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11.熊vs猿

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『いややー!!』
「トーカ様、あの服は洗濯に持っていきました。これを着て下さい!」
『い・や・や!絶対それは着いひんで!それ着るぐらいやったら、タオル一枚でいた方がましや』

そう私はタオル1枚の状態で駄々を捏ねている。当たり前だが、タオルの下はすっぽんぽんだ。

ラムスさんと別れて部屋に案内された私は、用意された風呂に入った。それはもう気持ちよく長風呂をした。そして、風呂から出たら特攻服が無くなっていた…というオチだ。

メイドさんの手には、ベルサイユの〇ラに出て来るようなヒラヒラフリフリのドレス。


『もういい!今日はタオル一枚で居たる!』


メイドさん2人は大きな溜息の後、先輩らしいメイドさんの方が折れた。

「分かりました。今日の所はあの服を着て下さっても構いません。但し、下着はこれを着て下さい。そして、前ボタンは必ずお締め下さい。私からラムス様にトーカ様のご要望を伝え、その後どうするかはラムス様が判断するという事で宜しいですか?分かっているとは思いますが、着替えが無いと困るのはトーカ様ですよ。トーカ様も妥協点を見つけて下さい」

言われる事ごもっともで言い返せない……。
口をとんがらせて了承の返事をしたら、さっさと1人が部屋を出て行き、数分後に特攻の上下だけが返って来た。

着ける意味があるのか、スケスケの薄い下着を着て特攻服を着た所で、ラムスさんの待つ部屋へと急ぎ案内された。メイドさんが扉をノックをすると、執事のフレドリックさんが扉を開け私だけが中に入る。
中はバルコニー付きのゴージャスな部屋だった。
キョロキョロしてると「トーカ殿、こちらへ」と言って、ラムスのおっさんが私をテーブル席に呼んだ。

席に着くと早速執事のフレドリックさんが、紅茶を入れてくれた。目の前のおっさんがお茶に手を付けた所で、私もお茶に口をつける。

「トーカ殿メアリーから聞いたが、用意したドレスがお気に召さなかったとか。ああいったものがおいやであれば、もう少し落ち着いたドレスではどうだろうか?何分私はそういうものに疎いもので、流行のものであれば良いと言う風にしか思っておりませんでしたので………」

先程メイドさんにも妥協点を見つけろと言われた事を思い出す。

『メイドさんが着てるような襟首まであるタイプがいいのと、それにフリフリヒラヒラもいらん。シンプルがいい。それから………』
「トーカ殿、もうよいです。明日にでも仕立て屋を屋敷に呼びます。フレドリック!」
「手配致します」

それからはラムスのおっさんとたわいのない話をした。
家族構成とか、食べ物は何が好きとか嫌いとか…。そのうち男性の好みはとか、結婚願望はあるかとか…段々婚活みたいな話になって来た所で、話を切り替える為おっさんの武勇伝に話を振った。
おっさん、どんだけ死にかけてんってぐらいやった。そして私のザルビア軍のガントとかいう副隊長の話になり、1つ手合せをしないかとなった。
このまま紅茶を飲んでても腹がタプタプになるだけやし、同意し庭に出る。

フレドリックさんが困った顔をしていたが、うちら2人はやる気満々である。
剣は模擬剣を使う。フレドリックさんが審判し、これ以上は無理と判断した時点で中止。その説明に同意し、フレドリックさんの合図で始まった。

健太には総長はバカ力だから加減して下さいよ~って良く言われたが、ここの人間は、100%力を出しても良さそうだ。この前のザルビア軍でそれが良く分かった。なのでおもくそやらせてもらう。

模擬剣を振り上げられそれを難なく交わす。あれっ?やっぱ動作遅いな…。動き丸見えや。2m以上の体格から出る力は半端ないけど、それが当たらへんかったら意味が無い。ちょこまかと逃げる私に野生が目覚めたのか、おっさんは加減出来んようになってき来た。しかもこの猿が!と言って私はもう人ではなくなった。

フレドリックさんの焦った顔が私の視野に入る。そして、この立ち合いをやめさせる動きを見せた。
いやいやあかんやろ、私は負けてへんで?フレドリックさんは間違いなく、私が怪我をすると懸念しての動きだ。中止させられる前に決着をつけんと……。

すぐにおっさんの懐に入り込む。本能だけのおっさんが、模擬剣を私に殴る勢いで振り下ろした。ビッと服に当たった音がしたけど、体には当たってへん。振り下ろした模擬剣を足で押さえて、すかさずおっさんの鳩尾に一発お見舞いする。

「ぐっうぅぅ…」と言って体勢が低くなった。顔面がちょうどいい位置に来た所で思いっきり蹴り飛ばす。蹴りの威力でおっさんは後ろの壁に激突した。

その瞬間「どわっ!!」と声がした。
いつから居たのか、2人の男がバルコニーに立って居た。
1人は知ってる奴…。もう1人は…………誰や?

おっと…それよりもおっさんや。結構本気で蹴り飛ばしたから大丈夫かと思ってそっちを見た。
完璧、気絶してるようやった。おっさんが死んではおらんし安心してWINNERって感じでふんぞり返った。


そして、周りにの雰囲気がおかしい事に気づく。フレドリックさんが顔を赤らめ目線を下に何度も向ける。
どないしてん?と疑問に思いフレドリックさんの指図する目線通り下に移す。すると何故か私は下着が丸見えだった。原因はさっき服に当たった一撃………。

特攻服の前がスパッと切れて全開き、堂々とスケスケの下着を見せて威張る図は傍から見てどうなんだろう。見知った銀髪に質問の目を向ける。その遠目でも分かる不機嫌な皺に焦って、銀髪にへにゃりと笑った。
その途端、奴は剣を抜いて横のカーテンをバッサリと切り捨てた。

私は心の中で悲鳴を上げる。物に当たるぐらい怒ることか?……。こっちに鬼の形相で来よる銀髪。焦ってフレドリックさんを見ると、自分の主人の介護をしていた。再度銀髪の鬼に振り返ると何かが私に被さった。被さった物は先程切られたカーテンだった。

そして眉間に皺を寄せながら、銀髪が一言のたもうた。



「破廉恥極まりない!!着替えられよ!!!」


そして、私は一着しかなかった特攻服をダメにして、あの忌まわしいベルサイユの〇ラのようなドレスを着る羽目となる………。とほほ…な日である。おっさんも起き上がるまで半日かかったので、おっさんもとほほ…であった。



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