鍵盤上の踊り場の上で

紗由紀

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第1章 Encounter

はじめまして

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「私のこと、知ってる?」
合唱祭の伴奏を一通り終えた後、彼女は聞いてきた。僕だってピアノのことで質問をしたかったのだけれど。
彼女の顔立ちを見る。
先程も感じたことだが、どこかで見たことはある気がする。けれど、それがどこでなのかはあまり思い出せない。
「…よくわからない」
「え、嘘ぉー!私、結構有名人なんだけどなー」
そう言ってぐずったように顔を俯かせた彼女の姿を見て、思わず笑いそうになった。こんなに表情が次々に変化する人と話すのは、初めてかもしれない。
「…名前、何て言うの?」
「あれ、言ってなかったっけ。澪。水瀬澪」
その名前を聞いても、僕はよくわからなかった。ただ、綺麗な響きだとは感じたけれど。
「聞いたことないな」
「えー!前に陸上大会で入賞してたんだけどなぁ…あ、君は?」
だから顔を見たことがあったのかと妙に納得した。
けれど、突然僕に話が回ってくるとは思わず、つかの間の沈黙が生まれてしまった。
「僕は、相原湊斗」
そうして自己紹介を交えつつ、僕は彼女について概ね知ることができた。
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