死神になった理由

文月 ソラ

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第一章

絶望と決意

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人の焼ける嫌な匂い、どこからともなく聴こえてくる助けを求める声、ボロボロになった家屋。そんな中、僕は家に向かって走っていた。ただ両親の無事を願って…。

2666年 世界中を舞台とした第三次世界対戦が始まった。第一次や第二次とは違い大国から小国までの世界中の国が争い始めた。もちろん、僕が住んでいる日本もその国のうちの一つだ。理由は石油の消失だ。人類は石油を使い続けた結果、世界から石油がほとんどなくなってしまった。残りわずかな石油を求め各国がぶつかり合い、ついに戦争が始まってしまった。小国のほとんどは飲み込まれてしまい、現在残っている国は、アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、ドイツ、カナダ、オーストラリア、北朝鮮、中国、そして日本である。
この中で一番脆く早くなくなると言われているのがこの日本である。2536年、日本は軍事力を持つことを世界に認めさせ、軍事国家としてよみがえった。しかし徴兵を無理強いされることは無く、あくまで自主性を尊重している。最初は誰かがやってくれる、自分は関係ないと思っていた者が多かった。しかし、開戦後、日本に初めて空襲が起きたとき人々は認識し直した。これは自分がやらなければ殺られると。その後日本は兵の数を増やし科学を進歩させなんとか今まで残っていた。
しかし今回ばかりはダメかもしれない。なぜなら次の世界の標的はどう見ても日本になるからだ。核兵器も少なく人口も一番少ない。こんな獲物を食わないほど世界は優しくはない。そして今日、日本に中国が攻めてきたのだ。
不幸にも僕が住んでいる町が対象になったようで、友人と県外に遊びに行っていて帰ってきたらこの有り様。父は強く賢い、母もここぞというときにとても心強い人だ。だから大丈夫…絶対、大丈夫。と自分に言い聞かせてひたすら家に向かって走った。しかし、現実とは無慈悲である。僕はその光景が目に写ったその瞬間絶望のどん底に叩き落とされた。そこには家だったもの、その下に母をかばうようにして父が伏せていた。しかし頭にはくっきりと無数の銃弾の後が残っており、周りは血の海と化していた。発狂しそうになった。目の前が赤く染まっていく。あの父と母が死んだ。その事に頭が理解しようとし、体が拒否している。何故こうなった。どうして両親が死ななければならない。何故僕は…生きているの。疑問が次々浮かぶなか一つの答えにたどり着いた。「戦争」。そうだ、戦争などが起きているからだ。そのせいで僕は今、両親を亡くし見たことも聞いたこともない誰かを憎んでいる。おかしいじゃないか。相手が戦争を起こしたわけでもない。なのに、憎い。苦しい。悲しい。こんな世界「おかしい」。どうすればこんな思いをしなくてすむのか。
(…そうか。そうだ。簡単だ。僕を、僕だけを憎めさせればいいんだ。そうすれば僕が消えるだけで平和になる。)僕がどうなろうと構わない。もともとあまり生にしがみつくつもりはない。僕は人が嫌いだ。特に大人が嫌いだ。歳が上なだけで偉そうに僕らのことを否定する。なんの権限があるのかと聞けば大人のいうことは間違いないだの、長く生きてきた経験だのもっともらしいことを言ってくる。僕らのためになるようなことを教えてくれるのはほんの一握りの人だ。だから、大人がどうなろうがどうでもいい。でも…でも、僕と同じように苦しむ子は作りたくない。誰ともわからない一兵士を憎み、その人が不幸になっていてほしいと願うことがないように。誰が殺し、誰を憎み、死を望むか。そしてその相手が死ぬことによってその子達は解放される。だから、僕がその役をすればいい。きっとできる、だって僕は…天才なのだから。
僕は自分は天才だと思っている。なぜなら僕は八歳の少女でありながら、IQ400、百メートルを五秒で走り、垂直跳びは二メートルまで跳べる。空手、柔道共に黒帯を持ち、ボクシングではプロ相手に圧勝。剣道等も同等まで腕をあげている。しかし、今までは真剣に生きてこなかった。明確に今、この瞬間、僕は初めて僕の人生で本気を出す。そうすればきっと、世界を変えられる。そのために要らないものは捨てる。そう思った瞬間、僕の周りには灰色に染まった色のない世界がひろがった。
まず、軍に入隊しなければ。そう思い市役所に向けて歩き始めようとしたとき、
「一人でどこに行くんだ。」
「今度はなにするの。」
「どうせろくでもないことするんだろ。」
「お前についていけるのは俺たちぐらいだからな。」
(…なんで、居るんだよ。)
目の前には4人の友人がいた。
もう一度言おう。僕は人が嫌いだ。しかしそこにはもちろん例外がある。両親、そしてこの4人だ。ことあるごとに天才と呼ばれてきた僕だがこの4人相手ではかなり分が悪い。なぜならそれぞれがある分野の天才だからだ。
1人目はシキ。とにかく頭がいい。なんせIQ420、オセロや将棋でも一度も勝てたことがない。しかも相手もてを抜いている状態で。本気を出しても勝てるかどうか五分五分といえる相手だ。それゆえに時々抜けているところがあるのが残念である。
2人目はテン。運動神経の塊だ。百メートルを4秒で走るわ垂直跳びで三メートル飛ぶわで規格外である。空手、柔道共に黒帯だが剣道ではなくテコンドーをしている。言わずもがな僕より強い。その分と言っていいのかとても破天荒で対応がしにくいときがある。
3人目はアル。何か一つのことをこなせるのではなく僕と同じオールラウンダーだ。だが僕の一歩後ろを行くような感じで僕に何かで勝てたことは一度もない。だが少し読みにくいところがあり底が知れない。4人の中で一番頼れるやつである。
4人目はリク。才能と言えるかわからないがとりあえず力が強い。片手で車を持ち上げたり、船を引っ張ったりとこちらも規格外である。そのため脳筋でとてつもなくうざいナルシストだ。
シキ、テン、アルは一つ上の9歳、リクは二つ上の10歳の少年だ。何でもイケメンの分類だそうだが顔などに興味はない。四人の話では僕も美少女らしいがそれが何?という感じだ。学力はシキ、僕、アル、テン、リク。運動はテン、僕、アル、シキとリク。力はリク、テン、シキ、僕とアル。というような順位だ。だが他のことで劣っているのではなくあくまで一番得意なものがそれぞれにあるということだ。得意でないことも凡人では太刀打ちできないほどできる。秀才とでもいうところか。
そして、この四人は僕のかけがえのない存在だ。年下としてバカにせず、僕を遊びに誘うときも無理強いはしなかった。それが、僕にとっては救いだった。だからこそ、失いたくない。
「どうせ巻き込みたくないだのなんだの考えてるんだろ。」まるで心を読んだかのようにアルが言った。「俺たち友達だろ?だからお前を止めるためについていく。」シキが続けて言う。「お前が感情をなくす前に俺たちが止める。それだけだ。」テンが続く。「戦場に行くことには何も心配してねーよ。」最後にリクが「お前が暴走したら周りのやつがかわいそうだからな。」と締めくくった。「まるで僕が必ず暴走するような言い方だな。…まぁ、好きにしろ。僕には拒む理由もない。」正直、ありがたかった。この四人がいてくれれば何よりも心強い。(たとえ最終的僕が死ぬつもりだと言えば君たちはなんていうのかな。)想像し少し苦笑いをした。こうして僕は破滅の道へ一歩踏み出した。四人の友人と共に。
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