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3話《トリップはいつでも突然です。》

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「んん~……っ。」

 結局昨日は夜中まで居座ってしまったりょうを仕方なく泊めてあげて、俺はベッドでもぞもぞとしていた。りょうは結構甘えん坊な所があって、俺にワガママを言ってくることが多い。お金タカられたり奢らされたりみたいな金銭面の要求はぜんぜんないんだけど、こうやって家に泊まられることはしょっちゅうだ。最近じゃ自腹で買った布団セットをうちまで持ち込んで置きっぱなしにして、いつでも寝れるようにしている始末。今日もいそいそとその布団を床に敷いて、我先にとぐーすか寝てしまった。
 俺ももうそんなりょうの行動を諦めて、TVモードから携帯モードに切り替えたゲーム機で、ちょっとだけエンエレの続きをしていた。エーテルーフくんの話を聞いてから先に進めなくなっちゃったから、『来訪者のひとりごとメモ』だけでも見ておこうと思ったんだ。これはお助けモード的なヒントシステムで、フラグや目的が迷子になるとメニューに「!」マークが出て来訪者くんのひとりごととしてヒントを出してくれる。これがかなり優しくて、エンエレプレイヤーはコンプリートの100%クリアまで必ずお世話になる代物らしい。もちろん俺もこれまで数知れずお世話になってきたシステムで、今回も「先にエーテルーフと蔵書舎へ行ってみようかな」という的確なヒントを得ることができた。
 たぶん展開的にこの先に進むと、エーテルーフくんと本格的に一緒に行動するようになるはずだ。このまま進んだら辞め時がなくなると思ったし、折角ならりょうと一緒に楽しみたいと思ったから、その前でゲーム機をスリープして、起きたら再開しようと思って眠りに就いた。
 でもいざ起きたらやっぱりねむい。ねむくてねむくてたまらない。
 自慢じゃないけど、俺はとっても寝起きが悪い。授業中にも爆睡しまくって、りょうに怒られたことがいっぱいある。りょうは普段ヤバい振る舞いや言動をしまくってるけど、生活自体はすごくキッチリしているやつだ。早寝早起きだしご飯も三食欠かさないし、自炊もするし運動だってたくさんする。俺がゲームしてる横でプランクしながら「うおおおおぉ!!!!」とか叫ぶのも日常茶飯事。
 実はわりとまともに見える俺のほうが自堕落だしご飯にも身体にも気を使わなくて、実生活はダメなやつだったりする。そういえばりょうと距離が近くなったのも「二週間ずっと納豆ごはん!おいしい」「死ぬで!!!!」なんて会話をしたのがキッカケだったっけ。次の日にはりょうが彩りも栄養素も完璧なきれいなお弁当を作ってきてくれて、めちゃくちゃ怖かった記憶がある。
 そう考えると、りょう的には俺のことほっとけなかったのかな。いつでも元気が有り余ってるやつだから、お世話相手が欲しかったのかも。普段の言動は俺がお世話してあげてる部分も多いけど、生活そのものは俺のほうがかなりりょうに助けられている。こういう朝にもぞもぞしてる時だってりょうが起こしてくれるし、朝ごはんもトーストとか焼いて、準備してくれるし……。りょうって優しいんだよな。どんなに人のこと雑に扱っても、一度関わった相手は最終的に絶対見放さないで助けようとする律儀さがある。そういう所が、好き。ちゃんと俺のこと考えてくれてるって、行動で伝わってくるんだ。だからそういうりょうが、俺、だいすき……。

「むにゃ……むにゃむにゃ……」

 目を開けることもせずに、布団の中でごろごろする。長い残暑もやっと落ち着いてきて、やっとそれなりの厚さの布団でぬくぬくできる幸せは、こんな寒い朝じゃないと味わえない。大学生の怠惰を全力で貪りながら、俺はむにゃむにゃと微睡みを持て余す。

「むにゃ……むにゃ……」
「む~にゃむにゃ……♪む~にゃむにゃ……♪」
「むにゃ……むにゃ……?」
「むにゃむにゃむ~……♪む~にゃむにゃむ~……♪」
「……んっ。んっ、んんん……っ?」

 ……しかしそこで、謎の「むにゃ」の応酬に俺は違和感を覚える。しかも何故かメロディー仕様。むしろハミング。合唱状態。誰だ、これ?りょうは絶対俺より早起きだし、さすがにあいつだって勝手にベッドに潜り込むような真似はしないはず。まず前提として俺は現在一人暮らし。ねこちゃんもいぬちゃんも飼ってはいない。幽霊だって、たぶん、居ないはず……。それなのに。なぜ。こんな寝言兼歌声が。これは。まるで。誰かが。横に、居るような……っ!

「──あれぇ!?」
「んっ。んぅ……っ?」

 がばりと起き上がって布団を剥ぐ。
 するとそこには。
 横にちょこんと丸まって眠っている──エーテ……ルーフ……くんの姿ぁ!?

「ええええええええええっ、エーテルーフくうぅぅぅううんッ!?」
「むにゃ……いかにも……ボクは、エーテルの守護者にして世界の均衡者、えーてるーふ……。」
「初対面のセリフだぁぁ……っ!ていうか、喋ってる……っ!!なんで!?なんでっ!?どうして、俺の部屋にエーテルーフくんが……っ!?」
「むにゃむにゃ……むむ……っ。むむむむ……──むん!」
「うわぁ!!」

 俺の大絶叫でさすがに眠気も覚めたのか、カッと目を見開いたエーテルーフくんはノーモーションから勢いよく起き上がる。寝起きの悪い俺からすると理想を通り越して末恐ろしいレベルの覚醒っぷりに、俺は驚いてゴロンゴロンとベッドから転がり落ちてしまった。だけどエーテルーフくんはあくまでマイペース。ゲーム内と同じように、周りの状況なんてまったく気にしない。

「──。……。……どこだ?ここは。ボクはこれからハジメとめくるめく愛の旅路に出かける予定があるんだが……」
「んううぅぅ~……っ、ここは現代日本っ!エターニアで言う『来訪者』の地っ!それで、俺が、そのはじめですっ!!」
「げんだい、にほん……来訪者……ハジメ……?」

 ごろり~んとパンダみたいに床に転がったまま俺が雑に説明すると、パチパチとまばたきをしたエーテルーフくん(かわいいぃっ)はのそのそとベッドから降りて躊躇いなく俺の上へ馬乗りになる。
 白い髪に白い肌。オパールや真珠なんかの装飾品が散りばめられた綺麗でゆったりとした白い服を着たエーテルーフくんは、本当に昨日までゲームの中で見てきた姿そのままだ。まっすぐに俺を見つめて、ぐいっと顔を覗き込んでくるエーテルーフくん……ち、近い……っ!♡

「ひ、ひぃっ♡ちょ、ちょっと……っ!♡」
「むむっ──成程。確かにキミからはハジメの波動を感じる。成程。成程成程っ。これがキミの現実の姿なのかっ」
「は、波動……。そんな、なんか、ネットミームみたいな言い方……ひゃあ゙!?♡」
「んぅ……っ♡そうか。キミが……ハジメか。ボクが、恋をする相手だな……っ♡」
「わ、わ、わあぁっ!?♡♡♡」

 慌てる俺なんかいざ知らず、エーテルーフくんは俺の頬を掴んで、むちゅっと俺の額へキスをする。
 き、き、き、き、きす!!!!!!!!!
 現代社会に於いては、とっても深い愛情表現。しかしエターニアでは愛情表現であると同時に、賢者と『来訪者』の元素間の契約でもある口づけは、賢者さん達がわりと日常的に行う行為だ。ファンの間では「マーキング」なんてセクシーな言い方もされている。
 もちろん唇のキスはいちばん最後のとっておきだけど、額や手の甲なんかは挨拶代わり。エーテルーフくんも、こんな風に当たり前にやってくるものなんだろう。

「ハジメぇ……っ♡」

 しかし……!
 とろ~ん♡と蕩けた瞳に紅潮した頬は、りょうから見せてもらった親密度がMAXのときの好き好きフェイスとまったく同じ表情だ。思わず見惚れそうになるけど、どんどん近づいて今度はまっすぐ唇にキスしてきそうな勢いに、俺は慌ててその両肩を掴んで押し返す。いくらエーテルーフくんが大胆で愛情表現もストレートだからって、それはさすがに早すぎるっ!それは個人ルートが終わったときの、絶対的なご褒美スチルなのにっ!!

「だだだだだ、だめだってば!そんな、まだ、状況だってなんにもわかってないのに!いきなり口ちゅーなんかダメだって!」
「む……っ?だがキミは適切にフラグを立て、トゥルーエンドルートへ入ったんだぞ。つまりはキミはこれからボクの全てを暴くということ。ならば代わりにボクがキミを「攻略」しても、なんの問題もないハズだ」
「ひぃっ、ゲーム内のことぜんぶ把握してる……っ!さすがはエーテルーフくん……っ!」

 すらすらと「恋愛シュミレーション」のシステムを語るエーテルーフくんに、俺はわあぁ~っと頭を抱える。
 そう、エーテルーフくんは世界の「秘密」を握る存在。それはつまり、『エント‥エレメント』というゲームと現実世界の関係……「エターニア」が造られたゲームの世界であるのを知っている存在なんだ。エンエレの最大の特徴である「メタ要素」って言うのはこのことで、トゥルーエンドのルートで解禁される情報によってプレイヤーはゲームの中の『来訪者』としてじゃなく、「ゲームプレイヤー」としてエーテルーフくんやキャラクターやゲームシステムそのものに関わっていくことになる。そして最後には、驚きと感動の結末を迎えるんだ。
 その徹底的なメタ構造が受けて、エンエレは家庭用ゲーム機にまで移植される人気作になった。りょうがエンエレにハマったのもゲームが話題になってからで、「メタ要素」っていうネタバレは避けられなかったけど……。でもそれを知っていても熱狂的なまでにりょうはエンエレに夢中になったし、そんな姿を見て、俺もエンエレを楽しめるかも、って思ってゲームに手を出したんだ。
 そこからは俺も詳しいネタバレを避けて、ちまちまとゲームをプレイし始めた。そして本日遂にその「秘密」へ辿り着いて、これからエーテルーフくんと「ゲームプレイヤー」としてエターニアを回ろうとする直前だったんだ。
 だけど……その予定は見事にすべて崩れ去ったにも等しい。だって、目の前に本物のエーテルーフくんが現れるっていう、あり得ないことが起きたんだから……!
 俺はエーテルーフくんの肩を押さえたまま起き上がって、もう一度彼に問う。なんで。どうして。こんなことが起こったのかって。

「と、とにかく、なんでエーテルーフくんがここに居るのっ!?ていうか、ほんとに、エーテルーフくん……だよねっ!?」
「いかにも。ボクはエーテルーフ。エーテルの守護者であり、エターニアの均衡を人知れず守る者だ」
「ううぅっ、ゲーム画面で見た名乗り文句そのままっ。やばっ、感動……っ!」
「うむ、うむ。大いに感動してくれ。ボクにはそれだけの価値があるからな」
「うんうん……!その自信満々な所も、めっちゃエーテルーフくんっ!」
「ふふん……♡そうだろう、そうだろう♡」
「てか声……!ゲームではボイスついてなかったのに、ちゃんと喋ってるよね……!気怠げでかわいい!あんまり詳しくないけど、有名声優さんぽい!」
「いかにもっ。ボクの声には、ボクの理想であるキャラクター・ボイスが反映されているからなっ」
「そうなの?スゴいな……!」
「どうしてボクがここへ来たのかは判らない。だが……状況から察するに、これは『来訪者』と同じ現象だと思われるぞ」
「え、つまりトリップ……いや、逆トリップ!?そんなこと、あるのッ!?」
「実際ボクがここに居るのだから起きたとしか言えないだろう」
「そ、そうだけど……っ。あっ……。りょうに聞けばわかるかな……って、りょう!!!!!!!」
「!」

 近距離で俺が出した大声に、ぴゃっ、とエーテルーフくんの髪の毛が浮き上がる。これもスチルで見たことがあるびっくりしたときの表情だ。やっぱり実際この目で見ると感動……するけど、なによりも大事なことを俺はようやく思い出す。それはりょう。エンエレ大ファンの、俺が恋する、りょうのことだ。
 そうだ、まずはりょうに、このことを教えてあげなくちゃ。最推しのサラマンダーさんじゃないのは残念だけど、まさかエンエレのキャラが「逆トリップ」してきたなんて知ったら、大騒ぎの狂喜乱舞じゃ済まないだろう。
 俺もまだなんにもわからなくてふわふわしてるけど、三人寄れば文殊の知恵。エンエレ有識者のりょうの力が加わることで、この謎現象の手がかりが掴めるかもしれない。俺は今更ながら慌てて床の布団を見るけど……布団は敷かれたままだし、その中はもぬけの殻だ。しかも枕の脇にはりょうのスマホがそのまま転がっていて、りょうだけが居なくなったような状態になっている。

「あ、あれぇ……っ!?り、りょう……どこっ!?」

 俺はエーテルーフくんをベッドに置いたまま、部屋の中を探し回る。お風呂場もキッチンも玄関も、りょうの影もカタチもなし。しかも玄関にはりょうのスニーカーが置かれたままで、外に出て行った線もなくなってしまった。
 一体どうしちゃったんだ、どうなっちゃったんだ、と途方に暮れていると、後ろからおそろしく強い力で引き寄せられる。

「おい、ハジメっ」
「えっ!?うわっ、エーテルーフくん!?な、なにっ!?」
「何故ボクが居るのに他の相手を気にしている?まずはボクと親交を深めるべきだろう?」
「いや、それも、大事だけど……っ!でも、りょうが居なくなっちゃって……!」
「リョウ?誰だ、それは?」
「誰?えっ?すっ……」
「す?」

 ──すきなひと。
 とはさすがに、(一応)、初対面の相手には言えなくて。

「と、友達だよ!」

 と、俺は言い直す。
 するとエーテルーフくんは目をぱちくりして、納得するように何度もこくこくと頷いた。

「むむっ。友人か。うむ。友人は大切だ。気兼ねのない話が出来る相手は、とても大事で特別だからなっ」
「う、うん。うん。うん……?」

 あれ……エーテルーフくんって基本エーテルの祭壇に封印されててずっと独りだったはずなんだけど、話をする友達なんて居るのかな……?
 頭の中に浮かぶ疑問に気を取られていると、いつの間にか俺はエーテルーフくんに手を引かれて、部屋まで戻らされている。

「友人は大事……うむっ。だが友人と同様に、恋人も大切な存在だ!」
「えっ?」
「つまりボクも同様に、大切な存在だということ!」
「えっ??」
「つまりハジメ。キミにはボクと愛を育む責任がある。──今すぐにッ!」
「えっ???うわぁっ!?!?」

 そして、再びベッドへ押し倒される──俺。
 そして、再び俺の上へ馬乗りになる──エーテルーフくん。

「ハジメ……♡ボクはキミに逢うため、ここまでやって来たんだ。さぁ、共に愛を深め合おう……ッ!♡♡♡」
「ひ、ひぃっ!♡ま、待って!待ってってば!ちょっと……ちょっとぉ!エーテルーフくぅぅぅん~~~!!!!」


【TIPS】
・エーテルーフは開発者と繋がった存在であり、現実世界とゲームである「エント‥エレメント」を認識した存在。ゲーム内に於いて「リセット」の機能を一任された、「システム」としての役割を持つ。
・エターニア内で口づけは元素を贈る行為。立場によっては「契約」とも位置づけられる。通常賢者と『来訪者』の間のみで行われる。
・エーテルーフの身長は159cm。好きなものは独りではない空間。齢欠落。
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