっちに居た方がおもしれぇしなっ!宜しくな」

「「「・・・。」」」


あんぐりな顔の番認定者達と祖の王達。

ん、ちょっと待て。
お前がそっちに行くって事は、誰が貧乏くじの鞘になるんだ?
ん、ん?、んーー?!!


「がぁ――!また俺かよっ――!!」
「これっ!王の御前だぞ!!」


俺がそう叫んだら、また健太の親父に怒られた。理不尽だ・・・
健太は、途中で入って来たくせに俺の叫びの意味が分かったのか、ぎゃはははは…と大笑いしていた。




その夜、ガントに「お前また白髪が増えたぞ」って言われた・・・・・・・。

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