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4章:愛を阻む運命

4-3: 力を使う玲奈

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敵国ヴィルザリアが再び侵略を始めたという知らせが、ルーフェリア王国を震撼させた。今回の侵攻は過去最大規模とされ、戦況は極めて深刻なものだった。フェンリスの戦いを乗り越えたばかりのルーフェリアにとって、再び襲いかかるこの危機は、国の存続を揺るがすものであった。


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会議室での葛藤

王宮の会議室には緊張が漂っていた。エリオスと高官たちは地図を囲み、次の戦略を練っている。敵軍の進軍ルートが赤い印で示され、刻一刻と迫る危機を明確にしていた。

「敵軍は三日後にはこの位置に到達するだろう。このままでは国境の防衛線を突破されるのは時間の問題だ。」

エリオスが冷静に状況を説明すると、将軍の一人が険しい表情で言った。

「防衛線を強化するためには、兵力が足りません。増援を送るべきですが、そのためには首都の防御を手薄にせざるを得ません。」

「首都が危険にさらされるわけにはいかない。」

エリオスが即座に返答すると、会議室に重い沈黙が降りた。その場に同席していた玲奈は、その緊張感に押し潰されそうになりながらも、自分の力で何かできることはないかと考えていた。

「……私が力を使います。」

玲奈の静かな声が会議室に響いた。全員が彼女に視線を向けた。

「銀の力で、敵の進軍を止めることができるかもしれません。」

その言葉に、高官たちは驚きと戸惑いの表情を浮かべた。しかし、エリオスだけは険しい顔をして彼女を見つめた。

「却下だ。」

彼の冷たい声が室内に響いた。

「お前にこれ以上、命を削るような真似をさせるわけにはいかない。」

玲奈はエリオスの言葉に一瞬怯んだが、すぐに決意を込めて答えた。

「でも、このままでは国が危険にさらされます。私には、この力を使う以外にできることはありません。」

エリオスは鋭い目で玲奈を睨みつけたが、彼女の瞳には強い意思が宿っていた。

「それでも……お前が倒れる姿をまた見ることになるかもしれない。そんなことは絶対にさせない。」

「私は、国のために力を使いたいんです。それが銀の花嫁としての私の役目だから。」

玲奈の言葉に、エリオスは拳を握りしめた。その場にいた誰もが息を呑む中、彼は低い声で静かに言った。

「……分かった。ただし、私も共に行く。」

その言葉に、玲奈は驚きつつも、彼の覚悟を感じて頷いた。


---

出陣の準備

翌日、玲奈とエリオスは防衛軍の一部を率いて前線へと向かった。馬車の中で玲奈は、エリオスが地図を確認しながら冷静に指示を出している姿を見ていた。

「王様……」

玲奈が小さな声で呼びかけると、エリオスは顔を上げて彼女を見つめた。

「何だ?」

「私が力を使うとき、どうか見守っていてください。それだけで、私はきっと大丈夫ですから。」

その言葉に、エリオスはしばらく沈黙していたが、やがて静かに頷いた。

「お前が望むなら、ずっとそばにいる。」

玲奈の胸はその言葉に温かく満たされた。彼の冷静さの裏に隠された優しさを感じ取ったからだ。


---

銀の力の発動

戦場に到着した玲奈たちは、すぐに防衛線を強化し始めた。しかし、敵軍は圧倒的な規模を誇り、次第にルーフェリア軍は押され始めた。

「玲奈、準備はいいか?」

エリオスが彼女に声をかける。玲奈は頷き、左手首に意識を集中させた。

「はい、行きます。」

銀の紋章が眩い光を放ち、玲奈の体を包み込む。彼女の力が発動すると、戦場全体に強大なエネルギーが広がり、敵軍の進軍を止めた。

「これが……私の力……」

玲奈はその光景に驚きつつも、さらに力を集中させた。光は敵軍を包み込み、その進行を完全に阻止した。


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エリオスの心の叫び

戦場の中央で玲奈が力を振るう姿を見ながら、エリオスは拳を握りしめていた。彼女の力がどれほど強大であるかを目の当たりにしながらも、その代償が彼女の命を削っていることを知っているからだ。

「……これ以上、無理をさせたくない。」

エリオスは心の中でそう呟いた。しかし、玲奈の覚悟を目の当たりにして、彼はその感情を抑え込むしかなかった。

玲奈が光を放ち続ける中、エリオスは彼女に向かって叫んだ。

「十分だ、玲奈! もうやめろ!」

その声に、玲奈は一瞬だけ振り返った。しかし、彼女の瞳には涙が浮かんでいた。

「ごめんなさい、王様……でも、これが私にできることなんです!」

その言葉に、エリオスは胸を締め付けられる思いだった。


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終わりに向けて

玲奈の力は敵軍を完全に撃退し、ルーフェリアは再び危機を乗り越えることができた。しかし、その代償として、玲奈の体は限界を迎えていた。

戦いが終わった後、玲奈はエリオスの胸の中で静かに目を閉じた。

「玲奈……」

エリオスの声には、怒りと悲しみが入り混じっていた。彼女のために何もできなかった自分への悔しさが、彼の胸を締め付けていた。

「お前をこんな目に遭わせるべきではなかった……」

しかし、玲奈の唇には微笑みが浮かんでいた。

「王様……私は……この国を守れてよかったです……」

その言葉に、エリオスは玲奈を強く抱きしめた。彼女の覚悟と犠牲が、彼の心に深く刻まれた瞬間だった。


---

結び

玲奈の力によって国は救われたが、その代償は計り知れないものだった。エリオスの胸には、彼女を守りたいという想いがさらに強く芽生え、彼の心は新たな決意で満たされていく。

だが、その決意の先には、さらなる試練が待ち受けていた――。

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