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41話《とんでもないことになってしまいました><》

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「──。」

 白い空間だった。
 ひとりきり。
 もう、誰も居ない場所。
 でも……ここが、りょうと俺。
 ふたりで、一緒に、帰る場所だ。

『チカラを籠めたら開いた扉の中へ自動的に遷移するからぁ゙。出口以外データがなにもない空間だから真っ白だけど、その分りょうくんは見つけやすいはずぅ゙。会えたらふたりで『祝福』のチカラを使って。そしたら扉が開くから、帰れる゙よぉ゙~……』

 ……ノアくんの説明はこんな感じ。
 とにかくりょうと会って祝福のチカラを使う。そうしたら帰れる。ミッションはシンプルでわかりやすい。
 それならすぐにりょうを探しに行かないと。
 俺は辺りを見回して、適当に周囲を走り始める。

「え……!?」

 ……でも俺のミッションは、すぐに最悪の形で頓挫してしまうことになった。
 俺が見つけたりょうは。
 矢來麻りょうは。
 ぐったりと倒れ込んで……意識を失っていたからだ。

「え?りょう!?りょう……っ!?」

 やっと会えた。
 やっと……エターニアまで訪れて、大好きなりょうに再会できた。
 それなのに……そのはずなのに。
 いつも呆れるくらいに元気なりょうは、地面に横たわったままぴくりとも動かない。

「ちょっと……りょう!りょおっ!?死んじゃったの!?嘘だよね!?」

 近づいても、大声を出しても、なにも反応がない。
 もうそれだけで涙が滲んで。だけど下手に動かしてりょうがもっと悪い状態になるほうが怖かったから、そっとその身体を仰向けにして、心臓に耳を近づける。
 もしなにも聞こえなかったらどうしよう。
 俺はその現実を受け入れられるんだろうか。
 そう思いながら、りょうの胸へ耳を押しつけた。

 ──とく、とく、とく。

 ……鼓膜に響く心臓の音。
 穏やかに、一定のリズムで聴こえてくるいのちの証に、俺は目から自然と涙が流れるのを感じる。

「あ゙……ぃ、いきてる゙……ッ」

 生きてる。
 りょうは……生きてる!
 良かった。良かった……っ!!

「うぅ゙……ッ、でも、なんで……ッ」

 そうだ。でもなんで、こんな場所に倒れてるんだろう?身体はあったかいけど顔色がものすごく悪くて、どう見ても具合が悪そうだ。トラブルがあったって言ってたし、転移するときなにか事故でもあったのかな……!?
 
『──はじめちゃん!』

 そのとき、頭上からどこからともなく声が響いてくる。
 この声は──しゃんちゃん!!

「しゃんちゃん!?どうしたの!?」
『りょうちゃんのチカラがいきなり弱くなったのを感知して、慌ててアクセスしてきたの!大丈夫っ?><』

 こ……これが本当の、天の声!
 まさかしゃんちゃんが来てくれるなんて。百人力だ!元々しゃんちゃんが作った場所って言ってたし、こうやって声を届けられるんだな。すごい!
 でも今は感動してる場合じゃない。本当に緊急事態なんだ!!

「ぜ……ぜんぜん大丈夫じゃない!りょうが、意識を失くしてるんだ!」
『えっ……!!!!!><』

 俺が伝えた現状に、明らかに言葉を失って絶句した様子のしゃんちゃん。さすがにここまでのことは想定してなかったのかな。今までも想定外続きだったはずだけど、最後に来てまでこんな事故が起こっちゃうなんて、ちょっとかわいそうだ。

『は、はじめちゃんは?大丈夫なの?><』
「うん、俺はなんともないよ!でもりょうはすごく具合が悪そうで……顔色が真っ白なんだ……!」
『あっ……!それ……もしかしたら、元素術の使いすぎかも……!><』
「えっ!元素術の!」
『そう>< ゲーム内でも、元素術のチカラを使用すると身体に負担が掛かる、って設定があるでしょ?『祝福』のチカラのおかげで『来訪者』はそこまで負荷がない設定もあるけど……りょうちゃん、修練はちゃんとしてなかったし、あんまり適正もなかったみたいだから……><』
「な……っ」

 た、確かに賢者さん達はりょうの能力をあんまり褒めてなかったけど……本当にそうだったの!?てっきり俺、エターニアジョークだと思ってた……。

『それに、りょうちゃんはマナくん相手にかなりチカラを使っちゃってたみたいだから……自分で気づかない内に、身体に限界が来ちゃったのかも><』
「そ……そんな……それって大丈夫なの?こ、このまま衰弱しちゃったり……」
『それは大丈夫>< 負荷は一時的なもので、休んでいれば回復するものだからっ』
「そうなんだ……よかった!それなら……!」
『ただ、元素術の反動は回復が遅くて……>< 少なくとも一日は回復に時間が必要だから、りょうちゃんを目覚めさせてあげないと、扉が開かないハズ……><』
「な!扉が開かない!?どっ、どうしてそんな仕様にッ」
『またなにかあってキャラちゃん達がこっちに入り込んで現実へのトリップが起こったらタイヘンだったから、はじめちゃんとりょうちゃんの『祝福』のチカラを合わせないとダメな仕様にしたの>< 鍵みたいなモノっていうか……』
「な、なるほど。しゃんちゃんなりのセキュリティだったんだね」
『ごめんね……>< まさかりょうちゃんがこんなことになるなんて思わなくて……』
「いや、それはしゃんちゃんもわからなかったんだからしょうがないよ!」

 うん。それは、しょうがない。
 しゃんちゃんだってりょうの行動はコントロールできないし、これまでのことを考えたら安全策をとるのは当然だ。しょうがない……それは、そうなんだけど……でも、それなら……どうしよう?

「すぐに目覚めさせるには、どうするのがいいのかな。乱暴な手段で起こしたくはないんだけど……」
『可能性があるのは──やっぱり、『元素間契約』のしるしかなぁ><』
「えっ?げ……元素間契約?」

 元素間契約……。
 そ、それって……。
 も、もしかして……??

『うん──本来は賢者ちゃんと『来訪者』ちゃんの間で行わる、元素を贈る契約──』
「つ、つまりは……?」
『つまりは……チューですっ><』
「ち、ち、ち、チュー!!!!!!!!!!!!」

 わかっていたけど、そうだと思っていたけど、やっぱり……。
 ──とんでもないことになってしまった!!!!!!!!!!


【TIPS】
・開発者は性的指向であるアセクシュアル(他者に性的感情を抱かない)を公表しており、インタビューでも自身の指向がゲーム制作の起点になったと明言している。
 しかし性愛そのものやフィクトセクシャルを否定する気持ちはなく、二次創作やファンアートに関しては性的描写も歓迎している。(本人の閲覧はまちまちらしい。)
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