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11話《エンエレには、別バージョンが存在します。》
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「……」
「エーテルーフくん……大丈夫?」
「……うむ、大丈夫だ。多少、ショックではあるが……トリップ現象がボクの存在すべてを現実に到達させたことは、きちんと理解出来た。どうりでボク自身がクリア後の記憶とキミとの出逢いの記憶、両方を保持しているワケだ」
開いた自分の両手を見つめて、確認するように何度かグーパーと動かすエーテルーフくん。改めて実存する自分の身体や感覚を、確かめてでもいるようだ。
同じ動きを繰り返してから、エーテルーフくんは深く息をついて顔を上げる。まっすぐに俺を見る瞳は、毅然と澄んで光っている。
「ハジメ、キミが心配してゲームを起動してくれて良かった。エターニアは、ボクの想像以上に想定と異なる状態になっているようだ」
「ううん、俺こそ状況がちゃんと確認できてよかったよ。でも、そっか。やっぱり……普通とは、違う状況なんだね」
トリップなんて現象が起きている以上そうだとは思っていたけど、エーテルーフくんから言われるとやっぱり説得力がある。そうなんだ……と実感してしまう。
それにしても、エターニアから自分の存在が消えてしまったことにエーテルーフくん自身が落ち込んでなくて良かった。天然でなにをしでかすかわからない所はあるけど……本当に強い子、なんだな。
「しかし、現状を知って不安になったのも事実だ。ボクの不在で、ゲーム内部がどうなっているのかさっぱり判らなくなってしまった」
「それは……そうだね。ゲーム自体もプレイできないわけだし。あっ。これ!「ウンディーネにエーテルーフのことを話した」、だって!すごい、リアタイで情報が更新されてる!え、でも、ウンディーネさんに、エーテルーフくんのことを……?」
「確かリョウは、ウンディーネをライバル視しているのだったな?」
「うん、そのはずなんだけど……なにがあったんだろ?」
まさか、りょうが率先してウンディーネさんと関わっているなんて。
こうやってメモでりょうの行動がわかるのはありがたいけど、なんだか逆にもどかしい。向こうのしていることがわかっても、こっちからはなにもできない。俺がなんの役にも立っていないことを突きつけられるみたいで、居たたまれなくなってくる。
もちろん、ここは現実世界なんだからただの人間の俺がなにもできないのは当然なんだけど。
でも好きな人のピンチになにもできないなんて、片想い者失格だ。片想いに合格も失格もないと思うけど、俺にはりょうを助けたいって想いがある。それをいつまでも無視することは……俺にとっては、辛いことだ。
ああ、なにか、できればいいのに。
りょうになにか……少しでも。
届けられれば、いいのに。
「……む?……──むうぅぅッ!?!?」
「うわ!?び、びっくりしたッ。どうしたの!?」
「は。は。は。は。ハジメッ!!!!!な。な。な。な。なんだ、これはッ!?!?!?」
突然背後で大声を出したエーテルーフくんに俺は驚いて振り返る。
すると──小さな板切れを両手に持ったエーテルーフくんが、驚愕の表情でそれをこちらに向けていた。
「あ……っ」
……それは、俺が買った『エント‥エレメント』のソフト。他機種への移植を記念して生産された──数量限定の、パッケージ版だった。
【TIPS】
・『エント‥エレメント 数量限定パッケージ版』
家庭用ゲーム機への移植を記念して発売されたエン‥エレのパッケージ版。特典としてイラストスチルなどのアートワークや各資料、開発者のインタビューなどを掲載した作品資料集とサウンドトラックCD、そして『開発室』の鍵が付属する。
他、店舗別特典として四賢者とエーテルーフ及びマナ&ノアのアクリルスタンドやノアの所持する帆立のぬいぐるみなどが制作された。
「エーテルーフくん……大丈夫?」
「……うむ、大丈夫だ。多少、ショックではあるが……トリップ現象がボクの存在すべてを現実に到達させたことは、きちんと理解出来た。どうりでボク自身がクリア後の記憶とキミとの出逢いの記憶、両方を保持しているワケだ」
開いた自分の両手を見つめて、確認するように何度かグーパーと動かすエーテルーフくん。改めて実存する自分の身体や感覚を、確かめてでもいるようだ。
同じ動きを繰り返してから、エーテルーフくんは深く息をついて顔を上げる。まっすぐに俺を見る瞳は、毅然と澄んで光っている。
「ハジメ、キミが心配してゲームを起動してくれて良かった。エターニアは、ボクの想像以上に想定と異なる状態になっているようだ」
「ううん、俺こそ状況がちゃんと確認できてよかったよ。でも、そっか。やっぱり……普通とは、違う状況なんだね」
トリップなんて現象が起きている以上そうだとは思っていたけど、エーテルーフくんから言われるとやっぱり説得力がある。そうなんだ……と実感してしまう。
それにしても、エターニアから自分の存在が消えてしまったことにエーテルーフくん自身が落ち込んでなくて良かった。天然でなにをしでかすかわからない所はあるけど……本当に強い子、なんだな。
「しかし、現状を知って不安になったのも事実だ。ボクの不在で、ゲーム内部がどうなっているのかさっぱり判らなくなってしまった」
「それは……そうだね。ゲーム自体もプレイできないわけだし。あっ。これ!「ウンディーネにエーテルーフのことを話した」、だって!すごい、リアタイで情報が更新されてる!え、でも、ウンディーネさんに、エーテルーフくんのことを……?」
「確かリョウは、ウンディーネをライバル視しているのだったな?」
「うん、そのはずなんだけど……なにがあったんだろ?」
まさか、りょうが率先してウンディーネさんと関わっているなんて。
こうやってメモでりょうの行動がわかるのはありがたいけど、なんだか逆にもどかしい。向こうのしていることがわかっても、こっちからはなにもできない。俺がなんの役にも立っていないことを突きつけられるみたいで、居たたまれなくなってくる。
もちろん、ここは現実世界なんだからただの人間の俺がなにもできないのは当然なんだけど。
でも好きな人のピンチになにもできないなんて、片想い者失格だ。片想いに合格も失格もないと思うけど、俺にはりょうを助けたいって想いがある。それをいつまでも無視することは……俺にとっては、辛いことだ。
ああ、なにか、できればいいのに。
りょうになにか……少しでも。
届けられれば、いいのに。
「……む?……──むうぅぅッ!?!?」
「うわ!?び、びっくりしたッ。どうしたの!?」
「は。は。は。は。ハジメッ!!!!!な。な。な。な。なんだ、これはッ!?!?!?」
突然背後で大声を出したエーテルーフくんに俺は驚いて振り返る。
すると──小さな板切れを両手に持ったエーテルーフくんが、驚愕の表情でそれをこちらに向けていた。
「あ……っ」
……それは、俺が買った『エント‥エレメント』のソフト。他機種への移植を記念して生産された──数量限定の、パッケージ版だった。
【TIPS】
・『エント‥エレメント 数量限定パッケージ版』
家庭用ゲーム機への移植を記念して発売されたエン‥エレのパッケージ版。特典としてイラストスチルなどのアートワークや各資料、開発者のインタビューなどを掲載した作品資料集とサウンドトラックCD、そして『開発室』の鍵が付属する。
他、店舗別特典として四賢者とエーテルーフ及びマナ&ノアのアクリルスタンドやノアの所持する帆立のぬいぐるみなどが制作された。
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