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8巻
8-2
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「手に入れるのには、苦労した、ぅあっ!?」
「え……?」
角を曲がってきた少女が突然奇声を発したので、シンは動きを止めた。視線の先には、驚きを顔全体で表現している少女がいる。見たところ中学生になったばかりといった風貌だ。
身長は140セメルくらいと小柄。背中まである炎のような深紅の髪が印象的だった。濁りのない澄んだ黒い瞳が、まっすぐシンに向けられている。
「お嬢様?」
動きを止めた少女の後ろから現れたのは、侍を連想させる服装の女性だった。
黒地に橙色の線で模様が描かれた籠手と脛当て。肩には大袖と呼ばれる防具、胸元には少し小さめの胴当てをつけている。
身長は160セメル後半といったところ。腰までありそうな黒髪を後頭部で縛り、ポニーテールにしていた。
「そちらの殿方が何か?」
女性は髪と同じ色の瞳をシンに向けてきた。その鋭い視線は、彼女の力が見てくれだけではないと雄弁に物語っている。
「いや、なんでもない。少し浮かれ過ぎていたようじゃ。気配に気づかなんだ。そちもすまぬな。わらわの不注意ゆえ、気にしないでもらいたい」
「はぁ……」
女性に声をかけてから、少女はシンに謝った。
空返事をしつつも、少女の回答にシンは内心ほっとしていた。自分を見る女性の目が、少々物騒に感じられたのだ。
「えーと、では、俺はこれで」
「うむ、よき旅を」
シンは軽く目礼してから、シュニーたちのいる部屋へと足を向ける。
部屋に着くと、2人を除く全員がそろっていた。
「ハーミィさんとケーニッヒさんは?」
「船が動き出したとたん、ハーミィちゃんが船酔いしちゃったから、付き添ってるよ」
シンの疑問に水を飲んでいたミルトが答える。馬車では酔わなかったが、船はだめだったようだ。
「あまりひどくはないので、横になっていれば大丈夫でしょう」
シュニーが補足した。
「シンは船内を見て回っていたのだろう? 何か気になるものはあったか?」
「いや、これといったものはないな。怪しい密航者もなしだ」
マップ機能の応用で、船倉の中などに人が隠れていないことは確認済みだ。ゲーム時代はそこにNPCが隠れていて、海賊の出現と同時に中からも襲われるというイベントがあった。
今後の予定を軽く話し合ってから、各自自由行動とする。
シンは外の景色を見ようと、デッキに向かうことにした。
「あ、僕も行くよ」
「私も」
歩き出したシンに、ミルトとティエラがついてくる。ユズハは相変わらずシンの肩の上だ。
船内探検中にもデッキに行ったが、道順を確認しただけだったので、どのような景色が見えるのかシンにはまだわからない。
「デッキに出ると、風が強くなったように感じるな」
「いい風だね」
「あ、何かいるわ!」
デッキの端から海を見ていたティエラが何か見つけた。
シンとミルトもデッキの端に近づいて、ティエラの指し示すほうへ視線を向ける。
「ヒーロードルフィンだね」
「相変わらずカラフルだな」
ティエラが見つけたのは、ヒーロードルフィンというイルカ型モンスターだった。
戦隊物をイメージしたのか、常に5、6匹の群れで行動している。赤、青の個体は固定で、残りは黄や緑、白、黒、ピンクといったバリエーションがある。
基本的に、攻撃を仕掛けなければ何もしてこない、ノンアクティブのモンスターだ。
「あ、珍しい。ゴールドがいるよ」
「おお、本当だ」
ミルトが指差した先では、赤い個体を先頭に、青、白、黒、金のヒーロードルフィンが船と並走する形で泳いでいた。金色はなかなか見ることができない。
「1匹だけ、すごく光ってるわね」
「強さはたいして変わらないけどな」
倒すと他の個体より、多少貴重なアイテムが手に入る。プレイヤーからは見つけると運気が上がると言われていた。
「ん? おい、ティエラ。どうしたんだ?」
シンが視線を戻すと、ティエラが海面をじっと見つめていた。
「いえ、こうして見ると、地面に足がついてないのを実感しちゃって」
船に乗るのは初めてと言っていたので、不安になってきたのか。
「よほどのことがなきゃ沈まないから、安心しろって」
船には強度を上げるスキルがかかっていて、海棲の巨大モンスターに体当たりされても、そう簡単には沈没しない。
「わかってるつもりなんだけど、慣れるまで落ち着かないわ」
こればかりはすぐにとはいかないようだ。
シンたちはしばらく景色を眺めた後、部屋に戻った。
†
航海は順調そのもので、一度港町に寄った以外、これといったイベントはなかった。
あえて挙げるとすれば、通路で話した例の少女と女性に、何度か会う機会があったことくらいだろう。互いの名前も知らないのは不便だと、簡単な自己紹介もした。
独特の口調の少女の名前は九条奏。レベル159の弓術士だ。
侍の女性は三枝花梨。レベル221の侍で、奏の護衛だという。
戦ったわけではないが、シンには彼女たちが、年齢にそぐわない強さを持っているように感じられた。もしかすると選定者なのかもしれない。
「今日はなんだか天気が悪いですね」
「うむ、荒れそうじゃの」
曇天を見ながらつぶやいたシンに、奏が相槌を打つ。その横には花梨もいる。
もうすぐ夕暮れ時だが、ぶ厚い雲に遮られて沈みゆく太陽を見ることはできなかった。
「そういえば、おふたりはヒノモトに向かうんですよね」
「そうじゃの」
「機会があれば行ってみたいと思ってるんですが、どんな国なんですか?」
せっかくなので、ヒノモトについて聞いてみることにした。国名もそうだが、2人の名前も日本を彷彿させる。
「ヒノモトの起こりは、天変地異によって大陸から切り離された島を、いくつかの集団が治めたこと、と言われておる。現在は東西をそれぞれ九条、八重島の2家が代表として取り仕切っている」
ベイルーンへの護衛依頼で一緒になったドラグニル、ガイエンの語っていた各ギルドは、要所要所を治めるにとどまっているようだ。
「なるほど……ん? 確か奏さんも九条ですよね」
「その通りじゃ、これでもヒノモトの東を仕切る九条家の人間よ」
「お嬢様、そういうことはあまり吹聴なさらないほうがよろしいですよ」
奏の発言に対して、花梨が苦言を呈した。
「そうじゃが、こやつなら大丈夫じゃろう」
よくわからないが、交流を重ねるうちに、奏には多少信用されたようだ。花梨からも当初のような強い視線は感じない。
ちなみに丁寧語なのは、そうしないと花梨から威圧感たっぷりの視線が飛んでくるからだ。
「自然の多いよき国じゃよ」
「故郷を思い出します。でも、そんな家のご息女が国の外に出ていいんですか? 護衛が花梨さん1人だけっていうのも、さすがにどうかと思いますけど」
「何も告げずに飛び出してきたからの。いろいろと事情があるのじゃ」
「九条家の方が冒険者になるなど、前代未聞です」
「そう言うでない。もう手段がないのは花梨もわかっておるから、こうしてついてきてくれたのじゃろ?」
「それは、そうなのですが……」
渋い顔をしている花梨を見るに、奏の言う事情とは、ヒノモトの外に出向かなければ解決できないことなのだろう。
「まあよい。目的のものは手に入れたのじゃ。後は帰るだけよ」
シンたちの降りる港町から、ヒノモトへの船が出ているらしい。
「雨が降ってきましたね」
雲が多かっただけに、降るだろうとは思っていた。予想外だったのは、思っていたより雨足が強く、急に風も強まったことだ。
数滴の雫が落ちてきたと思った直後に、土砂降りの雨となった。強烈な風が吹き荒れ、その煽りを受けた海面が大きく波打つ。
時をほぼ同じくして、シンの感知範囲にモンスターの反応が複数現れた。すさまじい速度で船に向かってくる。
「モンスターです。まっすぐこっちに向かってきているようです」
「何じゃと? 花梨は感じるか?」
「いえ、まったく」
シンの感知範囲はスキルの併用もあってかなり広い。花梨たちがどの程度感知できるのかシンにはわからないが、感知できるまでもう少しかかるはずだ。
「信じてもらえるかわかりませんが、反応は10。かなり大きいです」
シンは奏たちに説明しながらシュニーに心話をつなぐ。
シュニーたちもモンスターの接近は感知していたようで、フィルマが船長に話をしにいったとの返事が来た。
シュバイド、ヴィルヘルム、ティエラの3人はこちらに向かってきているらしい。
「もうすぐ俺の連れが来ます。奏さんたちはどうしますか?」
「船に向かってくるとあっては部屋に閉じ籠もったところで意味はあるまい。幸いわらわは弓が使える。手を貸そう」
「私も微力ながらお手伝いします」
奏はずぶぬれの着物の懐から1枚のカードを取り出して具現化した。
次の瞬間、奏の手に現れたのは伝説級中位の弓『金剛烈弓』。
長弓に近い大きさの弓で、矢の入った矢筒とセットになっている。射程が長いのが特徴だ。
花梨も奏と同じく武装を具現化しており、左手には赤い鞘の刀が握られている。
伝説級中位『朱蘭』、炎属性を帯びた刀である。
「間に合ったか」
「ぎりぎりだがな」
「は、早いです……」
シンも『禍紅羅』を具現化して構えたところで、シュバイドとヴィルヘルム、ティエラの3人がデッキに姿を現した。
ティエラの足元にはカゲロウとユズハもいる。防御と遠距離攻撃が可能なメンバーだ。
「他の奴らは?」
「ハーミィ殿は部屋にいる。念のため、ケーニッヒ殿とミルト殿には護衛として残ってもらった。フィルマは船長に伝令に、シュニーはハーミィ殿の防御を固めてから来る」
ミルトは水の精霊の使い手。海上では心強い。
「何かわかるか?」
「モンスターの反応が出たのと、天気が荒れ始めたのがほぼ同じ。そこから考えられるのは、サーペント系か軟体動物系だな」
ヴィルヘルムの問いに、シンはすぐに考えつくものを挙げた。
モンスターの中には、出現と同時に天候に影響を与えるものがいる。シンの言った系統のモンスターは、嵐とともに現れることが多いのだ。
「お客様! 我々が対処します。船内へお急ぎください!」
フィルマから聞いたのか、独自に感知したのか。船員がシンたちに退避するように言ってくる。
モンスター迎撃要員も兼ねているのだろう、船員の手には弓や杖、銛などが握られていた。
「我々も手伝います」
「しかし……っ!? わかりました。ご協力感謝いたします!」
渋るそぶりを見せた船員だったが、シンたちの佇まいや武装を見て考えを改めた。
嵐のせいで揺れる船は、足場が少々心もとない。相手にもよるが、迎撃する者は多いに越したことはないと判断したようだ。
「来ます!」
シンの声よりわずかに遅れて、海面が大きく盛り上がる。そして、荒れる海から巨大モンスターが姿を現した。
「ゲイル・サーペントか!」
海面から顔を出して睥睨しているのは、海嵐竜とも呼ばれるモンスター、ゲイル・サーペントだった。竜の系統に分類され、水のブレスや咆哮、体当たりなどの攻撃を主としている。
レベル帯は500~600だが、海という不安定な戦闘場所が災いして、レベル以上に手強い。
「まさか、こんなに?」
「ヒノモトに帰るだけというこのタイミングで」
次々に姿を現すゲイル・サーペントの姿に、奏と花梨は歯噛みしていた。いくら船が頑丈でも、10匹ものゲイル・サーペントを相手にしては、転覆は免れないと考えたのだろう。
実際、デッキに出てきた船員も、顔を真っ青にして立ちすくんでいる。
「ヴィルヘルム! ティエラ! あいつらを近づかせるなよ! シュバイドはあいつらの遠距離攻撃を防いでくれ!」
シンは声を上げながら『禍紅羅』を一閃。
鎚術風術複合スキル【虎狼打ち】の発動によって生じた、強烈な烈風による一撃が風雨を吹き散らし、船を囲むゲイル・サーペントのうちの、1匹の頭を叩き潰した。
強い風と叩きつける雨の中でも、強烈な打撃音がデッキにいたすべての人々の耳朶を打つ。
数秒の時間を置いて、頭部のひしゃげたゲイル・サーペントがゆっくりとその身を海中に沈めていった。
「とっとと終わらす!」
「私だって!」
シンの攻撃に続いてヴィルヘルムが獄槍『ヴァキラ』を投擲し、ティエラが矢を放った。
仲間が一撃で殺されたことに動揺し、動きの止まっていたゲイル・サーペントが、巨体に似合わぬ俊敏さで射線から身を逸らす。しかし反応が遅れたのはどうしようもなく、最も船の近くにいた個体の片目を矢が、胴体を『ヴァキラ』が貫いていた。
「――――――――――ッ!?」
即死とはいかなかったが、金属をこすり合わせたような悲鳴を上げて、ゲイル・サーペントは水中に姿を消した。
「おぬし、只者ではないようだの」
シンの動きに驚いたのはモンスターだけではない。水面から顔を出そうとするゲイル・サーペントに矢を射る奏が話しかけてきた。
ただの冒険者ですよと返して、シンは感知に注意を向ける。ゲイル・サーペントは船を中心に泳ぎながら、接近と離脱を繰り返していた。
「なんだか、船の揺れが大きくなってませんか?」
「おそらく、モンスターが何かしているのでしょう」
花梨も違和感を覚えていたようで、シンの言葉にうなずいた。
「ちっ、やつら潜って姿を見せねぇぞ」
「ねぇシン! このまま船がひっくり返ったりしないわよね!?」
近づいてきているにもかかわらず、より強さを増した風雨でティエラの声がかき消されそうになっている。心配するのももっともで、船員でも支えなしで立っているのが難しいほどの揺れが船を襲っているのだ。
誰もが手すりや帆柱に手をかけたり、デッキの床に武器を突き立てたりして凌いでいる。
まともに立っているのはシンとシュバイドくらいだった。
「シン! どうやら仕掛けてくるようだぞ!」
シュバイドの声にシンが周囲に視線を走らせると、9匹のゲイル・サーペントが海面から顔を出し、口を大きく開けてこちらへ向けていた。
「ブレスか。シュバイドは正面を頼む。俺は裏を守る」
船の上を最短距離で移動しながら、シンはシュバイドの持っているものと同じ『大衝殻の大盾』を取り出す。そして、対空用の攻撃遮断障壁を最大出力で展開した。
空中に出現する六角形をつなぎ合わせた障壁が、ゲイル・サーペントの放った水のブレスを弾き返す。
「くそ、雨と風で狙いがずれるな」
ブレスを防ぎながら魔術スキルによる攻撃を仕掛けたシンだが、暴風雨で船が揺れ、さらに距離もあるのでなかなか命中しない。
弓を使うティエラや奏も、狙撃できていなかった。
それを見たユズハが申し出る。
「補助する?」
「頼む」
シンは素直に頼ることにした。
「初めの一撃でもっと数を減らしとくべきだった」
わかっていたつもりだったが、嵐の船上は予想以上に戦いにくい。
雲で光が遮られ常に薄暗く、風と雨で視界は悪い。船が揺れて足場は悪く、モンスターを攻撃しつつ船も守らなければならない。
シンたちは船が沈んでも生き残れるが、乗客全員は救えないだろう。このままではジリ貧だった。
あらためて、初撃でスキル選択を間違えたことが悔やまれる。
「くぅ」
ユズハが一声鳴いてスキルを発動させると、風と雨が一時的に弱くなった。
「もうためらってる場合じゃないか。ユズハ、こっちの防御を頼むぞ!」
「りょーかい」
ブレスが途切れた瞬間、チャンスとばかりにシンが船から飛び出す。
「シン殿!?」
振り向くと、奏と花梨が手すりにつかまってシンを見ていた。前方は援軍に任せ、シンのところへ駆け付けたようだ。
「海に落ちるなよ!」
援護は必要ないぞと思いつつ、シンはそれだけ告げて海面を蹴る。
「あれはっ!?」
花梨の驚いた声を背に、シンは海水を爆散させながらゲイル・サーペントに肉薄した。
移動系武芸スキル【水面渡り】が発動しているうちは、水を足場にして戦うことができる。
まず狙ったのはティエラの矢が片目に刺さったままの個体。死角から『禍紅羅』を叩きつけ、その首を抉り斬る。
「1匹目!!」
さらにその場で一回転。斬り飛ばしたゲイル・サーペントの首を蹴り飛ばし、隣にいた1匹に激突させた。
「――――ッ!?」
ゲイル・サーペントの体勢が崩れたところに、光術系魔術スキル【アヴライド・レイ】を発動。
放たれた光線は、風雨が弱ったことで正確に2匹の頭部を纏めて撃ち抜いた。
「2匹目!!」
残るゲイル・サーペントは7匹。
シンがさらに1匹をしとめようと視線を巡らせたところで、船の前方から爆音が響いた。
薄闇の中で、銀の光が煌く。
マップを見れば、前方にいた5匹のうち、すでに3匹の反応が消えていた。援軍はシンの予想通りの人物だったようだ。
「このまま一気に――ん?」
殲滅、と言いかけて、シンは別の何かが近づいてくるのを感知する。
数は2。ゲイル・サーペントを上回る速度でこちらへ向かってきていた。
『シュニー! シュバイド! 2匹追加だ!』
さらに1匹を追加で屠りながら、シンは心話で、新たに近づいてくるモンスターがいることをシュニーたちに伝えた。
『こちらでも確認しました。それにしても、これほどの襲撃があるとは』
『まったくだ。我らがいなければ、今頃沈んでいるぞ』
やれやれといった雰囲気を込めた心話が2人から返ってくる。戦いにくい状況ではあるが、どちらも切迫した様子はなかった。
シュニーとシュバイドがいる以上、船の守りは万全だろう。
「分かれたか」
敵の反応は途中で二手に分かれ、前方と後方から1匹ずつ近づいてきた。
海面が一際大きく膨れ上がり、弾けるのと同時に、一回り大きなゲイル・サーペントが姿を現す。
「なるほど、クイーンとキングか」
先に現れた10匹とは明らかに違う見た目に、【分析】が発動するよりも早くシンはその正体を看破した。
――――【ゲイル・サーペント・クイーン レベル702】
シンの発言とほぼ同時に、モンスターの詳細が表示される。
予想通り、表示された名前にはクイーンの文字があった。前方に向かったのがキングなのだろう。
キング、クイーンと名のつくモンスターは数多く、そのほとんどが同系列の配下を連れている。
「え……?」
角を曲がってきた少女が突然奇声を発したので、シンは動きを止めた。視線の先には、驚きを顔全体で表現している少女がいる。見たところ中学生になったばかりといった風貌だ。
身長は140セメルくらいと小柄。背中まである炎のような深紅の髪が印象的だった。濁りのない澄んだ黒い瞳が、まっすぐシンに向けられている。
「お嬢様?」
動きを止めた少女の後ろから現れたのは、侍を連想させる服装の女性だった。
黒地に橙色の線で模様が描かれた籠手と脛当て。肩には大袖と呼ばれる防具、胸元には少し小さめの胴当てをつけている。
身長は160セメル後半といったところ。腰までありそうな黒髪を後頭部で縛り、ポニーテールにしていた。
「そちらの殿方が何か?」
女性は髪と同じ色の瞳をシンに向けてきた。その鋭い視線は、彼女の力が見てくれだけではないと雄弁に物語っている。
「いや、なんでもない。少し浮かれ過ぎていたようじゃ。気配に気づかなんだ。そちもすまぬな。わらわの不注意ゆえ、気にしないでもらいたい」
「はぁ……」
女性に声をかけてから、少女はシンに謝った。
空返事をしつつも、少女の回答にシンは内心ほっとしていた。自分を見る女性の目が、少々物騒に感じられたのだ。
「えーと、では、俺はこれで」
「うむ、よき旅を」
シンは軽く目礼してから、シュニーたちのいる部屋へと足を向ける。
部屋に着くと、2人を除く全員がそろっていた。
「ハーミィさんとケーニッヒさんは?」
「船が動き出したとたん、ハーミィちゃんが船酔いしちゃったから、付き添ってるよ」
シンの疑問に水を飲んでいたミルトが答える。馬車では酔わなかったが、船はだめだったようだ。
「あまりひどくはないので、横になっていれば大丈夫でしょう」
シュニーが補足した。
「シンは船内を見て回っていたのだろう? 何か気になるものはあったか?」
「いや、これといったものはないな。怪しい密航者もなしだ」
マップ機能の応用で、船倉の中などに人が隠れていないことは確認済みだ。ゲーム時代はそこにNPCが隠れていて、海賊の出現と同時に中からも襲われるというイベントがあった。
今後の予定を軽く話し合ってから、各自自由行動とする。
シンは外の景色を見ようと、デッキに向かうことにした。
「あ、僕も行くよ」
「私も」
歩き出したシンに、ミルトとティエラがついてくる。ユズハは相変わらずシンの肩の上だ。
船内探検中にもデッキに行ったが、道順を確認しただけだったので、どのような景色が見えるのかシンにはまだわからない。
「デッキに出ると、風が強くなったように感じるな」
「いい風だね」
「あ、何かいるわ!」
デッキの端から海を見ていたティエラが何か見つけた。
シンとミルトもデッキの端に近づいて、ティエラの指し示すほうへ視線を向ける。
「ヒーロードルフィンだね」
「相変わらずカラフルだな」
ティエラが見つけたのは、ヒーロードルフィンというイルカ型モンスターだった。
戦隊物をイメージしたのか、常に5、6匹の群れで行動している。赤、青の個体は固定で、残りは黄や緑、白、黒、ピンクといったバリエーションがある。
基本的に、攻撃を仕掛けなければ何もしてこない、ノンアクティブのモンスターだ。
「あ、珍しい。ゴールドがいるよ」
「おお、本当だ」
ミルトが指差した先では、赤い個体を先頭に、青、白、黒、金のヒーロードルフィンが船と並走する形で泳いでいた。金色はなかなか見ることができない。
「1匹だけ、すごく光ってるわね」
「強さはたいして変わらないけどな」
倒すと他の個体より、多少貴重なアイテムが手に入る。プレイヤーからは見つけると運気が上がると言われていた。
「ん? おい、ティエラ。どうしたんだ?」
シンが視線を戻すと、ティエラが海面をじっと見つめていた。
「いえ、こうして見ると、地面に足がついてないのを実感しちゃって」
船に乗るのは初めてと言っていたので、不安になってきたのか。
「よほどのことがなきゃ沈まないから、安心しろって」
船には強度を上げるスキルがかかっていて、海棲の巨大モンスターに体当たりされても、そう簡単には沈没しない。
「わかってるつもりなんだけど、慣れるまで落ち着かないわ」
こればかりはすぐにとはいかないようだ。
シンたちはしばらく景色を眺めた後、部屋に戻った。
†
航海は順調そのもので、一度港町に寄った以外、これといったイベントはなかった。
あえて挙げるとすれば、通路で話した例の少女と女性に、何度か会う機会があったことくらいだろう。互いの名前も知らないのは不便だと、簡単な自己紹介もした。
独特の口調の少女の名前は九条奏。レベル159の弓術士だ。
侍の女性は三枝花梨。レベル221の侍で、奏の護衛だという。
戦ったわけではないが、シンには彼女たちが、年齢にそぐわない強さを持っているように感じられた。もしかすると選定者なのかもしれない。
「今日はなんだか天気が悪いですね」
「うむ、荒れそうじゃの」
曇天を見ながらつぶやいたシンに、奏が相槌を打つ。その横には花梨もいる。
もうすぐ夕暮れ時だが、ぶ厚い雲に遮られて沈みゆく太陽を見ることはできなかった。
「そういえば、おふたりはヒノモトに向かうんですよね」
「そうじゃの」
「機会があれば行ってみたいと思ってるんですが、どんな国なんですか?」
せっかくなので、ヒノモトについて聞いてみることにした。国名もそうだが、2人の名前も日本を彷彿させる。
「ヒノモトの起こりは、天変地異によって大陸から切り離された島を、いくつかの集団が治めたこと、と言われておる。現在は東西をそれぞれ九条、八重島の2家が代表として取り仕切っている」
ベイルーンへの護衛依頼で一緒になったドラグニル、ガイエンの語っていた各ギルドは、要所要所を治めるにとどまっているようだ。
「なるほど……ん? 確か奏さんも九条ですよね」
「その通りじゃ、これでもヒノモトの東を仕切る九条家の人間よ」
「お嬢様、そういうことはあまり吹聴なさらないほうがよろしいですよ」
奏の発言に対して、花梨が苦言を呈した。
「そうじゃが、こやつなら大丈夫じゃろう」
よくわからないが、交流を重ねるうちに、奏には多少信用されたようだ。花梨からも当初のような強い視線は感じない。
ちなみに丁寧語なのは、そうしないと花梨から威圧感たっぷりの視線が飛んでくるからだ。
「自然の多いよき国じゃよ」
「故郷を思い出します。でも、そんな家のご息女が国の外に出ていいんですか? 護衛が花梨さん1人だけっていうのも、さすがにどうかと思いますけど」
「何も告げずに飛び出してきたからの。いろいろと事情があるのじゃ」
「九条家の方が冒険者になるなど、前代未聞です」
「そう言うでない。もう手段がないのは花梨もわかっておるから、こうしてついてきてくれたのじゃろ?」
「それは、そうなのですが……」
渋い顔をしている花梨を見るに、奏の言う事情とは、ヒノモトの外に出向かなければ解決できないことなのだろう。
「まあよい。目的のものは手に入れたのじゃ。後は帰るだけよ」
シンたちの降りる港町から、ヒノモトへの船が出ているらしい。
「雨が降ってきましたね」
雲が多かっただけに、降るだろうとは思っていた。予想外だったのは、思っていたより雨足が強く、急に風も強まったことだ。
数滴の雫が落ちてきたと思った直後に、土砂降りの雨となった。強烈な風が吹き荒れ、その煽りを受けた海面が大きく波打つ。
時をほぼ同じくして、シンの感知範囲にモンスターの反応が複数現れた。すさまじい速度で船に向かってくる。
「モンスターです。まっすぐこっちに向かってきているようです」
「何じゃと? 花梨は感じるか?」
「いえ、まったく」
シンの感知範囲はスキルの併用もあってかなり広い。花梨たちがどの程度感知できるのかシンにはわからないが、感知できるまでもう少しかかるはずだ。
「信じてもらえるかわかりませんが、反応は10。かなり大きいです」
シンは奏たちに説明しながらシュニーに心話をつなぐ。
シュニーたちもモンスターの接近は感知していたようで、フィルマが船長に話をしにいったとの返事が来た。
シュバイド、ヴィルヘルム、ティエラの3人はこちらに向かってきているらしい。
「もうすぐ俺の連れが来ます。奏さんたちはどうしますか?」
「船に向かってくるとあっては部屋に閉じ籠もったところで意味はあるまい。幸いわらわは弓が使える。手を貸そう」
「私も微力ながらお手伝いします」
奏はずぶぬれの着物の懐から1枚のカードを取り出して具現化した。
次の瞬間、奏の手に現れたのは伝説級中位の弓『金剛烈弓』。
長弓に近い大きさの弓で、矢の入った矢筒とセットになっている。射程が長いのが特徴だ。
花梨も奏と同じく武装を具現化しており、左手には赤い鞘の刀が握られている。
伝説級中位『朱蘭』、炎属性を帯びた刀である。
「間に合ったか」
「ぎりぎりだがな」
「は、早いです……」
シンも『禍紅羅』を具現化して構えたところで、シュバイドとヴィルヘルム、ティエラの3人がデッキに姿を現した。
ティエラの足元にはカゲロウとユズハもいる。防御と遠距離攻撃が可能なメンバーだ。
「他の奴らは?」
「ハーミィ殿は部屋にいる。念のため、ケーニッヒ殿とミルト殿には護衛として残ってもらった。フィルマは船長に伝令に、シュニーはハーミィ殿の防御を固めてから来る」
ミルトは水の精霊の使い手。海上では心強い。
「何かわかるか?」
「モンスターの反応が出たのと、天気が荒れ始めたのがほぼ同じ。そこから考えられるのは、サーペント系か軟体動物系だな」
ヴィルヘルムの問いに、シンはすぐに考えつくものを挙げた。
モンスターの中には、出現と同時に天候に影響を与えるものがいる。シンの言った系統のモンスターは、嵐とともに現れることが多いのだ。
「お客様! 我々が対処します。船内へお急ぎください!」
フィルマから聞いたのか、独自に感知したのか。船員がシンたちに退避するように言ってくる。
モンスター迎撃要員も兼ねているのだろう、船員の手には弓や杖、銛などが握られていた。
「我々も手伝います」
「しかし……っ!? わかりました。ご協力感謝いたします!」
渋るそぶりを見せた船員だったが、シンたちの佇まいや武装を見て考えを改めた。
嵐のせいで揺れる船は、足場が少々心もとない。相手にもよるが、迎撃する者は多いに越したことはないと判断したようだ。
「来ます!」
シンの声よりわずかに遅れて、海面が大きく盛り上がる。そして、荒れる海から巨大モンスターが姿を現した。
「ゲイル・サーペントか!」
海面から顔を出して睥睨しているのは、海嵐竜とも呼ばれるモンスター、ゲイル・サーペントだった。竜の系統に分類され、水のブレスや咆哮、体当たりなどの攻撃を主としている。
レベル帯は500~600だが、海という不安定な戦闘場所が災いして、レベル以上に手強い。
「まさか、こんなに?」
「ヒノモトに帰るだけというこのタイミングで」
次々に姿を現すゲイル・サーペントの姿に、奏と花梨は歯噛みしていた。いくら船が頑丈でも、10匹ものゲイル・サーペントを相手にしては、転覆は免れないと考えたのだろう。
実際、デッキに出てきた船員も、顔を真っ青にして立ちすくんでいる。
「ヴィルヘルム! ティエラ! あいつらを近づかせるなよ! シュバイドはあいつらの遠距離攻撃を防いでくれ!」
シンは声を上げながら『禍紅羅』を一閃。
鎚術風術複合スキル【虎狼打ち】の発動によって生じた、強烈な烈風による一撃が風雨を吹き散らし、船を囲むゲイル・サーペントのうちの、1匹の頭を叩き潰した。
強い風と叩きつける雨の中でも、強烈な打撃音がデッキにいたすべての人々の耳朶を打つ。
数秒の時間を置いて、頭部のひしゃげたゲイル・サーペントがゆっくりとその身を海中に沈めていった。
「とっとと終わらす!」
「私だって!」
シンの攻撃に続いてヴィルヘルムが獄槍『ヴァキラ』を投擲し、ティエラが矢を放った。
仲間が一撃で殺されたことに動揺し、動きの止まっていたゲイル・サーペントが、巨体に似合わぬ俊敏さで射線から身を逸らす。しかし反応が遅れたのはどうしようもなく、最も船の近くにいた個体の片目を矢が、胴体を『ヴァキラ』が貫いていた。
「――――――――――ッ!?」
即死とはいかなかったが、金属をこすり合わせたような悲鳴を上げて、ゲイル・サーペントは水中に姿を消した。
「おぬし、只者ではないようだの」
シンの動きに驚いたのはモンスターだけではない。水面から顔を出そうとするゲイル・サーペントに矢を射る奏が話しかけてきた。
ただの冒険者ですよと返して、シンは感知に注意を向ける。ゲイル・サーペントは船を中心に泳ぎながら、接近と離脱を繰り返していた。
「なんだか、船の揺れが大きくなってませんか?」
「おそらく、モンスターが何かしているのでしょう」
花梨も違和感を覚えていたようで、シンの言葉にうなずいた。
「ちっ、やつら潜って姿を見せねぇぞ」
「ねぇシン! このまま船がひっくり返ったりしないわよね!?」
近づいてきているにもかかわらず、より強さを増した風雨でティエラの声がかき消されそうになっている。心配するのももっともで、船員でも支えなしで立っているのが難しいほどの揺れが船を襲っているのだ。
誰もが手すりや帆柱に手をかけたり、デッキの床に武器を突き立てたりして凌いでいる。
まともに立っているのはシンとシュバイドくらいだった。
「シン! どうやら仕掛けてくるようだぞ!」
シュバイドの声にシンが周囲に視線を走らせると、9匹のゲイル・サーペントが海面から顔を出し、口を大きく開けてこちらへ向けていた。
「ブレスか。シュバイドは正面を頼む。俺は裏を守る」
船の上を最短距離で移動しながら、シンはシュバイドの持っているものと同じ『大衝殻の大盾』を取り出す。そして、対空用の攻撃遮断障壁を最大出力で展開した。
空中に出現する六角形をつなぎ合わせた障壁が、ゲイル・サーペントの放った水のブレスを弾き返す。
「くそ、雨と風で狙いがずれるな」
ブレスを防ぎながら魔術スキルによる攻撃を仕掛けたシンだが、暴風雨で船が揺れ、さらに距離もあるのでなかなか命中しない。
弓を使うティエラや奏も、狙撃できていなかった。
それを見たユズハが申し出る。
「補助する?」
「頼む」
シンは素直に頼ることにした。
「初めの一撃でもっと数を減らしとくべきだった」
わかっていたつもりだったが、嵐の船上は予想以上に戦いにくい。
雲で光が遮られ常に薄暗く、風と雨で視界は悪い。船が揺れて足場は悪く、モンスターを攻撃しつつ船も守らなければならない。
シンたちは船が沈んでも生き残れるが、乗客全員は救えないだろう。このままではジリ貧だった。
あらためて、初撃でスキル選択を間違えたことが悔やまれる。
「くぅ」
ユズハが一声鳴いてスキルを発動させると、風と雨が一時的に弱くなった。
「もうためらってる場合じゃないか。ユズハ、こっちの防御を頼むぞ!」
「りょーかい」
ブレスが途切れた瞬間、チャンスとばかりにシンが船から飛び出す。
「シン殿!?」
振り向くと、奏と花梨が手すりにつかまってシンを見ていた。前方は援軍に任せ、シンのところへ駆け付けたようだ。
「海に落ちるなよ!」
援護は必要ないぞと思いつつ、シンはそれだけ告げて海面を蹴る。
「あれはっ!?」
花梨の驚いた声を背に、シンは海水を爆散させながらゲイル・サーペントに肉薄した。
移動系武芸スキル【水面渡り】が発動しているうちは、水を足場にして戦うことができる。
まず狙ったのはティエラの矢が片目に刺さったままの個体。死角から『禍紅羅』を叩きつけ、その首を抉り斬る。
「1匹目!!」
さらにその場で一回転。斬り飛ばしたゲイル・サーペントの首を蹴り飛ばし、隣にいた1匹に激突させた。
「――――ッ!?」
ゲイル・サーペントの体勢が崩れたところに、光術系魔術スキル【アヴライド・レイ】を発動。
放たれた光線は、風雨が弱ったことで正確に2匹の頭部を纏めて撃ち抜いた。
「2匹目!!」
残るゲイル・サーペントは7匹。
シンがさらに1匹をしとめようと視線を巡らせたところで、船の前方から爆音が響いた。
薄闇の中で、銀の光が煌く。
マップを見れば、前方にいた5匹のうち、すでに3匹の反応が消えていた。援軍はシンの予想通りの人物だったようだ。
「このまま一気に――ん?」
殲滅、と言いかけて、シンは別の何かが近づいてくるのを感知する。
数は2。ゲイル・サーペントを上回る速度でこちらへ向かってきていた。
『シュニー! シュバイド! 2匹追加だ!』
さらに1匹を追加で屠りながら、シンは心話で、新たに近づいてくるモンスターがいることをシュニーたちに伝えた。
『こちらでも確認しました。それにしても、これほどの襲撃があるとは』
『まったくだ。我らがいなければ、今頃沈んでいるぞ』
やれやれといった雰囲気を込めた心話が2人から返ってくる。戦いにくい状況ではあるが、どちらも切迫した様子はなかった。
シュニーとシュバイドがいる以上、船の守りは万全だろう。
「分かれたか」
敵の反応は途中で二手に分かれ、前方と後方から1匹ずつ近づいてきた。
海面が一際大きく膨れ上がり、弾けるのと同時に、一回り大きなゲイル・サーペントが姿を現す。
「なるほど、クイーンとキングか」
先に現れた10匹とは明らかに違う見た目に、【分析】が発動するよりも早くシンはその正体を看破した。
――――【ゲイル・サーペント・クイーン レベル702】
シンの発言とほぼ同時に、モンスターの詳細が表示される。
予想通り、表示された名前にはクイーンの文字があった。前方に向かったのがキングなのだろう。
キング、クイーンと名のつくモンスターは数多く、そのほとんどが同系列の配下を連れている。
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