THE HELLISH THINGS 地獄の蓋と泣き虫姫之物語

しきもとえいき

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第三章 蠢くもの達

蠢く者達

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 湯の町から少し離れた寂れた神社の跡地に、雰囲気の妖しい集団が蠢いていた。
 皆、黒い頭巾に黒装束、顔は巫術を施した顔隠しで覆い、手に手に青銅の鏡や念珠、金剛杵などの呪具を武具のように携えている。
 その中の首領格らしき男が、布越しにすら輝く金色の瞳鈍く光らせながら、強い殺気を裡に抑えつつ宣言した。

「今宵が千載一遇の機会。赤く染まる満月と凶の徴が重なる今宵こそ、あの鬼門を開くのにうってつけよ。中央幕府の愚か者共に誰が真の主なのかを思い出させてくれる。皆、抜かり無いな」

 声を上げず頷く異様な集団の中で、一人異質な男が居た。

「それなんやけど、一つあるんや」

 赤茶色の烏帽子に青い水干、奴袴も烏帽子と同じ設えの赤茶色の西の都の貴人風な男が口を開いた。
血の気の無い青白い肌に、紅をさしたかのような赤い唇にぬれた瞳。女かと見紛う美しい男である。

「あそこの鬼門封じを抜いたら、それこそただの民草にもようさん死人が出てしまうけど、それはどないなん? 宜しいん? あれ出したら元には戻せへんよ?」

「先程やれと申したはず。陰陽寮のものだからとて、二の句を告げる事は許さん。良いな」

 首領格の男から怒気と殺意が相まって鬼気を孕んだ風と化し、貴人風の優男に吹き付ける。
 隣に立っていた黒装束の男は其の風にあたって、自らの首を抑えて苦しそうにもがいたかと思うと、たちまちに額から角を生やし、黒装束を破いて急激に大きく、鬼となり果てた。
 ぐおぉぉっ。
 鬼と化した男が大きく咆哮した。
 その刹那、黒い線が宙を舞い、鬼の首が刎ねられ躰ごと寸刻みに肉塊となって、地に積みあがる。

「力弱き、使えぬものは要らん。貴様はどうだ? 術師よ」

「おお、怖っ。念の為の確認ですやん。そないに睨まんといて」

 扇を口に当て、指を突き出し軽い口調でいなしている。
 どことなく楽しそうなこの若い男も、矢張り普通ではない。
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