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第4章 Chorus
ひとときの夢のあと
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「水瀬、大丈夫か?」
合唱祭が終わり放課後になったとき、僕は水瀬の元へと向かった。冷房の効いた味気ない部屋の片隅に、水瀬はいた。外では雨音がしとしとと聞こえる。その音は、僕らを2人きりの世界にしてくれた。
水瀬はカーテンから顔を出そうとしてくれなかった。よほど辛かったのだろう。
「…うん。大丈夫。ありがとう」
カーテン越しに、くぐもった水瀬の声が聞こえた。心なしか、いつもより元気がない。
「合唱祭、どうだった?」
水瀬は、努めて明るく問いかけていた。それに応じるように、僕も自分にできる精一杯の明るさを演じる。
「僕のクラスは銀賞。水瀬のクラスは4位だった。立花先生が残念がってた。水瀬がいたらもっと良かったのにって」
そう言って、カーテン越しに水瀬のことを見た。あのときの立花先生の表情を見せてあげたかった。残念そうに、保健室の方を向いていた先生の表情を。
「…そっか。立花先生が」
「あぁ」
「…嬉しいね、そういう風に必要とされるのは」
まるで、自分は今まで人に必要とされたことがなかったと言うように水瀬は言った。僕だって誰だって、水瀬を必要としているのに。
合唱祭が終わり放課後になったとき、僕は水瀬の元へと向かった。冷房の効いた味気ない部屋の片隅に、水瀬はいた。外では雨音がしとしとと聞こえる。その音は、僕らを2人きりの世界にしてくれた。
水瀬はカーテンから顔を出そうとしてくれなかった。よほど辛かったのだろう。
「…うん。大丈夫。ありがとう」
カーテン越しに、くぐもった水瀬の声が聞こえた。心なしか、いつもより元気がない。
「合唱祭、どうだった?」
水瀬は、努めて明るく問いかけていた。それに応じるように、僕も自分にできる精一杯の明るさを演じる。
「僕のクラスは銀賞。水瀬のクラスは4位だった。立花先生が残念がってた。水瀬がいたらもっと良かったのにって」
そう言って、カーテン越しに水瀬のことを見た。あのときの立花先生の表情を見せてあげたかった。残念そうに、保健室の方を向いていた先生の表情を。
「…そっか。立花先生が」
「あぁ」
「…嬉しいね、そういう風に必要とされるのは」
まるで、自分は今まで人に必要とされたことがなかったと言うように水瀬は言った。僕だって誰だって、水瀬を必要としているのに。
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