婚約破棄されましたが、むしろ幸せですの！ ―偽りの婚約から始まる、真実の愛―

4-2: 妨害の深まる影

貿易政策会議を目前に控えた王宮内では、セリカ・ラピッドを巡る噂がさらに勢いを増していた。その影には、第二王子アルヴィンとその婚約者マリーヌ・フィッシャーの暗躍があった。彼らは次回の会議でセリカの提案を徹底的に叩き潰し、彼女の名誉を失墜させるため、周到に計画を練り上げていた。


---

アルヴィンとマリーヌの策略

王宮の一室にて、アルヴィンはマリーヌと共に次の会議に向けた打ち合わせを行っていた。机の上にはセリカの提案資料が広げられており、二人の視線は冷たく、それを見つめていた。

「セリカの案は確かに練られているが、完全ではない。細かな矛盾点や曖昧な部分を指摘し、会議で徹底的に追い詰める。」
アルヴィンの声には、冷たい怒りが込められていた。婚約破棄後も堂々と活躍するセリカの存在は、彼にとって許しがたいものだった。

「ええ、それだけではありませんわ。」
マリーヌがにっこりと笑みを浮かべながら続ける。
「彼女が第一王子殿下の権威を利用しているという噂をさらに広めておきました。これによって、彼女が自力で評価を得ているのではないという印象を植え付けることができます。」

「噂だけでは弱い。確実に彼女を孤立させる手段が必要だ。」

「もちろんですわ。そこで、貴族の中でも影響力を持つ保守派の方々を味方につけておきました。彼らの後押しがあれば、セリカ様の提案を押し返すことは容易です。」

アルヴィンは満足げに頷き、机の上の資料を軽く叩いた。
「これで次の会議は我々の勝利だな。」


---

貴族たちへの根回し

その日、マリーヌは王宮内で保守派の貴族たちと密会を行っていた。彼女は持ち前の社交術を駆使し、彼らの懸念や不満を聞き出しつつ、セリカの提案に対する不信感を植え付けていた。

「ラピッド令嬢の案は、商人たちを優遇するものですわ。それにより、貴族の皆様が享受されている利益が減少する恐れがあります。」
マリーヌの言葉に、貴族の一人が眉をひそめた。

「確かに、そのような案が通れば、我々の立場が脅かされる可能性があるな。」

「その通りです。私たちは、この案がもたらす混乱を未然に防ぐべきではないでしょうか。」
彼女の言葉は的確に貴族たちの不安を煽り、次第に彼らの賛同を得ていった。

「では、次の会議ではラピッド令嬢の案に反対する姿勢を取るべきだな。」
「ええ、そうすれば我々の利益は守られるはずですわ。」

こうして、マリーヌは保守派の貴族たちを巧みに操り、セリカを孤立させる準備を整えていった。


---

商人たちへの揺さぶり

さらに、アルヴィン陣営は商人たちへの揺さぶりも仕掛けていた。商人ネットワークに影響力を持つ者を利用し、セリカの案が実現した場合のリスクを誇張する噂を広めていた。

「もしラピッド令嬢の案が通れば、貴族たちの反発を招き、商取引が滞る可能性が高い。」
「新たな監視体制が設けられれば、商人たちの自由も制限されるかもしれないぞ。」

こうした噂により、一部の商人たちはセリカの案に対する信頼を揺らがせ始めていた。


---

セリカ陣営の対応

一方、セリカの屋敷では、侍女エリザが新たな噂について報告していた。
「セリカ様、保守派の貴族や商人たちが次々と反対の意を示しているようです。これはアルヴィン様とマリーヌ様の策略に違いありません。」

セリカは報告を聞きながら、冷静に資料を手に取った。
「彼らがどれほどの噂を広めようとも、私の提案が正しいという事実を変えることはできません。それを証明するために、より具体的な事例と説得力のある資料を準備します。」

エリザはその冷静さに感嘆しつつも、不安を隠しきれない様子だった。
「ですが、彼らの影響力は侮れません。次回の会議では、非常に厳しい状況になるかと……。」

「ええ、覚悟しています。」
セリカは毅然とした声で答えた。
「しかし、ここで立ち止まるわけにはいきません。彼らの策略を跳ね除けるためには、私自身の力でそれを覆すしかありませんわ。」


---

決意の夜

その夜、セリカは書斎で一人、資料を見直していた。ヴィクトール・エバーグリーンから提供された事例や商人ネットワークの意見をさらに深掘りし、次回の会議で提示するための資料を整理していた。

（アルヴィン様とマリーヌ様がどれほどの妨害を仕掛けてこようとも、私は負けません。この提案が国の未来に必要だということを、必ず証明してみせます。）

彼女の瞳には、揺るぎない意志と覚悟が宿っていた。どれだけ厳しい道であろうとも、自分の力で切り開くしかない。

その決意とともに、セリカは次回の会議へ向けて最後の準備を進めていった。夜が更けても彼女の手は止まることなく、静寂の中にペンを走らせる音だけが響いていた。


---

未来を切り開くために

翌朝、セリカは窓の外から差し込む朝日を浴びながら、深く息をついた。そして小さく呟いた。

「どれほどの困難が待ち受けていようとも、私は絶対に諦めません。」

こうして、セリカは次の会議で自らの提案を守り抜くため、決戦の舞台へと向かう準備を整えていた。その背中には、強い意志と揺るぎない覚悟が刻まれていた。