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耐え抜いて更に耐え抜いて向かう先
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藤次郎は痛む体を堪えつつ、杖を肩に担ぐと腰を落とし、目印になる小石を幾つか放っていた。
生き残るための術の一つだ。
杖が届く間合いを測る為で、辰吉から教わった獣に相対する為の杖術であった。
『いいか、藤坊。どうしても闘わなければ為んねえ、万が一の時には、呼吸を整えろ。呼吸が乱れると、全てが乱れて隙だらけだ。目で捉えて、耳で追い、鼻で整えろ。解ったな』
はい。辰吉さん。見ていてください。
山犬の一匹が涎を垂らしながら、小石を越えて飛びかかって来た。牙を剥いた処を、強かに上あご辺りを打ちつけ、追い払う。
ぎゃうっという呻き声と共に、一歩後ろへ退いたが、目は爛々としたままである。
他の山犬達は、最初の一頭が上手くいかず、引き下がったのを見て、獲物は手強い、と距離を置いて隙を窺っている。
一頭が探りを入れていたと思うと、左側から別の一頭が飛びかかって来た。
藤次郎は杖を短く持つと、鼻の頭を突く。
と、同時に、右側からもう一頭が襲って来る。
肩を回して、杖をふり横薙ぎに薙いだが、すぐさま山犬は後ろに飛びずさり、空振りした。
まるで、杖の長さを見切っているかの様であった。
「やっぱり、上手くは行かないね」
ぽつりと藤次郎が呟くと、それが合図で在ったかの様に、正面から襲い掛かられ、捲き打ちで激しく地に叩き付けたが、その隙に右後ろに回り込んでいた山犬が、首元を狙って襲い掛かる。
「しまったっ」
と、呟いたのだが、遅かれし。
振り向いた時には既に、牙を剥いて飛びかかって来ている姿であった。
これまでか、と瞬時に覚悟を決めた藤次郎であったが、そんな藤次郎を救うべく、黒い旋風が山犬に挑み、これを阻んだ。
墨助と仲間の鴉で在った。
「カアカアカア」
大きくけたたましく、山犬たちの注意を惹くかのように、墨助達は鳴いた。
「墨助っ」
藤次郎は直ぐに気が付き、口元に少しだけ笑みが戻る。
依然、命の危機にある事には変わりがないが。万の増援を受けた気分で在った。
ホンの一筋、藤次郎は光明を見つけた気がした。
しかし、希望は、直ぐ様、激しい緊張に変わってしまった。
「わぉーん」
狼の遠吠えが更に重なって聞こえて来た。
これ以上数が増えたら、持ちこたえられそうにない。
殺気を孕んだ唸り声がそこかしこでし始め、泣きべそをかきたくなる気持ちをどうにかこうにか抑えて、藤次郎は更に身構えた。
諦めない。諦めるわけには行かない。
懐にあるお市の簪がずっしりと重みを伝えているような気さえする。
杖を持つ腕に力が入った。
まだまだ、いけるさ。
次の瞬間、藤次郎を囲んでいたあばら骨の浮いた山犬に、黒い疾風が地を這い、襲い掛かり組み伏せた。
「黒ッ」
ちらりと藤次郎を振り返ると、黒丸は姿勢も低く、山犬達の前に立ちはだかった。
そして、「わんわんわんっ」と周りに吠え立てる。それが合図かのように、やせ細った山犬達へ、別の毛並の良い山犬達が噛みついて組み伏せ追立てた。
やせ細った山犬達の群れは、灰色の堂々たる体躯の狼に、大いに恐れをなすと尻尾を巻いて逃げ出していった。
「カアカアカア」
墨助が藤次郎の頭に飛び乗って、ぱたぱたと羽根を拡げている。
「よせ、墨助。あちこち痛いんだ」
「わんっわんっ」
黒丸が大丈夫かと藤次郎へ吼える。
藤次郎の緊張していた顔が少しほころんだ。
そんな藤次郎を見透かすかのような眼差しで、灰色の狼が目の前に現れた。
お市と共に居た、灰王である。
藤次郎は、灰王をよく見て取った。
殺気は感じられず、どちらかというと知的な雰囲気さえ感じ取れる狼だ。
「草津の時に、助けてくれた狼のヌシだね。また助けてもらった。有難うこの通り」
藤次郎は座り込むと、杖を脇に置いて、ぺこりと頭を下げた。
灰王は、ゆったりと近寄って、ふんふんと藤次郎の胸のあたりの匂いを嗅いだ。そして、満足気な表情を浮かべると、
「うぉうぉん」
灰色の狼は、声を上げ、周辺の仲間へと下がるように命じ、鼻を宙に向けてふんふんすると群れを率いて、音も立てずに山の奥側へと分け入って、姿を消した。
「黒、あの狼の群れを呼んできてくれたのは、お前だろ。有難う」
藤次郎は黒丸とその姿を見送りつつ、お市に思いを馳せていた。
姉さん。
酷い思いをしているだろうに、しっかりと護ってくれている。
自分は死にそうな怪我でも、何でも無い。こんなところで、めそめそぐずぐずしている場合ではないのだ。
藤次郎は、痛む躰を引き摺りながら、立ち上がると、山人達の痕跡が無いか、奥深く分け入り、探ることに決めた。
父の米之助や辰吉の背中から、学び取った事は、やるべきことは躊躇するなであった。
そして何より、お市の言葉が支えとなって背中を押す。
出来るだけのことをやるだけ……だよね、姉さん。
「わんわんっ」
「カアカア」
そうだ。いつだって、自分は独りではない。
助けてくれる仲間がいる。
「有難う、黒。有難う、墨助。さあ行こう」
藤次郎の表情は強い意志に彩られ、黒丸と墨助を供連れに、先へと進んでいた。
そこへガサガサと茂みが、間違いなく人の揺れで動いていた。
「一難去ってまた一難」
藤次郎の呟きを聞いたか聞かずか、黒丸は低く唸り、藤次郎は逃げ出したくなる気持ちをぐっと堪えて、棒を強く握りしめた。
おつかわし屋の軒下で涼みながら、昼寝を決めこんでいた虎猫の山吹は、どたどたと走る人の足音に、煩わしそうな顔をして、眼を醒ました。
「ふにゃああ」
大きく欠伸をして背伸びをし、爪を研ぐと、ひげを整え尻尾を噛んで、あちこち舐めて毛繕いをする。
少しばかり遠出をしたので疲れており、ちょっぴり不機嫌であった。
人間たちは相当慌てているようだ。
身支度が整うと、山を訝し気に見つめ、やれやれといった表情で、「にゃうっ」と一声、広がる青空に向かって渋々返事らしきものをすると、しなやかに歩き出した。
ゆったりと歩くその姿は、中々堂に入ったもので、何故かしら優雅ささえ感じられる。
「にゃーん」
尻尾をぴんっと立てて、堂々と進んでゆく。
のほほんとした雰囲気の中に、忍び寄り狩りを行うものの殺気が、ほんのりと立ち込めている。可愛らしくそしてちょっぴり怖い、山吹の行軍であった。
向かう先は当然、何かにつけて手間のかかる妹分の処である。
生き残るための術の一つだ。
杖が届く間合いを測る為で、辰吉から教わった獣に相対する為の杖術であった。
『いいか、藤坊。どうしても闘わなければ為んねえ、万が一の時には、呼吸を整えろ。呼吸が乱れると、全てが乱れて隙だらけだ。目で捉えて、耳で追い、鼻で整えろ。解ったな』
はい。辰吉さん。見ていてください。
山犬の一匹が涎を垂らしながら、小石を越えて飛びかかって来た。牙を剥いた処を、強かに上あご辺りを打ちつけ、追い払う。
ぎゃうっという呻き声と共に、一歩後ろへ退いたが、目は爛々としたままである。
他の山犬達は、最初の一頭が上手くいかず、引き下がったのを見て、獲物は手強い、と距離を置いて隙を窺っている。
一頭が探りを入れていたと思うと、左側から別の一頭が飛びかかって来た。
藤次郎は杖を短く持つと、鼻の頭を突く。
と、同時に、右側からもう一頭が襲って来る。
肩を回して、杖をふり横薙ぎに薙いだが、すぐさま山犬は後ろに飛びずさり、空振りした。
まるで、杖の長さを見切っているかの様であった。
「やっぱり、上手くは行かないね」
ぽつりと藤次郎が呟くと、それが合図で在ったかの様に、正面から襲い掛かられ、捲き打ちで激しく地に叩き付けたが、その隙に右後ろに回り込んでいた山犬が、首元を狙って襲い掛かる。
「しまったっ」
と、呟いたのだが、遅かれし。
振り向いた時には既に、牙を剥いて飛びかかって来ている姿であった。
これまでか、と瞬時に覚悟を決めた藤次郎であったが、そんな藤次郎を救うべく、黒い旋風が山犬に挑み、これを阻んだ。
墨助と仲間の鴉で在った。
「カアカアカア」
大きくけたたましく、山犬たちの注意を惹くかのように、墨助達は鳴いた。
「墨助っ」
藤次郎は直ぐに気が付き、口元に少しだけ笑みが戻る。
依然、命の危機にある事には変わりがないが。万の増援を受けた気分で在った。
ホンの一筋、藤次郎は光明を見つけた気がした。
しかし、希望は、直ぐ様、激しい緊張に変わってしまった。
「わぉーん」
狼の遠吠えが更に重なって聞こえて来た。
これ以上数が増えたら、持ちこたえられそうにない。
殺気を孕んだ唸り声がそこかしこでし始め、泣きべそをかきたくなる気持ちをどうにかこうにか抑えて、藤次郎は更に身構えた。
諦めない。諦めるわけには行かない。
懐にあるお市の簪がずっしりと重みを伝えているような気さえする。
杖を持つ腕に力が入った。
まだまだ、いけるさ。
次の瞬間、藤次郎を囲んでいたあばら骨の浮いた山犬に、黒い疾風が地を這い、襲い掛かり組み伏せた。
「黒ッ」
ちらりと藤次郎を振り返ると、黒丸は姿勢も低く、山犬達の前に立ちはだかった。
そして、「わんわんわんっ」と周りに吠え立てる。それが合図かのように、やせ細った山犬達へ、別の毛並の良い山犬達が噛みついて組み伏せ追立てた。
やせ細った山犬達の群れは、灰色の堂々たる体躯の狼に、大いに恐れをなすと尻尾を巻いて逃げ出していった。
「カアカアカア」
墨助が藤次郎の頭に飛び乗って、ぱたぱたと羽根を拡げている。
「よせ、墨助。あちこち痛いんだ」
「わんっわんっ」
黒丸が大丈夫かと藤次郎へ吼える。
藤次郎の緊張していた顔が少しほころんだ。
そんな藤次郎を見透かすかのような眼差しで、灰色の狼が目の前に現れた。
お市と共に居た、灰王である。
藤次郎は、灰王をよく見て取った。
殺気は感じられず、どちらかというと知的な雰囲気さえ感じ取れる狼だ。
「草津の時に、助けてくれた狼のヌシだね。また助けてもらった。有難うこの通り」
藤次郎は座り込むと、杖を脇に置いて、ぺこりと頭を下げた。
灰王は、ゆったりと近寄って、ふんふんと藤次郎の胸のあたりの匂いを嗅いだ。そして、満足気な表情を浮かべると、
「うぉうぉん」
灰色の狼は、声を上げ、周辺の仲間へと下がるように命じ、鼻を宙に向けてふんふんすると群れを率いて、音も立てずに山の奥側へと分け入って、姿を消した。
「黒、あの狼の群れを呼んできてくれたのは、お前だろ。有難う」
藤次郎は黒丸とその姿を見送りつつ、お市に思いを馳せていた。
姉さん。
酷い思いをしているだろうに、しっかりと護ってくれている。
自分は死にそうな怪我でも、何でも無い。こんなところで、めそめそぐずぐずしている場合ではないのだ。
藤次郎は、痛む躰を引き摺りながら、立ち上がると、山人達の痕跡が無いか、奥深く分け入り、探ることに決めた。
父の米之助や辰吉の背中から、学び取った事は、やるべきことは躊躇するなであった。
そして何より、お市の言葉が支えとなって背中を押す。
出来るだけのことをやるだけ……だよね、姉さん。
「わんわんっ」
「カアカア」
そうだ。いつだって、自分は独りではない。
助けてくれる仲間がいる。
「有難う、黒。有難う、墨助。さあ行こう」
藤次郎の表情は強い意志に彩られ、黒丸と墨助を供連れに、先へと進んでいた。
そこへガサガサと茂みが、間違いなく人の揺れで動いていた。
「一難去ってまた一難」
藤次郎の呟きを聞いたか聞かずか、黒丸は低く唸り、藤次郎は逃げ出したくなる気持ちをぐっと堪えて、棒を強く握りしめた。
おつかわし屋の軒下で涼みながら、昼寝を決めこんでいた虎猫の山吹は、どたどたと走る人の足音に、煩わしそうな顔をして、眼を醒ました。
「ふにゃああ」
大きく欠伸をして背伸びをし、爪を研ぐと、ひげを整え尻尾を噛んで、あちこち舐めて毛繕いをする。
少しばかり遠出をしたので疲れており、ちょっぴり不機嫌であった。
人間たちは相当慌てているようだ。
身支度が整うと、山を訝し気に見つめ、やれやれといった表情で、「にゃうっ」と一声、広がる青空に向かって渋々返事らしきものをすると、しなやかに歩き出した。
ゆったりと歩くその姿は、中々堂に入ったもので、何故かしら優雅ささえ感じられる。
「にゃーん」
尻尾をぴんっと立てて、堂々と進んでゆく。
のほほんとした雰囲気の中に、忍び寄り狩りを行うものの殺気が、ほんのりと立ち込めている。可愛らしくそしてちょっぴり怖い、山吹の行軍であった。
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