14 / 22
第三章 蠢くもの達
蠢く者達
しおりを挟む
湯の町から少し離れた寂れた神社の跡地に、雰囲気の妖しい集団が蠢いていた。
皆、黒い頭巾に黒装束、顔は巫術を施した顔隠しで覆い、手に手に青銅の鏡や念珠、金剛杵などの呪具を武具のように携えている。
その中の首領格らしき男が、布越しにすら輝く金色の瞳鈍く光らせながら、強い殺気を裡に抑えつつ宣言した。
「今宵が千載一遇の機会。赤く染まる満月と凶の徴が重なる今宵こそ、あの鬼門を開くのにうってつけよ。中央幕府の愚か者共に誰が真の主なのかを思い出させてくれる。皆、抜かり無いな」
声を上げず頷く異様な集団の中で、一人異質な男が居た。
「それなんやけど、一つあるんや」
赤茶色の烏帽子に青い水干、奴袴も烏帽子と同じ設えの赤茶色の西の都の貴人風な男が口を開いた。
血の気の無い青白い肌に、紅をさしたかのような赤い唇にぬれた瞳。女かと見紛う美しい男である。
「あそこの鬼門封じを抜いたら、それこそただの民草にもようさん死人が出てしまうけど、それはどないなん? 宜しいん? あれ出したら元には戻せへんよ?」
「先程やれと申したはず。陰陽寮のものだからとて、二の句を告げる事は許さん。良いな」
首領格の男から怒気と殺意が相まって鬼気を孕んだ風と化し、貴人風の優男に吹き付ける。
隣に立っていた黒装束の男は其の風にあたって、自らの首を抑えて苦しそうにもがいたかと思うと、たちまちに額から角を生やし、黒装束を破いて急激に大きく、鬼となり果てた。
ぐおぉぉっ。
鬼と化した男が大きく咆哮した。
その刹那、黒い線が宙を舞い、鬼の首が刎ねられ躰ごと寸刻みに肉塊となって、地に積みあがる。
「力弱き、使えぬものは要らん。貴様はどうだ? 術師よ」
「おお、怖っ。念の為の確認ですやん。そないに睨まんといて」
扇を口に当て、指を突き出し軽い口調でいなしている。
どことなく楽しそうなこの若い男も、矢張り普通ではない。
皆、黒い頭巾に黒装束、顔は巫術を施した顔隠しで覆い、手に手に青銅の鏡や念珠、金剛杵などの呪具を武具のように携えている。
その中の首領格らしき男が、布越しにすら輝く金色の瞳鈍く光らせながら、強い殺気を裡に抑えつつ宣言した。
「今宵が千載一遇の機会。赤く染まる満月と凶の徴が重なる今宵こそ、あの鬼門を開くのにうってつけよ。中央幕府の愚か者共に誰が真の主なのかを思い出させてくれる。皆、抜かり無いな」
声を上げず頷く異様な集団の中で、一人異質な男が居た。
「それなんやけど、一つあるんや」
赤茶色の烏帽子に青い水干、奴袴も烏帽子と同じ設えの赤茶色の西の都の貴人風な男が口を開いた。
血の気の無い青白い肌に、紅をさしたかのような赤い唇にぬれた瞳。女かと見紛う美しい男である。
「あそこの鬼門封じを抜いたら、それこそただの民草にもようさん死人が出てしまうけど、それはどないなん? 宜しいん? あれ出したら元には戻せへんよ?」
「先程やれと申したはず。陰陽寮のものだからとて、二の句を告げる事は許さん。良いな」
首領格の男から怒気と殺意が相まって鬼気を孕んだ風と化し、貴人風の優男に吹き付ける。
隣に立っていた黒装束の男は其の風にあたって、自らの首を抑えて苦しそうにもがいたかと思うと、たちまちに額から角を生やし、黒装束を破いて急激に大きく、鬼となり果てた。
ぐおぉぉっ。
鬼と化した男が大きく咆哮した。
その刹那、黒い線が宙を舞い、鬼の首が刎ねられ躰ごと寸刻みに肉塊となって、地に積みあがる。
「力弱き、使えぬものは要らん。貴様はどうだ? 術師よ」
「おお、怖っ。念の為の確認ですやん。そないに睨まんといて」
扇を口に当て、指を突き出し軽い口調でいなしている。
どことなく楽しそうなこの若い男も、矢張り普通ではない。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた
いに。
恋愛
"佐久良 麗"
これが私の名前。
名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。
両親は他界
好きなものも特にない
将来の夢なんてない
好きな人なんてもっといない
本当になにも持っていない。
0(れい)な人間。
これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。
そんな人生だったはずだ。
「ここ、、どこ?」
瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。
_______________....
「レイ、何をしている早くいくぞ」
「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」
「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」
「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」
えっと……?
なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう?
※ただ主人公が愛でられる物語です
※シリアスたまにあり
※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です
※ど素人作品です、温かい目で見てください
どうぞよろしくお願いします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
追い出された万能職に新しい人生が始まりました
東堂大稀(旧:To-do)
ファンタジー
「お前、クビな」
その一言で『万能職』の青年ロアは勇者パーティーから追い出された。
『万能職』は冒険者の最底辺職だ。
冒険者ギルドの区分では『万能職』と耳触りのいい呼び方をされているが、めったにそんな呼び方をしてもらえない職業だった。
『雑用係』『運び屋』『なんでも屋』『小間使い』『見習い』。
口汚い者たちなど『寄生虫」と呼んだり、あえて『万能様』と皮肉を効かせて呼んでいた。
要するにパーティーの戦闘以外の仕事をなんでもこなす、雑用専門の最下級職だった。
その底辺職を7年も勤めた彼は、追い出されたことによって新しい人生を始める……。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。
黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。
そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。
しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの?
優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、
冒険者家業で地力を付けながら、
訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。
勇者ではありません。
召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。
でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる