鍵盤上の踊り場の上で

紗由紀

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第2章 Disabled

同士

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「それは、僕もだよ。水瀬」
「え?」
「僕も、救われてた。水瀬の音とか、笑顔に。水瀬みたいな人は僕の周りにはいなかったから、新鮮で、楽しくて…きっと僕も、救われてたんだと思う」
僕がそう言うと、水瀬はまた涙を零した。一粒零れ落ちるごとに、彼女が楽譜を握りしめる力は強くなっていく。
…同じ、だったんだな。僕も水瀬も。救われていたのは、2人とも同じだったんだ。誰かの音に心を震わせながら、現実にもがいて、抗って。それはきっと、僕も水瀬も同じだった。僕らは、正反対なようで、同じだったんだ。
そんな共通点が、嬉しくて、誇らしくて。こんな気持ちの名前は、なんだろう。
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