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第一章 天に真の武有り
七神流の後始末
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「……月女様も扱いが酷い。姫様が大事だからって、俺一人だけは無いでしょうよ。牛馬ですらもう少し扱いが良いぞ。せめて、後二人位はつけて欲しい処なのに……苦労するよね……これ」
ぶつくさと呟いている薬売りの眼前には、屹立した岩壁に組み込まれた鋼鉄の城門と、その脇にある石造りの砲台から覗く砲門が左右に四つもある山城があった。
「たかが、山賊がここまでの出城作れるわけないじゃない。子供でも分かるでしょ。こんなの……」
鋼鉄の鉄城門の上にある物見櫓から人が動く気配がある。
見つかってもいいとは思いながら歩いてはきたのだが、目立たぬようには来たつもりである。
「へえ、少しはやるのかな? 見つけられるなんて。少しばかりやる気も出てきた」
薬売りのふてくされたような顔に笑顔が戻る。
「よし、張り切って行こう。どうもーこんにちはー。薬売りですがー。人でなしの緋炎袴組の皆さん、襲って殺してがお忙しくて仕方が無いでしょう。化物や悪党に良く効く七神印のお薬を押し売りに参りました」
大声で周りに聞こえよがしに笑顔で伝える。
「ああ、勝手に押し入らせて頂きますので、お構いなく。あと精一杯抵抗してくれたりすると嬉しいです」
薬売りはそう言うと、胸に手を当てて低く静かに、
「銀鈴凌王、眼前の敵を駆逐せよ」
と、呟いてニヤリと笑い、背中の行李をポンと叩いた。
峠の茶屋の騒ぎから一刻の後、旅の薬売りから、山賊らしき奴等が山火事を起こしているとの報を受け、おっとり刀で駆け付けた代官所の役人たちは眼を剥いた。
燃えていたのは泣くに泣かれぬ指しに指されぬ緋炎袴組の根城であった。
火はすでに消えていて残った煙が辺りを燻している。
探索調べ方の山之辺誠二郎は信じられなかった。
重ね合わせの重厚な鉄門が袈裟懸けに綺麗に斬られていて半分がない。
堅牢な南蛮風の石造りの建屋も打ち砕かれていたり、切り取られていたりするところが随所に見える。
厄介な備えであった炸薬付の連弩に大砲は、備付用の石造りの砲台ごと真っ二つになっていた。
もともとこの根城は緋炎袴組の頭目の一人で、取り潰しにあった藩の凄腕の元軍師が縄張りして作った山城であり要塞である。
その要塞の中に、世を拗ね中央幕府を恨む腕に覚えのある浪人たちが、どこから聞きつけたのかこぞって集まり、野盗山賊の類を飲み込み、一大軍団を形成していたのだからたまらない。
しかも、何処から手に入れたのかはわからないが、神武装術の神武装具を振り回せる者共まで集い、手の付けられない一団となっていた。
代官所では最早対応できず、中央幕府直轄の軍奉行を兼ねる郡代官に援軍を頼み、ただただ傍観するしかなかった。
つまり見て見ぬふりをしていたのだった。結果好き放題にされていたのだ。
誰が、どのような軍勢がここを攻めたのだろう。どう攻めればこんなことになるのか。
山之辺誠二郎は、惨憺たる有様をつぶさに見てそう思った。
緋炎袴組の命あるものは皆一言も発せず、縛られてうなだれていた。
歯の根が合わぬほどに震えている者もいる。捕り方が恐る恐る近づいても、暴れるどころか逃げ出そうとするもの すら誰もいない。
与力同心達が不思議がる中、岡っ引きが城の奥から息せき切ってやってきた。右手には何やら紙をもっている。
紙を広げて皆「あぁそういうことか」と得心顔になり、誠二郎もそれを見ておぉと声を出してしまった。
紙には大きく『七』とだけ書いてある。
この文字だけ見れば、誰も文句は言わないだろう。
ぶつくさと呟いている薬売りの眼前には、屹立した岩壁に組み込まれた鋼鉄の城門と、その脇にある石造りの砲台から覗く砲門が左右に四つもある山城があった。
「たかが、山賊がここまでの出城作れるわけないじゃない。子供でも分かるでしょ。こんなの……」
鋼鉄の鉄城門の上にある物見櫓から人が動く気配がある。
見つかってもいいとは思いながら歩いてはきたのだが、目立たぬようには来たつもりである。
「へえ、少しはやるのかな? 見つけられるなんて。少しばかりやる気も出てきた」
薬売りのふてくされたような顔に笑顔が戻る。
「よし、張り切って行こう。どうもーこんにちはー。薬売りですがー。人でなしの緋炎袴組の皆さん、襲って殺してがお忙しくて仕方が無いでしょう。化物や悪党に良く効く七神印のお薬を押し売りに参りました」
大声で周りに聞こえよがしに笑顔で伝える。
「ああ、勝手に押し入らせて頂きますので、お構いなく。あと精一杯抵抗してくれたりすると嬉しいです」
薬売りはそう言うと、胸に手を当てて低く静かに、
「銀鈴凌王、眼前の敵を駆逐せよ」
と、呟いてニヤリと笑い、背中の行李をポンと叩いた。
峠の茶屋の騒ぎから一刻の後、旅の薬売りから、山賊らしき奴等が山火事を起こしているとの報を受け、おっとり刀で駆け付けた代官所の役人たちは眼を剥いた。
燃えていたのは泣くに泣かれぬ指しに指されぬ緋炎袴組の根城であった。
火はすでに消えていて残った煙が辺りを燻している。
探索調べ方の山之辺誠二郎は信じられなかった。
重ね合わせの重厚な鉄門が袈裟懸けに綺麗に斬られていて半分がない。
堅牢な南蛮風の石造りの建屋も打ち砕かれていたり、切り取られていたりするところが随所に見える。
厄介な備えであった炸薬付の連弩に大砲は、備付用の石造りの砲台ごと真っ二つになっていた。
もともとこの根城は緋炎袴組の頭目の一人で、取り潰しにあった藩の凄腕の元軍師が縄張りして作った山城であり要塞である。
その要塞の中に、世を拗ね中央幕府を恨む腕に覚えのある浪人たちが、どこから聞きつけたのかこぞって集まり、野盗山賊の類を飲み込み、一大軍団を形成していたのだからたまらない。
しかも、何処から手に入れたのかはわからないが、神武装術の神武装具を振り回せる者共まで集い、手の付けられない一団となっていた。
代官所では最早対応できず、中央幕府直轄の軍奉行を兼ねる郡代官に援軍を頼み、ただただ傍観するしかなかった。
つまり見て見ぬふりをしていたのだった。結果好き放題にされていたのだ。
誰が、どのような軍勢がここを攻めたのだろう。どう攻めればこんなことになるのか。
山之辺誠二郎は、惨憺たる有様をつぶさに見てそう思った。
緋炎袴組の命あるものは皆一言も発せず、縛られてうなだれていた。
歯の根が合わぬほどに震えている者もいる。捕り方が恐る恐る近づいても、暴れるどころか逃げ出そうとするもの すら誰もいない。
与力同心達が不思議がる中、岡っ引きが城の奥から息せき切ってやってきた。右手には何やら紙をもっている。
紙を広げて皆「あぁそういうことか」と得心顔になり、誠二郎もそれを見ておぉと声を出してしまった。
紙には大きく『七』とだけ書いてある。
この文字だけ見れば、誰も文句は言わないだろう。
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