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28話・前《俺ひとりで……!俺、ひとりで……!》
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「はじめくん、だよねぇ゙~……ッ?」
「ノアくん……?あれっ?蔵書舎は?」
ガジガジと帆立ぬいを齧ったままズカズカとこっちに近づいてくるのは、蔵書舎の司書、ノアくん。こんななにもない辺鄙な場所までわざわざ散歩とは思えないし、俺を探してきたのかな。……一体、どうしたんだろう?
「ちょっと先にこっちに来てほしくてぇ゙~……。だからこのまま蔵書舎へ行ってほしいんだけどぉぉ゙……っ」
「え!?このまま!?」
「ノア、どうした?お前が外に出てくるなんて。問題っつうのは……この世界の異変と関係あるのか?」
突然の、計画変更とも言える命令に驚く俺。いきなりのノアくんの登場は、さすがにサラマンダーさんも予想外だったのか不審に思ったみたいだけど……ドスの効いた質問にまったく怯まず、ノアくんは俺以上に嫌悪感を丸出しにしてサラマンダーさんを睨みつける。
「あぁ゙~ん゙……?君にはカンケーないでしょぉ゙~……?はじめくんは今回のために喚ばれたイレギュラーの『来訪者』ぁ゙……。だから動き方も通常の『来訪者』とは違うワケぇぇ゙~……」
「ほう?そうなのか。俺の助けは必要か?」
「要゙ら゙な゙い゙~……ッ。賢者の助けとか、今回は、マジ、要゙ら゙な゙い゙~……ッ。サラマンダーくんは自分の問題に勝手に集中しててぇ゙~……ッ?」
「ふむ。……そうか」
「だから、はじめくん゙……っ?」
「うわっ」
そこでぐいっと腕から引き寄せられて、右手になにかを握らされる。俺にしか聞こえないような耳打ちで、囁かれる言葉。
「コレ持って、下まで行ってぇ゙~。これは蔵書舎の最奥へと続く『鍵』ぃ゙……くれぐれもひとりで。ぜぇ゙ぇ゙ぇぇ゙ッッッたい。他のやつらは、連れてこないでねぇぇ゙~~……ッ」
「……。」
握られた手を開くと、そこには言葉通り、簡素な鍵があった。それを見つめていると、ノアくんはすぐに俺から離れて、非常に雑な仕草で片手を振る。
「んじゃあ゙。僕はまだキングさまのご命令が残ってるから゙ぁ~……。バイバァーイ゙……ッ」
「あっ……!」
そのまま、すぐに去って行ってしまうノアくん……それだけ今の状況が切羽詰まってるってことなんだろうか。こうやってわざわざどこにいるかもわからない俺の居場所を突き止めて、伝言を残すなんて……。
「おい」
「うわッ!?」
鍵を見つめたままじっと考え込んでいると、突然肩を掴まれる。思わず大声を上げると、俺の肩越しにサラマンダーさんが一緒に鍵を覗き込んでいた。
「それがお前の『仕事』って奴か?」
「え!?あ、そ、そうです。ちょっと、今から、蔵書舎へ行かなくちゃならなくなって……」
「成程な。イレギュラーの『来訪者』。頼まれる仕事もイレギュラーだな」
「そう、みたいです。すみません、俺から話し掛けたのに、こんなことになって……」
話は一応区切りを迎えたけど、ノアくんのあの様子を見るに、エーテルーフくんの元へ行くよりもこっちを優先するべきだろう。サラマンダーさんのことも、り、りょうへのプロポーズも大事、だけど……っ。これはそれこそ、俺にしかできない仕事なんだと思う。「ひとりで向かえ」って、念まで押されちゃったし。
それなら、急ごう。俺はぺこりとサラマンダーさんに頭を下げて、すぐに蔵書舎へ向かう──。
「よし!じゃあ行くか!」
「……。えっ!?」
──でも。
何故かサラマンダーさんは堂々と俺の横に並んで、ニカッと屈託のない笑顔を作る。
「ここでお前と話したのも、出会ったのも縁だろう。それなら俺も同行しようと思ってな」
「えええぇ!?あ、あの、でもっ、そのっ、サラマンダーさんはウンディーネさんの所へ行くんじゃ……!?」
「もしディーネがここに居たら、迷わずお前の仕事を手伝うだろう。俺もそれと同じだけだ。それに……『来訪者』が良くて「賢者」が駄目な場所なんか、この地にはどこにもねぇだろう?」
「ええええ……!?いや、でも……うわ゙ぁ゙!?」
明らかに、さっきのノアくんの言葉に対抗心を見せるサラマンダーさん……!
いやでも、今のエターニアはそれこそイレギュラーだし、ここに来たばっかの俺にはなにが良くてなにが駄目なのか、判断がつきません……!!そう言おうとした俺の言葉は、軽々と俺をお姫様だっこするサラマンダーさんの行動で呆気なく遮られる。ふわりと浮かぶ身体に大きな腕で抱かれる感覚……ひ、ひぃぃっ!これ、まさしく、恋愛シミュレーションゲーム、『エンエレ』だぁ~~~ッ!!!!!
「いいからお前は気にせず運ばれとけ。安心しろ、揺れがないよう努めるからな。俺の力なら、ひとっ飛びだぜ」
「ひっ!ひぃぃぃ……っ!♡♡♡」
そのままおでこにちゅーされてしまった俺は、完全になにも言えなくなってお姫様だっこのままサラマンダーさんに運ばれる。予期せず自分の元にも訪れてしまった、「BLゲームの中にトリップしている」という圧倒的な実感。その想像以上の体験に、俺の頭はすっかり真っ白茹でダコになってしまったのだった。
「ひいいぃぃ……っ♡♡♡エンエレ……サラマンダーさん……おそるべしぃ゙……!♡♡♡」
【TIPS】
・サラマンダーは『来訪者』が受けでも攻めでもあまり反応や態度が変化しないキャラクターのひとり。基本的にはスパダリな攻め仕草を行うが、『来訪者』が攻めの場合ルート終盤になると目に見えて甘えてくるようになる。
「ノアくん……?あれっ?蔵書舎は?」
ガジガジと帆立ぬいを齧ったままズカズカとこっちに近づいてくるのは、蔵書舎の司書、ノアくん。こんななにもない辺鄙な場所までわざわざ散歩とは思えないし、俺を探してきたのかな。……一体、どうしたんだろう?
「ちょっと先にこっちに来てほしくてぇ゙~……。だからこのまま蔵書舎へ行ってほしいんだけどぉぉ゙……っ」
「え!?このまま!?」
「ノア、どうした?お前が外に出てくるなんて。問題っつうのは……この世界の異変と関係あるのか?」
突然の、計画変更とも言える命令に驚く俺。いきなりのノアくんの登場は、さすがにサラマンダーさんも予想外だったのか不審に思ったみたいだけど……ドスの効いた質問にまったく怯まず、ノアくんは俺以上に嫌悪感を丸出しにしてサラマンダーさんを睨みつける。
「あぁ゙~ん゙……?君にはカンケーないでしょぉ゙~……?はじめくんは今回のために喚ばれたイレギュラーの『来訪者』ぁ゙……。だから動き方も通常の『来訪者』とは違うワケぇぇ゙~……」
「ほう?そうなのか。俺の助けは必要か?」
「要゙ら゙な゙い゙~……ッ。賢者の助けとか、今回は、マジ、要゙ら゙な゙い゙~……ッ。サラマンダーくんは自分の問題に勝手に集中しててぇ゙~……ッ?」
「ふむ。……そうか」
「だから、はじめくん゙……っ?」
「うわっ」
そこでぐいっと腕から引き寄せられて、右手になにかを握らされる。俺にしか聞こえないような耳打ちで、囁かれる言葉。
「コレ持って、下まで行ってぇ゙~。これは蔵書舎の最奥へと続く『鍵』ぃ゙……くれぐれもひとりで。ぜぇ゙ぇ゙ぇぇ゙ッッッたい。他のやつらは、連れてこないでねぇぇ゙~~……ッ」
「……。」
握られた手を開くと、そこには言葉通り、簡素な鍵があった。それを見つめていると、ノアくんはすぐに俺から離れて、非常に雑な仕草で片手を振る。
「んじゃあ゙。僕はまだキングさまのご命令が残ってるから゙ぁ~……。バイバァーイ゙……ッ」
「あっ……!」
そのまま、すぐに去って行ってしまうノアくん……それだけ今の状況が切羽詰まってるってことなんだろうか。こうやってわざわざどこにいるかもわからない俺の居場所を突き止めて、伝言を残すなんて……。
「おい」
「うわッ!?」
鍵を見つめたままじっと考え込んでいると、突然肩を掴まれる。思わず大声を上げると、俺の肩越しにサラマンダーさんが一緒に鍵を覗き込んでいた。
「それがお前の『仕事』って奴か?」
「え!?あ、そ、そうです。ちょっと、今から、蔵書舎へ行かなくちゃならなくなって……」
「成程な。イレギュラーの『来訪者』。頼まれる仕事もイレギュラーだな」
「そう、みたいです。すみません、俺から話し掛けたのに、こんなことになって……」
話は一応区切りを迎えたけど、ノアくんのあの様子を見るに、エーテルーフくんの元へ行くよりもこっちを優先するべきだろう。サラマンダーさんのことも、り、りょうへのプロポーズも大事、だけど……っ。これはそれこそ、俺にしかできない仕事なんだと思う。「ひとりで向かえ」って、念まで押されちゃったし。
それなら、急ごう。俺はぺこりとサラマンダーさんに頭を下げて、すぐに蔵書舎へ向かう──。
「よし!じゃあ行くか!」
「……。えっ!?」
──でも。
何故かサラマンダーさんは堂々と俺の横に並んで、ニカッと屈託のない笑顔を作る。
「ここでお前と話したのも、出会ったのも縁だろう。それなら俺も同行しようと思ってな」
「えええぇ!?あ、あの、でもっ、そのっ、サラマンダーさんはウンディーネさんの所へ行くんじゃ……!?」
「もしディーネがここに居たら、迷わずお前の仕事を手伝うだろう。俺もそれと同じだけだ。それに……『来訪者』が良くて「賢者」が駄目な場所なんか、この地にはどこにもねぇだろう?」
「ええええ……!?いや、でも……うわ゙ぁ゙!?」
明らかに、さっきのノアくんの言葉に対抗心を見せるサラマンダーさん……!
いやでも、今のエターニアはそれこそイレギュラーだし、ここに来たばっかの俺にはなにが良くてなにが駄目なのか、判断がつきません……!!そう言おうとした俺の言葉は、軽々と俺をお姫様だっこするサラマンダーさんの行動で呆気なく遮られる。ふわりと浮かぶ身体に大きな腕で抱かれる感覚……ひ、ひぃぃっ!これ、まさしく、恋愛シミュレーションゲーム、『エンエレ』だぁ~~~ッ!!!!!
「いいからお前は気にせず運ばれとけ。安心しろ、揺れがないよう努めるからな。俺の力なら、ひとっ飛びだぜ」
「ひっ!ひぃぃぃ……っ!♡♡♡」
そのままおでこにちゅーされてしまった俺は、完全になにも言えなくなってお姫様だっこのままサラマンダーさんに運ばれる。予期せず自分の元にも訪れてしまった、「BLゲームの中にトリップしている」という圧倒的な実感。その想像以上の体験に、俺の頭はすっかり真っ白茹でダコになってしまったのだった。
「ひいいぃぃ……っ♡♡♡エンエレ……サラマンダーさん……おそるべしぃ゙……!♡♡♡」
【TIPS】
・サラマンダーは『来訪者』が受けでも攻めでもあまり反応や態度が変化しないキャラクターのひとり。基本的にはスパダリな攻め仕草を行うが、『来訪者』が攻めの場合ルート終盤になると目に見えて甘えてくるようになる。
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