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33.ザルビア観光の終わりと、それぞれの始まり・・・

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「はぁ、はぁ…くっ、…。な、何としても…この…事をターベルに知らせね…ば……」


真夜中、1人の男が馬にむち打ち森を駆け抜けていた。ボタボタと馬の振動で腹から赤いものが落ちる・・・。
男は3人であの国に向かったはずだった・・・。だが、今は自分1人。自分自身が生きてターベルに着くことがどれほどの重要性があるかが分かる。だが、確実に死はそこに迫っていた。死を覚悟し、その男は同僚の一言を思い出していた。


"いいか、俺等の仕事は情報をどんな手を使っても国に伝えることだ。死を覚悟しても情報は捨てるな。いざとなったら情報を食え・・!必ず俺が死体は見つけてやる"


「ふっ、マルクス・・・、俺の死体見つけてくれよな」


そう言って紙切れを口に含み、後ろから迫る人間たちに、向き合った。
暗闇の静かな森の中で、何度も肉を突く音が聞こえた─────。


***


「昨日は、その・・悪かったな、、、」


そう言ってガントが、謝って来た。
後ろには、第四騎士団の面子全員がいる。
子分となった第四騎士団は、ザルビア王とゲルの計らいでターベル騎士団と連結した特別騎士団となった。
簡単に言えば、私付の騎士団だ。その為、グランとガント数人が本日をもってザルビアから、ターベルに私の警護人として短期赴任となった。

『顔、結構腫れてるな。ごめんな、加減でけへんで・・』
「いや、気にするな。こんなものですんで良かったぐらいだ」
『そっか。ほんなら改めて・・・』

仲直りと言う意味で手を出す。その手を見て、躊躇するガント。

「俺の異名を知っているだろう。"首切りガント"そんな男の手に触るな」

はぁー、と大きな溜息をついて目の前の男に物申す。

『ぶっちゃげ、最初聞いた時ドン引きやった。そう言う戦い方してたんやろうなと思う。でもな誤解しんといてくれるか。私は今、私に対して詫びたガント・・・に手を出してるんや。引っ込める気はないで』
「・・・。」


眉間に皺をよせ、まだ考え込んでるガント。
これからの事もあるし分からせるか・・・。

『確かにその異名ずっとついて回ると思う。けどな、今後あんた自身がそれをどうしたいかが問題や。出たうんこが元に戻るか?戻らんものに考え込むな。さっきも言うたけど、私はのガントを認めて手をだしてるんや。手を取らんかい!』
「バカ猿…例えがうんこって…言いたい意味は分かるが、シリアスになり切れてねぇとこがお前らしい……」


横で突っ込むマルクスを無視して、今だ手を取らないガントに痺れを切らす。
不意にガントの後ろからグランがガントの手を取って私にかぶせた。

「子分になった以上、親分の命令は聞くもんだ」

ガントが大きな溜息をついて、被せた手を握り返してきた。少し照れたように笑った顔は、首切りと言われてるような男には見えへんかった。


出立まじかになり、クロード達に世話になった事の礼を言う。
クロードからハグされ「暫しの別れだ。必ず迎えに行く。待っていてくれ」と意味の分からん事を言われた。
そのクロードが、時間が来てもハグしたまま離そうとしなかったため、ゲルがそれをべりっと剥がす。
2人が睨み合いながらも、私達を見送る国民の前に出ると、万弁の笑みで握手し抱擁していた様は、ある意味役者であったと思う。


馬車が動き出して、国境を過ぎたところで馬車を止めてもらう。
ゲルもその理由が分かったのか同じように馬車から出て来た。

『あの岩山に比べたら全然ましや。大きい石もあるけど、こうやって草が根を張ってる・・・。ターベルにとったら魅力のない土地でも、ザルビアにとったら夢の持てる土地になるんちゃうかな』

この滞在期間中に私が出した案で話がまとまり、両国にとってゲルの訪問は大きく意味を成したみたいだ。

しゃがんで、土を手に取る。
肥えてないことが素人の私でも分かる・・・。
大きく言うたけど、ここが農地になるまでにどんだけ時間がかかるんやろうと、溜息が出た。

「でた言葉の重さに溜息か?今更だな」
『確かに今更やな。自分にもっと知識があれば、違ったことが言えたかもしれんと思ってな・・・』
「知識か・・・前も言ったが、そんな知識のないお前が、何故ここに呼ばれたのだろうな」
『それが分かったら、ここにはおらへんわ!』
「・・・・・お前はその呼ばれた理由を知りたいか?」
『知りたいに決まってるやん!』


はっきりそう言うと、そうか…と言って黙ったゲル。
その横でマルクスもベルナールも、何かを考えるように地面を見てた。多分それを知りたければ、ローレリアに行かなければ分からないと、ここに居る全員が思ってるはずだ。

それは、ターベルから、そしてこいつ等と別れるということ。別れても知りたいかと聞かれると、さっきのようにはっきりと返事が出来ない。


暫く皆が黙っていると、ゲルが口を開いた。

「諜報部も動いている、分かった事があれば必ずお前に伝えよう・・・」


結局、馬車内に戻っても、さっきの話には一切触れへんかった。
皆が極力違った話をしていた気がする。

そして、ターベルの領地に入ったころ、少し開けた窓から生ぬるい風が入って来た。
大雨になるなとマルクスが言ったのを聞いて、窓から外を見る。



重たい雲が空一杯に広がっていて、何故か私は胸がざわついた・・・。



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