鍵盤上の踊り場の上で

紗由紀

文字の大きさ
上 下
79 / 81
Epilogue

たどり着いた場所

しおりを挟む
「ジョン君!
今日はお魚を獲りに行こうよ!
明日はカズマが来るからね、BBQのときに焼く魚が欲しいでしょ?
だから今日は釣りに行こう」


あれからアキラさんはすごく元気に動き回っている。
だいたい僕が午前中におじいちゃんと一緒に狩りに行って、午後からは自由時間という感じになっている。


アキラさんは午前中はデスクワーク的なことをしている。
よくわからない書類に目を通したり、損益計算書の数字が合わない!っておじいちゃんに詰め寄ったり…
領収証が足りない!!って田中さんと探してたりしている。


「アキラ君が経理をやってくれるようになってめちゃくちゃ助かるんじゃが……あの子はちょっとキッチリし過ぎなくらいキッチリしとるからなぁ
はぁ……また怒られたわい」


アキラさんはなんてったって『生徒の模範』を目指してる方ですからね?
僕にはよくわからないけど……


っということで午後から屋敷からちょっと離れたところにある川に釣りに来ました。
ここらへんなら魔獣もあまりこないし、来ても僕がサクッとりますから大丈夫だし、楽しく二人で釣りをしてるのに……


すごく嫌な邪魔者の匂いがする。しかも、これは不味いなぁ…
アキラさんはまだ邪魔者の存在に気づいていないようだけど、どうしようかな?


僕だけで対処したいけど、アキラさんを一人にして川に落ちたりしたら大変だし、魔物の臭いとかはしないけど、どうしようか悩んでいると……


「ふわぁ……ジョン君、見てよ!すごく綺麗な牙狼がいるよ?
ジョン君に会いに来たのかな?知り合いか何かだったりする?」


アキラさんに見つかってしまった。
崖の上に銀色の艶のある毛並みの短毛種の牙狼が僕達を見下ろすようにいる。


鼻腔をくすぐるような、熟れた果実のような匂い…小さく聞こえる甘えたような喉を鳴らす声
アキラさんと出会う前の僕ならホイホイついて行っただろうが…
今はまったくそそられない


熟れた果実の臭いは下品な芳香剤のように感じるし、甘えた声は耳障りにしか感じない
我ながら変わったなっと思うけど……
小さく威嚇の声を喉から鳴らすと


牙狼は少し驚いたような顔をして、アキラさんを睨むように見下ろしだした。

ヴヴゥヴウ…!!

本格的に威嚇の声を発すれば、銀髪の牙狼はプイッと興味を失せたっとばかりに去って行った。


「えっ?……今のって……っっっそういうことか」


アキラさんが何か察したように、下を向いて口を尖らせて辛そうな顔をしていく。
あぁ…しまった……アキラさんの察しの良さが仇になる。


「あの……アキラさん、僕は別にあんな牙狼なんて、全然…」

「わかってるよ…ジョン君が悪いわけじゃないし、あの子が悪いわけじゃないよ…
ただ、ちょっと…僕は…

………もう帰ろう、ちょっと疲れちゃったから」


アキラさんの機嫌が急降下していくのを感じながら、どういう反応したらいいのかわからずにトボトボっとアキラさんの後をついていくしかなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

放課後はネットで待ち合わせ

星名柚花(恋愛小説大賞参加中)
青春
【カクヨム×魔法のiらんどコンテスト特別賞受賞作】 高校入学を控えた前日、山科萌はいつものメンバーとオンラインゲームで遊んでいた。 何気なく「明日入学式だ」と言ったことから、ゲーム友達「ルビー」も同じ高校に通うことが判明。 翌日、萌はルビーと出会う。 女性アバターを使っていたルビーの正体は、ゲーム好きな美少年だった。 彼から女子避けのために「彼女のふりをしてほしい」と頼まれた萌。 初めはただのフリだったけれど、だんだん彼のことが気になるようになり…?

榛名の園

ひかり企画
青春
荒れた14歳から17歳位までの、女子少年院経験記など、あたしの自伝小説を書いて見ました。

Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説

宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。 美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!! 【2022/6/11完結】  その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。  そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。 「制覇、今日は五時からだから。来てね」  隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。  担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。 ◇ こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく…… ――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――

前世

かつエッグ
青春
 大学生の俺は、コンビニでバイトをしている。後輩のリナが、俺の後からバイトを始めた。俺とリナは、ただの友だちで、シフトが重なればどうということのない会話を交わす。ある日、リナが、「センパイ、前世療法って知ってますか?」と聞いてきた。 「小説家になろう」「カクヨム」様でも掲載しています。

サンスポット【完結】

中畑 道
青春
校内一静で暗い場所に部室を構える竹ヶ鼻商店街歴史文化研究部。入学以来詳しい理由を聞かされることなく下校時刻まで部室で過ごすことを義務付けられた唯一の部員入間川息吹は、日課の筋トレ後ただ静かに時間が過ぎるのを待つ生活を一年以上続けていた。 そんな誰も寄り付かない部室を訪れた女生徒北条志摩子。彼女との出会いが切っ掛けで入間川は気付かされる。   この部の意義、自分が居る理由、そして、何をすべきかを。    ※この物語は、全四章で構成されています。

ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした

黒足袋
青春
インターネット上で†吸血鬼†を自称する最強ゲーマー・ヴァンピィ。 日向太陽はそんなヴァンピィとネット越しに交流する日々を楽しみながら、いつかリアルで会ってみたいと思っていた。 ある日彼はヴァンピィの正体が引きこもり不登校のクラスメイトの少女・月詠夜宵だと知ることになる。 人気コンシューマーゲームである魔法人形(マドール)の実力者として君臨し、ネットの世界で称賛されていた夜宵だが、リアルでは友達もおらず初対面の相手とまともに喋れない人見知りのコミュ障だった。 そんな夜宵はネット上で仲の良かった太陽にだけは心を開き、外の世界へ一緒に出かけようという彼の誘いを受け、不器用ながら交流を始めていく。 太陽も世間知らずで危なっかしい夜宵を守りながら二人の距離は徐々に近づいていく。 青春インターネットラブコメ! ここに開幕! ※表紙イラストは佐倉ツバメ様(@sakura_tsubame)に描いていただきました。

ファンファーレ!

ほしのことば
青春
♡完結まで毎日投稿♡ 高校2年生の初夏、ユキは余命1年だと申告された。思えば、今まで「なんとなく」で生きてきた人生。延命治療も勧められたが、ユキは治療はせず、残りの人生を全力で生きることを決意した。 友情・恋愛・行事・学業…。 今まで適当にこなしてきただけの毎日を全力で過ごすことで、ユキの「生」に関する気持ちは段々と動いていく。 主人公のユキの心情を軸に、ユキが全力で生きることで起きる周りの心情の変化も描く。 誰もが感じたことのある青春時代の悩みや感動が、きっとあなたの心に寄り添う作品。

ゆめまち日記

三ツ木 紘
青春
人それぞれ隠したいこと、知られたくないことがある。 一般的にそれを――秘密という―― ごく普通の一般高校生・時枝翔は少し変わった秘密を持つ彼女らと出会う。 二つの名前に縛られる者。 過去に後悔した者 とある噂の真相を待ち続ける者。 秘密がゆえに苦労しながらも高校生活を楽しむ彼ら彼女らの青春ストーリー。 『日記』シリーズ第一作!

処理中です...