44 / 52
41話《とんでもないことになってしまいました><》
しおりを挟む
「──。」
白い空間だった。
ひとりきり。
もう、誰も居ない場所。
でも……ここが、りょうと俺。
ふたりで、一緒に、帰る場所だ。
『チカラを籠めたら開いた扉の中へ自動的に遷移するからぁ゙。出口以外データがなにもない空間だから真っ白だけど、その分りょうくんは見つけやすいはずぅ゙。会えたらふたりで『祝福』のチカラを使って。そしたら扉が開くから、帰れる゙よぉ゙~……』
……ノアくんの説明はこんな感じ。
とにかくりょうと会って祝福のチカラを使う。そうしたら帰れる。ミッションはシンプルでわかりやすい。
それならすぐにりょうを探しに行かないと。
俺は辺りを見回して、適当に周囲を走り始める。
「え……!?」
……でも俺のミッションは、すぐに最悪の形で頓挫してしまうことになった。
俺が見つけたりょうは。
矢來麻りょうは。
ぐったりと倒れ込んで……意識を失っていたからだ。
「え?りょう!?りょう……っ!?」
やっと会えた。
やっと……エターニアまで訪れて、大好きなりょうに再会できた。
それなのに……そのはずなのに。
いつも呆れるくらいに元気なりょうは、地面に横たわったままぴくりとも動かない。
「ちょっと……りょう!りょおっ!?死んじゃったの!?嘘だよね!?」
近づいても、大声を出しても、なにも反応がない。
もうそれだけで涙が滲んで。だけど下手に動かしてりょうがもっと悪い状態になるほうが怖かったから、そっとその身体を仰向けにして、心臓に耳を近づける。
もしなにも聞こえなかったらどうしよう。
俺はその現実を受け入れられるんだろうか。
そう思いながら、りょうの胸へ耳を押しつけた。
──とく、とく、とく。
……鼓膜に響く心臓の音。
穏やかに、一定のリズムで聴こえてくるいのちの証に、俺は目から自然と涙が流れるのを感じる。
「あ゙……ぃ、いきてる゙……ッ」
生きてる。
りょうは……生きてる!
良かった。良かった……っ!!
「うぅ゙……ッ、でも、なんで……ッ」
そうだ。でもなんで、こんな場所に倒れてるんだろう?身体はあったかいけど顔色がものすごく悪くて、どう見ても具合が悪そうだ。トラブルがあったって言ってたし、転移するときなにか事故でもあったのかな……!?
『──はじめちゃん!』
そのとき、頭上からどこからともなく声が響いてくる。
この声は──しゃんちゃん!!
「しゃんちゃん!?どうしたの!?」
『りょうちゃんのチカラがいきなり弱くなったのを感知して、慌ててアクセスしてきたの!大丈夫っ?><』
こ……これが本当の、天の声!
まさかしゃんちゃんが来てくれるなんて。百人力だ!元々しゃんちゃんが作った場所って言ってたし、こうやって声を届けられるんだな。すごい!
でも今は感動してる場合じゃない。本当に緊急事態なんだ!!
「ぜ……ぜんぜん大丈夫じゃない!りょうが、意識を失くしてるんだ!」
『えっ……!!!!!><』
俺が伝えた現状に、明らかに言葉を失って絶句した様子のしゃんちゃん。さすがにここまでのことは想定してなかったのかな。今までも想定外続きだったはずだけど、最後に来てまでこんな事故が起こっちゃうなんて、ちょっとかわいそうだ。
『は、はじめちゃんは?大丈夫なの?><』
「うん、俺はなんともないよ!でもりょうはすごく具合が悪そうで……顔色が真っ白なんだ……!」
『あっ……!それ……もしかしたら、元素術の使いすぎかも……!><』
「えっ!元素術の!」
『そう>< ゲーム内でも、元素術のチカラを使用すると身体に負担が掛かる、って設定があるでしょ?『祝福』のチカラのおかげで『来訪者』はそこまで負荷がない設定もあるけど……りょうちゃん、修練はちゃんとしてなかったし、あんまり適正もなかったみたいだから……><』
「な……っ」
た、確かに賢者さん達はりょうの能力をあんまり褒めてなかったけど……本当にそうだったの!?てっきり俺、エターニアジョークだと思ってた……。
『それに、りょうちゃんはマナくん相手にかなりチカラを使っちゃってたみたいだから……自分で気づかない内に、身体に限界が来ちゃったのかも><』
「そ……そんな……それって大丈夫なの?こ、このまま衰弱しちゃったり……」
『それは大丈夫>< 負荷は一時的なもので、休んでいれば回復するものだからっ』
「そうなんだ……よかった!それなら……!」
『ただ、元素術の反動は回復が遅くて……>< 少なくとも一日は回復に時間が必要だから、りょうちゃんを目覚めさせてあげないと、扉が開かないハズ……><』
「な!扉が開かない!?どっ、どうしてそんな仕様にッ」
『またなにかあってキャラちゃん達がこっちに入り込んで現実へのトリップが起こったらタイヘンだったから、はじめちゃんとりょうちゃんの『祝福』のチカラを合わせないとダメな仕様にしたの>< 鍵みたいなモノっていうか……』
「な、なるほど。しゃんちゃんなりのセキュリティだったんだね」
『ごめんね……>< まさかりょうちゃんがこんなことになるなんて思わなくて……』
「いや、それはしゃんちゃんもわからなかったんだからしょうがないよ!」
うん。それは、しょうがない。
しゃんちゃんだってりょうの行動はコントロールできないし、これまでのことを考えたら安全策をとるのは当然だ。しょうがない……それは、そうなんだけど……でも、それなら……どうしよう?
「すぐに目覚めさせるには、どうするのがいいのかな。乱暴な手段で起こしたくはないんだけど……」
『可能性があるのは──やっぱり、『元素間契約』のしるしかなぁ><』
「えっ?げ……元素間契約?」
元素間契約……。
そ、それって……。
も、もしかして……??
『うん──本来は賢者ちゃんと『来訪者』ちゃんの間で行わる、元素を贈る契約──』
「つ、つまりは……?」
『つまりは……チューですっ><』
「ち、ち、ち、チュー!!!!!!!!!!!!」
わかっていたけど、そうだと思っていたけど、やっぱり……。
──とんでもないことになってしまった!!!!!!!!!!
【TIPS】
・開発者は性的指向であるアセクシュアル(他者に性的感情を抱かない)を公表しており、インタビューでも自身の指向がゲーム制作の起点になったと明言している。
しかし性愛そのものやフィクトセクシャルを否定する気持ちはなく、二次創作やファンアートに関しては性的描写も歓迎している。(本人の閲覧はまちまちらしい。)
白い空間だった。
ひとりきり。
もう、誰も居ない場所。
でも……ここが、りょうと俺。
ふたりで、一緒に、帰る場所だ。
『チカラを籠めたら開いた扉の中へ自動的に遷移するからぁ゙。出口以外データがなにもない空間だから真っ白だけど、その分りょうくんは見つけやすいはずぅ゙。会えたらふたりで『祝福』のチカラを使って。そしたら扉が開くから、帰れる゙よぉ゙~……』
……ノアくんの説明はこんな感じ。
とにかくりょうと会って祝福のチカラを使う。そうしたら帰れる。ミッションはシンプルでわかりやすい。
それならすぐにりょうを探しに行かないと。
俺は辺りを見回して、適当に周囲を走り始める。
「え……!?」
……でも俺のミッションは、すぐに最悪の形で頓挫してしまうことになった。
俺が見つけたりょうは。
矢來麻りょうは。
ぐったりと倒れ込んで……意識を失っていたからだ。
「え?りょう!?りょう……っ!?」
やっと会えた。
やっと……エターニアまで訪れて、大好きなりょうに再会できた。
それなのに……そのはずなのに。
いつも呆れるくらいに元気なりょうは、地面に横たわったままぴくりとも動かない。
「ちょっと……りょう!りょおっ!?死んじゃったの!?嘘だよね!?」
近づいても、大声を出しても、なにも反応がない。
もうそれだけで涙が滲んで。だけど下手に動かしてりょうがもっと悪い状態になるほうが怖かったから、そっとその身体を仰向けにして、心臓に耳を近づける。
もしなにも聞こえなかったらどうしよう。
俺はその現実を受け入れられるんだろうか。
そう思いながら、りょうの胸へ耳を押しつけた。
──とく、とく、とく。
……鼓膜に響く心臓の音。
穏やかに、一定のリズムで聴こえてくるいのちの証に、俺は目から自然と涙が流れるのを感じる。
「あ゙……ぃ、いきてる゙……ッ」
生きてる。
りょうは……生きてる!
良かった。良かった……っ!!
「うぅ゙……ッ、でも、なんで……ッ」
そうだ。でもなんで、こんな場所に倒れてるんだろう?身体はあったかいけど顔色がものすごく悪くて、どう見ても具合が悪そうだ。トラブルがあったって言ってたし、転移するときなにか事故でもあったのかな……!?
『──はじめちゃん!』
そのとき、頭上からどこからともなく声が響いてくる。
この声は──しゃんちゃん!!
「しゃんちゃん!?どうしたの!?」
『りょうちゃんのチカラがいきなり弱くなったのを感知して、慌ててアクセスしてきたの!大丈夫っ?><』
こ……これが本当の、天の声!
まさかしゃんちゃんが来てくれるなんて。百人力だ!元々しゃんちゃんが作った場所って言ってたし、こうやって声を届けられるんだな。すごい!
でも今は感動してる場合じゃない。本当に緊急事態なんだ!!
「ぜ……ぜんぜん大丈夫じゃない!りょうが、意識を失くしてるんだ!」
『えっ……!!!!!><』
俺が伝えた現状に、明らかに言葉を失って絶句した様子のしゃんちゃん。さすがにここまでのことは想定してなかったのかな。今までも想定外続きだったはずだけど、最後に来てまでこんな事故が起こっちゃうなんて、ちょっとかわいそうだ。
『は、はじめちゃんは?大丈夫なの?><』
「うん、俺はなんともないよ!でもりょうはすごく具合が悪そうで……顔色が真っ白なんだ……!」
『あっ……!それ……もしかしたら、元素術の使いすぎかも……!><』
「えっ!元素術の!」
『そう>< ゲーム内でも、元素術のチカラを使用すると身体に負担が掛かる、って設定があるでしょ?『祝福』のチカラのおかげで『来訪者』はそこまで負荷がない設定もあるけど……りょうちゃん、修練はちゃんとしてなかったし、あんまり適正もなかったみたいだから……><』
「な……っ」
た、確かに賢者さん達はりょうの能力をあんまり褒めてなかったけど……本当にそうだったの!?てっきり俺、エターニアジョークだと思ってた……。
『それに、りょうちゃんはマナくん相手にかなりチカラを使っちゃってたみたいだから……自分で気づかない内に、身体に限界が来ちゃったのかも><』
「そ……そんな……それって大丈夫なの?こ、このまま衰弱しちゃったり……」
『それは大丈夫>< 負荷は一時的なもので、休んでいれば回復するものだからっ』
「そうなんだ……よかった!それなら……!」
『ただ、元素術の反動は回復が遅くて……>< 少なくとも一日は回復に時間が必要だから、りょうちゃんを目覚めさせてあげないと、扉が開かないハズ……><』
「な!扉が開かない!?どっ、どうしてそんな仕様にッ」
『またなにかあってキャラちゃん達がこっちに入り込んで現実へのトリップが起こったらタイヘンだったから、はじめちゃんとりょうちゃんの『祝福』のチカラを合わせないとダメな仕様にしたの>< 鍵みたいなモノっていうか……』
「な、なるほど。しゃんちゃんなりのセキュリティだったんだね」
『ごめんね……>< まさかりょうちゃんがこんなことになるなんて思わなくて……』
「いや、それはしゃんちゃんもわからなかったんだからしょうがないよ!」
うん。それは、しょうがない。
しゃんちゃんだってりょうの行動はコントロールできないし、これまでのことを考えたら安全策をとるのは当然だ。しょうがない……それは、そうなんだけど……でも、それなら……どうしよう?
「すぐに目覚めさせるには、どうするのがいいのかな。乱暴な手段で起こしたくはないんだけど……」
『可能性があるのは──やっぱり、『元素間契約』のしるしかなぁ><』
「えっ?げ……元素間契約?」
元素間契約……。
そ、それって……。
も、もしかして……??
『うん──本来は賢者ちゃんと『来訪者』ちゃんの間で行わる、元素を贈る契約──』
「つ、つまりは……?」
『つまりは……チューですっ><』
「ち、ち、ち、チュー!!!!!!!!!!!!」
わかっていたけど、そうだと思っていたけど、やっぱり……。
──とんでもないことになってしまった!!!!!!!!!!
【TIPS】
・開発者は性的指向であるアセクシュアル(他者に性的感情を抱かない)を公表しており、インタビューでも自身の指向がゲーム制作の起点になったと明言している。
しかし性愛そのものやフィクトセクシャルを否定する気持ちはなく、二次創作やファンアートに関しては性的描写も歓迎している。(本人の閲覧はまちまちらしい。)
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~
戸森鈴子 tomori rinco
BL
主人公のアユムは料理や家事が好きな、地味な平凡男子だ。
そんな彼が突然、半年前に異世界に転移した。
そこで出逢った美青年エイシオに助けられ、同居生活をしている。
あまりにモテすぎ、トラブルばかりで、人間不信になっていたエイシオ。
自分に自信が全く無くて、自己肯定感の低いアユム。
エイシオは優しいアユムの料理や家事に癒やされ、アユムもエイシオの包容力で癒やされる。
お互いがかけがえのない存在になっていくが……ある日、エイシオが怪我をして!?
無自覚両片思いのほっこりBL。
前半~当て馬女の出現
後半~もふもふ神を連れたおもしろ珍道中とエイシオの実家話
予想できないクスッと笑える、ほっこりBLです。
サンドイッチ、じゃがいも、トマト、コーヒーなんでもでてきますので許せる方のみお読みください。
アユム視点、エイシオ視点と、交互に視点が変わります。
完結保証!
このお話は、小説家になろう様、エブリスタ様でも掲載中です。
※表紙絵はミドリ/緑虫様(@cklEIJx82utuuqd)からのいただきものです。
【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
魔女の呪いで男を手懐けられるようになってしまった俺
ウミガメ
BL
魔女の呪いで余命が"1年"になってしまった俺。
その代わりに『触れた男を例外なく全員"好き"にさせてしまう』チート能力を得た。
呪いを解くためには男からの"真実の愛"を手に入れなければならない……!?
果たして失った生命を取り戻すことはできるのか……!
男たちとのラブでムフフな冒険が今始まる(?)
~~~~
主人公総攻めのBLです。
一部に性的な表現を含むことがあります。要素を含む場合「★」をつけておりますが、苦手な方はご注意ください。
※この小説は他サイトとの重複掲載をしております。ご了承ください。
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
時々おまけを更新しています。
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について
はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる