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16話《俺は呆れられてません!(涙)》

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「今日はオレ?来訪者サマも浮気モノだね」
「まーそうは言いましても。本命は、ウンディーネさんですのでね。」

 などと二枚舌で華麗に嘘を申す俺──矢來麻(やくるま)りょう。
 今日は朝っぱらからノームのエーテル調整に着いてってる。ウンディーネと協力関係を結んでから基本的になんでもあいつと一緒に行動してるけど、そんじゃ怪しまれるからってお小言されて、たまにはこうやって他の賢者たちとも行動してるってワケだ。もしなにかツッコまれたら、こうして「本命」と恋愛シミュレーションの鉄板を言い訳に使うという算段である。なんとパーフェクツな計画。さすが俺。
 エーテルからはあれからも何度かエーテルーフ(と、はじめ)からのメッセージが届いていたが、劇的な進展があるモノではなかった。まぁその度に俺はグスグスして、ウンディーネから慰められていたワケだが。

「てことはオレは二番手?なんか逆にますますムカつく」
「オイオイ、なんでもかんでも恋愛に結びつけんなよ。お前はダチです、ダチ」
「ダチぃ?へー。ふーん。ダチかぁ……」

 俺のダチ発言に、満更でもなさげにニヨニヨするノームくん。まーたノムってる(※すぐ堕ちるの意)よ、この子。チョロすぎてチョロい俺でも心配になる。
 とはいえノームは賢者ん中じゃ一番俺と年も近いし、こういう風に気安いのもあって、ガチで友達って感じで付き合いやすいのも事実。
 実際恋愛ゲーというドレアなワールドへ入って気づいたが、いっくら最高イケメンが恋愛対象ったって、その全員から矢印向けられるっつうのはなかなかどうして正直しんどい。息が詰まるっつーか、恋愛感情が生活のすべてに関わってくると、かなり神経がおすり減る。ぜんいんしゅきしゅき♡み~んなから愛されて困っちゃう♡などとそれこそお花畑に思っていたかったが……現実問題ガチで複数人と恋愛するにはサラマンダー様レベルのメンタルと才能が居るってことに気づいちまった。オイオイ!!!知りたくなかったぞ!!!!ハーレム適性ッ!!!!!
 ゆえに今回ノームは俺の中でガチにダチ枠にするつもりなのだが……この反応だとそれなりに受け入れてくれそうだな。うむ、ありがてぇ。

「ま、確かに最近は大体ウンディーネに金魚のフンだもんな。本命ねぇ。最初はあんなサラマンダーに夢中だったのにさ」
「実際会ってみりゃ理想と違う、みたいのもあるっしょ?サラマンダー様、ちょい情熱的すぎるっつーか」
「でもサラマンダーこそ本命はウンディーネだろ?あれこれ手ぇ出してるけど最後まで行った試しがないし。ホント、デカいの二人でナニやってんだって話」
「……オッ。やっぱ有名な話なん?」
「え?なにが」
「そりゃお前、サラマンダー様とウンディーネのアレコレでしょ」
「有名ってか……見てたら判るだろ。サラマンダーはいっつもちょっかい掛けてるし、ウンディーネはいっつも視線で追ってるし。嫌でもこっちの視界に入ってくんの」
「ほぉ~ん。そっか……賢者側でも察されまくりなんか……ノームにさえも……」
「ちょっと。オレさえってどういうこと?」
「いや、視野セマグランプリなら余裕で一位獲るやん?ノームて」
「取らんし!?オレは天才!史上最年少賢者ッ!術の応用だって完璧なんだからな!?」
「いや、その自分からベラベラ喋っちまうトコも圧倒的小物感つうか……」
「小 物 じ ゃ な い か ら ! !」

 ギャーギャー吠えるトコが更に墓穴を掘ってんな……と遠い目をしながら、やっぱり他の賢者にもバレバレなんだなサラディネは、と実感する。まぁ、それくらいお互いがお互いを意識しっぱなし、ってことなんだろね。ハァ~。いじらしいやら情けねぇやら。

「ま、でも来訪者サマがウンディーネ本命ってコトなら、あいつらも終わりだね。アンタに選ばれたら賢者は絶対来訪者のモノになっちゃうし」
「ま~。それね~。ま~ね~」

 そう、これは『来訪者』と賢者のBLゲーなので、そんな設定も、ある。
 賢者は元素の守護者であると同時に、来訪者の愛を受け入れる立場でもある。元々賢者と来訪者は元素を契約する関係上、距離が近くなることが多い。来訪者は国にとっての『祝福』で、恵みを齎す存在。つまりはそんな相手に「選ばれる」のも、祝福であるワケだ。要する予約制の花婿みたいな感じで、皆はその辺も了承した上で賢者になる。ここは恋愛シミュの業みたいな設定になってて、ちょっとかわいそうでもあるんだよな。

「でもさ、賢者同士で結ばれたパターンとかねーの?来訪者なんていつ来るかもわからん存在じゃん。ここは重婚オッケーなんだし、特例みたいなのもあるんじゃね?」
「それこそ知らんし。オレは別に今賢者と付き合う気はないからさ。まぁ……アンタがどうしてもって言うなら、本命乗り換えされてもオレは別にオッケーだけど?」
「いや、それは断じてねぇから安心しろ」
「即答すんなァ!ふ……フン。まぁ、つまりオレはリョウにとって一番のダチってことだろ?特別なのには変わりないから、それで良いし」
「うーん。お前の前向きさは、大いに学ぶべきところがあるな」
「実力があるんだから前向きなのはトーゼン。いちいち心折れてたら研究なんて出来ないし」
「ほほぉ。じゃあ今回の異変も、原因は突き止めてるんか?」
「異変?……ああ、今回のは結構ヤバいよね。数値も異常、変化も異常。オマケに原因なんか見当もつかない」
「ほーん。なんか賢者同士の接触がどうとか言われてるみてーだが、そこはノームくん的に天才の見解としていかがかね?」
「賢者同士の接触、ねぇ……」
「お……オオッ!」

 教授的な俺との会話を続けつつも、片手間ぐらいの気軽さでノームはエーテルの調整を続けていく。これは自分の属性元素をエーテルに注いでエーエルそのものの均衡を保たせる作業なんだが、ノームは他の賢者と比べてもグンバツに手際がいい。
 他の元素にも適応させた術を持ってるからか微調節もうまくて、正直元素の扱いはダンチと言えた。一見でもそれがシロートの俺にもわかっちまうってことは、ガチでとんでもねぇ実力ってことだろう。

「いや、すげぇな。やっぱ最年少賢者っつう謂われは伊達じゃねぇわ」
「トーゼン。あと、賢者同士の接触?」
「ん?あ、おう。それそれ」
「別に興味はないけど、オレ的には正直いけ好かないよね。だって賢者同士の接触で異変が起こるって、賢者が元素をコントロール出来てないって言われてるのと同じじゃん。それって賢者がナメられてるってことだろ」
「おぉ。シルフとおんなじこと言ってら」
「アッチは経験則の感情論。オレは研究で導いた理論。四大元素は賢者の能力によって、如何ようにも変化するし柔和する。さっきのオレの調整、見たでしょ?」
「お?おお。メチャスムーズだった。他の元素もイイ感じににゅわにゅわしてたぜ」
「そう。然るべき腕と手段で扱えば、どの賢者でも全ての元素を適切に扱ることが出来るワケ」
「おお。つまり……?」
「つまり、「反発」とか「違和」が起きる時点で賢者の実力不足だし、他の賢者がそれをフォローできてないってコト。今回の異変もいろいろ言われてるみたいだけどさ。オレが居るのに賢者が原因とかされんの、メチャクチャ屈辱なんだよね」
「ほぉ~……。さすがにノームくんも賢者のプライドがございますか」
「当たり前でしょ。オレが目指してるのは全ての賢者が全ての元素を自由に扱えるようになることなんだから。まぁ……でも。『記憶者』なら、そんなのフツーにやっちゃうんだろうけどさ」
「ん?記憶者?」
「別に。コッチの話。ほら、これでここは終わり!ダチならこの後オレと修練行っとく?ダチだしキツめにしといてあげるけど?」
「ゲッ、修練……!キツめ……ッ!!」

 ダチダチ連発する、ダチがすっかりお気に入りになったっぽいノームくん。しかしそのあからさまに意地の悪い誘いに、俺は冷や汗を流す。修練は既に俺のトラウマと化していて、なるたけ避けたいイベントであった。もちろんやらなきゃいかんのはわかってるんだが……今日は勘弁、と俺はニンジャのごとくニンニン!と指を組む。

「スマン!今日は俺、これにてドロン!」
「ちょっと……いつまでもサボってるとまたシルフからケツ叩かれるよ?」
「わーってるって!ウンディーネ!ウンディーネとちゃんとやるからッ!」

 そんな言い訳で神殿からそそくさと逃げ出す俺。ノームはあきれた顔をしていたが、俺を追ってくるまではしなかった。
 その足で、俺は蔵書舎へと向かう。最近はここでウンディーネと色々な文献を漁ってこの国の歴史とかアレコレを調べることが多い。協力関係なら、ウンディーネがやってることを手伝うのも大事だもんな。俺もウンディーネが読んでた例の本やらを読み、賢者同士の恋愛に抜け穴がないもんかと俺なりに考えていた。でもノームの言うことがホントだとすりゃ、問題ないように聴こえんだけどな……?
 俺はノアから「あ゙~~~~~」という鳴き声を貰い、前にウンディーネから頼まれていた本をいくつか手にして、トントンと地下に降りていく。そこでは慎ましく座ったウンディーネが、ぱらぱらと本をめくっていた。

「おーい、ウンディーネぇ」
「ああ、リョウ。お疲れ様です。ノームとの時間は恙無く終わりましたか?」
「モチよ。いい感じにダベってきた」
「それはまぁなんと言いますか。サボっているようにしか聞こえない言い方ですね……」
「まぁ……サボったはサボった。なぁウンディーネ、修練をサボるのはそんなにヤバいことかね」
「えっ……貴方、修練を怠っているのですか!?」
「い、いや……だってよ。すげぇ身体しんどいじゃん、アレ。できたら頻繁にはやりたくねぇっつーか……」
「駄目ですよ……!修練をしないと、それこそ術を扱う時の身体負担が著しいものになります。『祝福』の力で幾分はカバーできるとはいえ、そこは個人差がありますから……」

 個人差……。
 既にシルフからはそこを「下手っぴ」だと評されているが、それは話さないほうが良さそうだ。ともかくあんまサボりすぎるのはマジィってことだな……。

「わ、わかった、次からは真面目にやる!だからウンディーネ、手加減してくれ!」
「えっ、私がお相手をするんですか?」
「協力関係だろ~!そこはうまいこと手打ちにしてくれって!ほら!本も持ってきたしよっ!」
「わっ。そ、それは助かりますが……」
「──あらあら、やっぱり賑やかね。そんなに大声を出してたら、またノアからあ゙ーあ゙ー文句言われちゃうわよ?」
「「シルフ……!」」

 んなことをワチャワチャ話していると、そこに颯爽とシルフが現れる。こんなカビ臭い地下でも流れる爽やかな風……噂好きのシルフのことだ、「やっぱり」とか言ってるあたり俺らが最近つるんでるのを聞いて探してきたのかもしれない。

「ど、どうして貴方がここに?」
「あら、私だって蔵書舎はお気に入りの場所よ。ノアはともかく知識を得るには最適な場所だしね」
「それは、そうですが……」
「それに、頑固者さんの態度もお仲間さんの協力でそろそろ柔らかくなったかと思ってね。そこを確認しにきたのよ」
「……」

 明らかにウンディーネのことを示唆し、俺へと目配せをするシルフ。そういえば、ウンディーネのこと最初に焚き付けてきたのはこいつだったな。いろいろ察してるみたいだったし……さっきノームもいろいろ言ってたし。よぉしッ。ちょいと。問答チャンスで、りょうクンがけしかけてみるかッ!

「なーシルフ!俺、聞きたいことがあるッ!」
「うん?リョウくん、なぁに?」
「賢者同士がくっつくのは、やっぱダメなんかっ!?」
「なっ!」

 片手を上げて、生徒くんよろしく質問をする俺に、あんぐりと口を開くウンディーネ。わりかし根幹的内容に切り込まれて、唖然とでもしてるんだろうか。いやでも、こいつにもそろそろ知っておいて貰ったほうがいいと思う。君たちの問題は、既に賢者間ではマストな問題であるということを。
 俺の質問に、わざとらしく手を口に当てるシルフ。

「あら、また大胆な質問ね。ウンディーネが居るけど?」
「いや、むしろソッチのが都合がいい。こいつには現実的な提言が必要だ、シルフ」
「へぇ。仲が良くなったのはそういう理由?ウンディーネ……貴方も誰かを頼るようになったのね」
「様々な理由での必要措置です。今のように出鼻を挫かれることもありますので……っ!」
「ふふっ、じゃじゃ馬のお世話は大変ね。……そうね。リョウくん、先に言っておきたいのは私はもうウンディーネには現実的な提言をしてるってこと。だから貴方の助けを借りれたら、と思っていたの」
「なっ!既にッ!そぉなのか、ウンディーネぇ!」
「……私は私の見解をシルフに伝えただけです。お互いの意見が合わなかっただけの事でしょう」
「なにィ……!?」

 などと言っているがウンディーネの野郎のことだ、例の本を鵜呑みにして突っぱねたに違いない。まさか既にシルフはウンディーネと話をしていたとは……あの口達者なシルフが俺を頼ること自体ちょっとどうかしてる事態だが、それにしたって問題だ。

「あのな、ノームも賢者同士の恋愛は問題なさそなこと言ってたぜ?あいつが言うには賢者はどんな元素も扱えるって。だからそれで異変が出るのは、本人の能力のせいだろって」
「……つまり、リョウは私が未熟だと仰りたいのですね」
「ンナァ!?いや、んなことは言ってねーだろ!?他の賢者のフォローもありゃイケるって言ってたよ!」
「つまり、私の想いのために他の賢者に迷惑を掛けろ、と仰りたいのですね」
「ンニャアァァ!?おいいぃぃ!ああ言やこう言うなァ!」

 さすがにこういう場面じゃ口の回るウンディーネに、俺はダンダン机を叩いてキレ散らかす。そりゃ言ってることはそうかもしんねーが、悪意方面に捉えすぎだろ!?もちっとポジティブに考えられんのかい!?

「へぇ、ノームがそんなこと言ってたの?」
「おう。シルフと意見はほとんど同じだったな。すっげぇ否定的だった。ただシルフのは感情論だけどジブンのはちゃんとした理論だぁ~とか言ってたな」
「あのコ……。でも理詰めで考えるのはノームらしいわね。これまで元素は超自然的なものとして扱われていたけど、最近じゃ研究が進んできて、あのコもその分野で頭角を現した。つまり昔の知識がすべてではないってことよ。それは汲んでもいいんじゃない、ウンディーネ?」
「……確かに、昨今の元素研究で明らかになった事実は多くあります。それらもきちんと把握しなければならないとは思っていますが……」
「そうそう。それにね、そんな話題が出ること自体、ノームもウンディーネを気にしてるって証明よ。あのコもあのコなりに、貴方の助けになりたいって思ってるんじゃないかしら?」
「そうだい!オイウンディーネ、この際だから言うがな。賢者はみ~んなお前らに夢中だぞ!迷惑どころか、はよくっつけとしか思ってねぇぞ!」
「なッ!?」

 ビシリと俺が指差すと、それこそ「いま知りました」と言いたげに顔を赤くするウンディーネ。オイ……この反応、マジで気づいてなかったオチか。これは──イケるっ!畳み掛けるッ!!

「だろ!?シルフ!?」
「……ええ、勿論。禁忌と言われる賢者同士の恋……♡しかもそのふたりは幼い頃に婚姻の約束をし、同時期に賢者となった幼馴染。そんなもの、関心が無いわけないじゃない!」
「なななな、なッ……!わ、私達は見世物ではありませんよ!?」
「それだけ君達の関係はドラマチックってことでしょ。賢者だけじゃなくもっと他の人達にも関心を持たれているかもしれないわよ?」
「ほれほれ!そら見たことか!」
「っ、ッ、っ……!」

 今更ながらの驚愕の事実を伝えられ、言葉も出ない様子のウンディーネ。真っ赤な顔のまま呆然としているその姿に、しかしシルフは柔らかく微笑む。

「それに過去にも賢者同士で愛を育んだ者は居た。補助具や封印具を使って接する間は元素の関わりを抑えたり……そのために賢者を引退した者も、少なからず居たわね」
「なっ。そ、そこまでして……!?」
「だから、障害があるほうが恋は燃え上がるの♡勿論、公に勧められている内容ばかりではなかったけれど……やりようはあるってことよ。つまり、結局はどれだけ覚悟があるかということなんじゃないかしら?」
「か、覚悟……ですか?」
「ええ。自らの想いを肯定し、そこに責任を負う覚悟。……そうね。あれこれ言い訳をして逃げ回ってるようなお子様には、まだその覚悟を持つのは無理ってことなのかしら?」
「おっ、お子様ァ……!」

 優しい笑みはそのまま、グサリとウンディーネを一突きにするシルフ……最早皮肉を通り越して直球の攻撃に、ウンディーネはより一層傷ついた顔をしている。おお……容赦がない……容赦がねぇぜシルフぅ……。

「そこで他人事みたいなお顔をしてるリョウくんもよ?」
「へっ!?俺ぇっ!?」

 しかし、それこそ他人事として耳ホジで右から左へ聞き流していた俺は、突然名指しされて飛び上がるほど驚く。

「そう。君はいつもふざけてるし、なんでも勢いで解決しちゃいそうな所があるけれど、本気を出す時は真剣にならなきゃダメよ。特に恋愛は、あんまり自分勝手に振る舞いすぎていると呆れられちゃうわ」
「あ、あ、呆れ……ッ!?」
「そう。どんなに優しいコでも限度はあるもの。ワガママも甘えるのも、やり過ぎはいけないわ。ほら、リョウくん、調子に乗りやすい所があるから……そういう所、ちょっとサラマンダーに似てるわよね」

 突然向けられる矛先から繰り出される剣先鋭い言葉──に俺は当然のごとくテンパる。なぜならその言葉はあまりにも図星──あまりにも俺に刺さる言葉──だったからである──。

「い、いッ、いやぁッ!!!!そ、そ、そんなことねぇって!?だ、だって、はじめ、優しいしッ!!いや、ちょっと呆れられることはあっけどっ、そ、それも俺なんだって、受け入れてくれてる感じだし……っ!そ、それに!普段は俺がさんざんあいつのお世話してやってんだぞぉ!?!?」
「ん?ハジメくん?」
「あ!──い、いやぁああぁぁぁっ!!!!!」

 ベラベラアホみたいに喋ってから、シルフの反応で墓穴を掘ったことに気づく俺──。
 ばばばばばッ、もう!なんで、いきなり、そういうこと言うんだよぉ!?俺はカンケーないのに、いきなりシルフがヘンなこと言うからうっかり自爆しちまったじゃん!?ていうか、サラマンダー様と俺が似てるってぇ!?!?
 気付けばウンディーネに負けないぐらい顔を真っ赤にしてる俺と、その横でまだ顔を真っ赤にしてるウンディーネ。

「つ、つまり、シルフから見ればリョウも私と似たようなものだと……」
「当然ね。私から見たらウンディーネもリョウくんも余裕でお子様よ。ま、二人共そこが可愛いんだけど♡」
「ぅ、うひっ♡」

 そんな俺達を満足気に見比べて、シルフは俺の額にむちゅっとチューをする。

「でも、可愛いお子様なりに必要な覚悟はあるわ。その大事な時を見誤らないで。お兄さんからのアドバイスよ」

 そう言って、まさしく風のように──颯爽とシルフは地上へと去ってゆく。自分が言うべきことは伝え終わったとでも言うように。
 まだまだ赤い顔のまま、残される俺とウンディーネ……。

「……お子サマだってよ」
「……甘えてますってね」
「……。……わ~ん!俺、そんなヤなやつだったぁ!?」
「それより私は貴方へ感じていた苦手意識に、深く納得してしまいましたよ……」
「いや!?俺!?あんなイケイケでも浮気症でもないからね!?」
「自分勝手で傍若無人で甘えん坊な所は、そっくりですよ」
「ヒーッ!そのサラマンダー様評ッ!ムッカつくぅ~~~~!!!!!」

【TIPS】
・シルフは基本的に誰にでも優しく奉仕的だが、ノアのことはあからさまに嫌っている。本人曰く「圧倒的な敵意を向けられたら応戦するしかない」とのこと。
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