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22話・後《りょうのために、頑張ります。》
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「わがまま?わがまま……って?」
『うん……。あーしちゃんはね、できる限りのカタチで、今のエターニアを保存したいって考えてる。リセットする部分を極力なくして、可能なら丸ごと、そのまま……今のエターニアをりょうちゃんのゲームデータとして保存してあげたいって思ってるんだ。りょうちゃんの望みを、できるだけ叶えてあげたいの』
「そ、そんなことできるの?それこそ、あぶないんじゃない?」
『無理なことじゃないと思う。似たようなやり方を……一度、やったことがあるから』
そこで、意味深に目配せをするしゃんちゃんとエーテルーフくん。
……あっ。もしかして。これって。俺の預かり知らないネタバレ案件、かな?
ちょっと様子を窺う俺だけど、続くしゃんちゃんからの「ワガママ」に──俺は言葉を失うことになる。
『それで……そのためにね。さっきテルっちにお願いしたトリップをね。はじめちゃんにも……行ってほしいのっ!><』
「えっ。えっ……えええええええっ!?!?!?」
と……トリップ!?
お……俺がっ!?
エーテルーフくんならともかく……お、お、俺ぇ!?!?
「お、俺!?トリップって……行けるのっ!?!?」
『サルベージしてきたハジメちゃんのゲームデータと同期させれば、がんばれないことはないと思うの>< 元々ゲーム内に『来訪者』はひとりだけど、バグのせいで今は人数が増えても問題がないみたいだから。『来訪者』の『祝福』のチカラはかなりチートめに設定されてるから、はじめちゃんを向こうにトリップさせればテルっちにとってもりょうちゃんにとっても助けになると思うって判断だよ><』
「そ、そうなんだ……」
『それにりょうちゃんがこっちの世界に帰るときも、ふたりのほうが安定するの。今回はテルっちに『リセット』をお願いできないから、あーしちゃんと『祝福』のチカラを主に使うことになる。そのとき『来訪者』がひとりとふたりじゃ、チカラのエネルギーが全然変わっちゃうから……』
「! りょうの、安全……!」
『でもっ。あの世界に行くってことはやっぱり危険も伴うから……もしものときは強制リセットが起きる前にふたりをこっちに戻すって判断をする。それだけは譲れない条件><』
「うむ、そうだな。どうあれ人命が最優先。リスクが伴うのは、事実だろうしな」
「そ、そっか。危険。リスク、か……」
危険。リスク。脅すようなこと言われて、ちょっと怯む。そりゃ、言ってることは俺をちゃんと尊重してくれてる内容だから、嬉しいんだけど。
「でも……俺が行けば、エターニアのことも……りょうのことも……守れるん、だよね?」
『それは、はじめちゃんの行動次第。もちろんあーしちゃんは精一杯フォローするけど、最終的な行動そのものははじめちゃんに任せることになっちゃうから。あーしちゃんはゲーム内そのもので自由に行動するのがむずかしいんだ><』
「うむ。ボクも中に戻ったらエーテルの元に向かわなければならない。キミといつまで行動を共に出来るかは断言出来ないな」
「そ、そっか。誰かに頼らないで、自分ひとりで……行動しなくちゃいけないのか」
知らない土地で。あぶない場所で。ひとりで、行動する。
考えただけで足がすくむ。怖くなる。泣きたくなる。でも……。
「でも……。りょうがトリップしてから、俺はずっとそれを見てるだけだった。ただなにもできないまま、安全な場所で心配してるだけだったんだ。そんな自分が、情けなくて仕方なかった……」
そうだ。この事件が起きてから、俺はずっと傍観者だった。大事な人が知らない場所に飛ばされたのに、ずっと外野のままだった。もしもそれをどうにかできるチャンスがあるなら。俺が自分自身の力で、りょうのために、なにかできることがあるのなら……。
「だから、俺がこの手でりょうを助けられるなら……頑張りたい。だって俺、りょうが好きなんだ。好きな人を、危ない場所にひとりにさせてるなんて……俺、やっぱり、嫌だもんっ!」
『はじめちゃん……><』
「はじめ……!」
『うん……うんっ。そうだよねっ>< りょうちゃんははじめちゃんの大事なひと、だもんねっ><』
俺の返事に、しゃんちゃんはぶんぶんと大げさに頷く。そんなにハッキリ言われると恥ずかしいけど、事実だから仕方ない。
だけどこの反応は、俺の気持ちを前向きに受け取ってくれた証拠だ。顔がぽっぽと火照って、嬉しいのと照れるのでまた泣きたくなってくる。
『本当にありがとう、はじめちゃんっ>< じゃあすぐに準備するねっ>< 待っててねっ><』
「あ、うん。がんばってね!」
だけどすぐに消えてしまうしゃんちゃんに、涙は引っ込んでしまった。代わりに興奮した様子でエーテルーフくんがぐいぐいと俺の服をまた横から引っ張ってくる。
「格好良かったぞ、はじめっ!」
「あっ。あははっ……そう、かな?」
「うむ。危険を省みず、毅然と、勇敢に応える態度……ボクが惚れ直すのも納得の振る舞いだったっ!」
「そ、そう言ってもらえると照れちゃうな……って──えっ!?惚れ直すッ!?」
「当然エターニアジョークだ!だが、ボクも向こうでは出来る限りキミをサポートしよう。約束するぞっ」
「うん。ありがとう!」
な、なんだ、冗談か……!し、心臓に悪い!!
でも──これで。俺も、遂にエターニアへ行っちゃうんだ。
あの場所に、立つことになるんだ。
やっぱり怖いし、不安もあるけど。
でも……これで……やっと。
──りょうに、会いに行けるんだ。
『──うん、だいじょうぶ!いつでもいけるよっ><』
「え!?もう!?は、早い!」
「はじめ。冒険はいつでも唐突で準備不足なモノだぞ」
「そ、そうなの?」
「うむ。だからこそ危険で、魅力的なモノなのだ」
「……。」
それは実際に。エーテルーフくんが、そんな旅をしてきたからなのかな?
俺の知らないエンディングの先を想像させる表情に、エーテルーフくんは自信げに笑う。
「よしッ!それでは。りょうを……そして、エターニアを。救いに行くとするか、『来訪者』!」
「……!うん!行こう、エーテルーフくん!」
【EX‥TIPS】
・「現実からのゲームトリップ」はエーテルーフが現実に存在し、エーテルがエターニアに存在していたが故の超特例措置。基本的には不可能な現象で、当然だが簡単にはゲーム内へトリップできない。
『うん……。あーしちゃんはね、できる限りのカタチで、今のエターニアを保存したいって考えてる。リセットする部分を極力なくして、可能なら丸ごと、そのまま……今のエターニアをりょうちゃんのゲームデータとして保存してあげたいって思ってるんだ。りょうちゃんの望みを、できるだけ叶えてあげたいの』
「そ、そんなことできるの?それこそ、あぶないんじゃない?」
『無理なことじゃないと思う。似たようなやり方を……一度、やったことがあるから』
そこで、意味深に目配せをするしゃんちゃんとエーテルーフくん。
……あっ。もしかして。これって。俺の預かり知らないネタバレ案件、かな?
ちょっと様子を窺う俺だけど、続くしゃんちゃんからの「ワガママ」に──俺は言葉を失うことになる。
『それで……そのためにね。さっきテルっちにお願いしたトリップをね。はじめちゃんにも……行ってほしいのっ!><』
「えっ。えっ……えええええええっ!?!?!?」
と……トリップ!?
お……俺がっ!?
エーテルーフくんならともかく……お、お、俺ぇ!?!?
「お、俺!?トリップって……行けるのっ!?!?」
『サルベージしてきたハジメちゃんのゲームデータと同期させれば、がんばれないことはないと思うの>< 元々ゲーム内に『来訪者』はひとりだけど、バグのせいで今は人数が増えても問題がないみたいだから。『来訪者』の『祝福』のチカラはかなりチートめに設定されてるから、はじめちゃんを向こうにトリップさせればテルっちにとってもりょうちゃんにとっても助けになると思うって判断だよ><』
「そ、そうなんだ……」
『それにりょうちゃんがこっちの世界に帰るときも、ふたりのほうが安定するの。今回はテルっちに『リセット』をお願いできないから、あーしちゃんと『祝福』のチカラを主に使うことになる。そのとき『来訪者』がひとりとふたりじゃ、チカラのエネルギーが全然変わっちゃうから……』
「! りょうの、安全……!」
『でもっ。あの世界に行くってことはやっぱり危険も伴うから……もしものときは強制リセットが起きる前にふたりをこっちに戻すって判断をする。それだけは譲れない条件><』
「うむ、そうだな。どうあれ人命が最優先。リスクが伴うのは、事実だろうしな」
「そ、そっか。危険。リスク、か……」
危険。リスク。脅すようなこと言われて、ちょっと怯む。そりゃ、言ってることは俺をちゃんと尊重してくれてる内容だから、嬉しいんだけど。
「でも……俺が行けば、エターニアのことも……りょうのことも……守れるん、だよね?」
『それは、はじめちゃんの行動次第。もちろんあーしちゃんは精一杯フォローするけど、最終的な行動そのものははじめちゃんに任せることになっちゃうから。あーしちゃんはゲーム内そのもので自由に行動するのがむずかしいんだ><』
「うむ。ボクも中に戻ったらエーテルの元に向かわなければならない。キミといつまで行動を共に出来るかは断言出来ないな」
「そ、そっか。誰かに頼らないで、自分ひとりで……行動しなくちゃいけないのか」
知らない土地で。あぶない場所で。ひとりで、行動する。
考えただけで足がすくむ。怖くなる。泣きたくなる。でも……。
「でも……。りょうがトリップしてから、俺はずっとそれを見てるだけだった。ただなにもできないまま、安全な場所で心配してるだけだったんだ。そんな自分が、情けなくて仕方なかった……」
そうだ。この事件が起きてから、俺はずっと傍観者だった。大事な人が知らない場所に飛ばされたのに、ずっと外野のままだった。もしもそれをどうにかできるチャンスがあるなら。俺が自分自身の力で、りょうのために、なにかできることがあるのなら……。
「だから、俺がこの手でりょうを助けられるなら……頑張りたい。だって俺、りょうが好きなんだ。好きな人を、危ない場所にひとりにさせてるなんて……俺、やっぱり、嫌だもんっ!」
『はじめちゃん……><』
「はじめ……!」
『うん……うんっ。そうだよねっ>< りょうちゃんははじめちゃんの大事なひと、だもんねっ><』
俺の返事に、しゃんちゃんはぶんぶんと大げさに頷く。そんなにハッキリ言われると恥ずかしいけど、事実だから仕方ない。
だけどこの反応は、俺の気持ちを前向きに受け取ってくれた証拠だ。顔がぽっぽと火照って、嬉しいのと照れるのでまた泣きたくなってくる。
『本当にありがとう、はじめちゃんっ>< じゃあすぐに準備するねっ>< 待っててねっ><』
「あ、うん。がんばってね!」
だけどすぐに消えてしまうしゃんちゃんに、涙は引っ込んでしまった。代わりに興奮した様子でエーテルーフくんがぐいぐいと俺の服をまた横から引っ張ってくる。
「格好良かったぞ、はじめっ!」
「あっ。あははっ……そう、かな?」
「うむ。危険を省みず、毅然と、勇敢に応える態度……ボクが惚れ直すのも納得の振る舞いだったっ!」
「そ、そう言ってもらえると照れちゃうな……って──えっ!?惚れ直すッ!?」
「当然エターニアジョークだ!だが、ボクも向こうでは出来る限りキミをサポートしよう。約束するぞっ」
「うん。ありがとう!」
な、なんだ、冗談か……!し、心臓に悪い!!
でも──これで。俺も、遂にエターニアへ行っちゃうんだ。
あの場所に、立つことになるんだ。
やっぱり怖いし、不安もあるけど。
でも……これで……やっと。
──りょうに、会いに行けるんだ。
『──うん、だいじょうぶ!いつでもいけるよっ><』
「え!?もう!?は、早い!」
「はじめ。冒険はいつでも唐突で準備不足なモノだぞ」
「そ、そうなの?」
「うむ。だからこそ危険で、魅力的なモノなのだ」
「……。」
それは実際に。エーテルーフくんが、そんな旅をしてきたからなのかな?
俺の知らないエンディングの先を想像させる表情に、エーテルーフくんは自信げに笑う。
「よしッ!それでは。りょうを……そして、エターニアを。救いに行くとするか、『来訪者』!」
「……!うん!行こう、エーテルーフくん!」
【EX‥TIPS】
・「現実からのゲームトリップ」はエーテルーフが現実に存在し、エーテルがエターニアに存在していたが故の超特例措置。基本的には不可能な現象で、当然だが簡単にはゲーム内へトリップできない。
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