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第三章「魔王討伐編」
第百三十話「副団長の決定」
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〈ゲルストナー視点〉
アルテミシア防衛パーティー:ゲルストナー、クラウディア、キング、アイリーン、クリスタル、ユニコーン、ガーゴイル、サイクロプス
俺達パーティーは聖戦士クラウディアと国王陛下と共に、アルテミシア奪還作戦を立てる事にした。城に駆け込んできた俺達に対して、陛下は幻獣の召喚のために自身の魔力を惜しみなく貸してくれた。陛下がすぐに我々に協力してくれたのは、王国でも地位の高い、聖戦士クラウディアが我々と共に行動してるからだろう。偶然にもクラウディアと知り合えた事は幸運以外の何物でもない。
サシャと別れてからは召喚士ギルドのメンバーと行動を共にしていたが、突然の魔王軍の奇襲により、ギルドメンバーとは離れ離れになってしまった。ギルドに居た多くのメンバーは命を落とした様だが、サシャが召喚した幻獣のヘルハウンドと共に、現在も魔王軍と交戦している者も居る。俺は国王に全面的に力を貸す事を伝えた。
「私はボリンガー騎士団の副団長、ゲルストナー・ブラックです。幻獣の召喚に協力して頂き、ありがとうございます」
「私はアルテミス王国国王、バルトロメウス・ベルヴァルトだ。クラウディアから話は聞いてる。アルテミシアで市民の救出をしながら魔王軍と戦ってくれていたのだな。この最悪とも言える状況を覆す事が出来るなら、私の権限が及ぶ範囲では力を貸そう」
俺は跪いて挨拶をすると、陛下は俺の肩に手を置いた。まるでサシャの様な神聖な魔力を感じる。俺は今の状況と、魔王軍に対する対抗手段を陛下に伝える事にした。俺の考えでは、クリスタルが召喚したサイクロプス、それにユニコーンとキングが居れば魔王軍との戦いで勝つ事が出来る。
キングの圧倒的な破壊力を誇る攻撃魔法、それにユニコーンの回復魔法。サイクロプスがどれだけ戦闘能力に優れているかは分からないが、キングのサポートや盾役はこなせるはずだ。今まではキングの戦力に頼り切っていたが、サイクロプスが盾役を上手くこなす事が出来れば、後はキングが片づけてくれるに違いない。
こちらには現在、幻獣二体、幻魔獣が一体居る。サシャが召喚したヘルハウンドと合流する事が出来れば、アルテミシアの大半を占領している魔王軍の魔物とも、対等な戦いが出来るだろう。俺が今しなければならない事は、キング、ユニコーン、サイクロプスの力を借りてヘルハウンドの元に辿り着く事。それから、王国軍を全面的に支援して魔王軍の城内侵入を食い止める事だ。俺は国王陛下に自分の考えを伝える事にした。
「実は一つ考えがございます。我が騎士団のメンバーには、団長のボリンガーが召喚した幻魔獣のスケルトンキングと幻獣のユニコーン、それから先ほど陛下と共に召喚した幻獣のサイクロプスが居ます。それ以外には、現在も魔王軍との交戦を続けている幻獣のヘルハウンドが市内に取り残されています。私の考えでは三体の幻獣と一体の幻魔獣が力を合わせて戦う事が出来れば、魔王軍との戦闘では負ける事は無いと思っています」
「私はボリンガー騎士団の戦力を信頼しておる。君達は知らないと思うが、海賊ギルドのマスターのエドガー。それに、戦士ギルドのマスター、聖戦士のヘルフリートと、召喚士ギルドのマスターのアルベルトに魔王討伐を命じたのは私だ。魔王討伐の依頼を受けたエドガーはすぐにボリンガー殿に協力を仰いだ。エドガーがそれほどまでに信頼しているボリンガー殿を私が信用しなければ失礼に当たるだろう。ブラック殿、それにボリンガー騎士団の団員諸君。どうか私に力を貸してくれないだろうか」
陛下は俺の申し出を快く受け入れた。幻獣三体、幻魔獣一体が居れば、王国を占拠している魔王軍との戦いに勝利出来ると思ってもらえた様だ。魔王軍の戦力は確実には把握できないが、今まで遭遇した魔王の手下は、知能の高い幻獣が知能の低い魔獣を従えて一つの小隊として行動していた。
小隊の指揮を執る幻獣さえ潰す事が出来れば、残りの魔獣は俺達や王国軍でも倒す事が出来る。先程の幻獣の召喚によって、城内に避難していた冒険者達の士気が大幅に上がった。それに、俺と陛下のやり取りを聞いていた冒険者達の中には、ボリンガー騎士団の事を知っている者も多く居るようだった。こんな所でサシャの知名度に助けられる事になるとは……。
しかし、いくら強い幻獣と幻魔獣がこちらに居る状況でも、魔王軍と戦うには圧倒的に人数が足りない。城内に避難している冒険者達の力を借りなければならないだろう。冒険者達もこのまま城内に居るだけでは状況は悪化する一方だという事は知っているはずだ。俺は陛下とクラウディア、それに騎士団メンバーで具体的な作戦を立てる事にした。大広間での作戦会議は、冒険者達も自由に参加出来るようにした。
「それではこれから作戦会議を行う! 私はボリンガー騎士団の副団長、ゲルストナー・ブラックだ! 今回の作戦はアルテミシアを占拠している魔王軍の討伐! 冒険者諸君! 我々には先ほど力を合わせて召喚した幻獣のサイクロプス、それに我が騎士団の団長が召喚した、幻魔獣のスケルトンキングと幻獣のユニコーンが居る! 敵は幻獣が魔獣を率いて小隊として動いている、小隊の数は不明! だが、こちらには幻獣以上の戦力、幻魔獣が居る! 勝算はある! アルテミシアの奪還のためにも冒険者諸、君の力を貸してくれ!」
俺が大広間に集まる冒険者に頭を下げると、陛下とクラウディアも俺と一緒に頭を下げた。
「私からも頼もう。国の最高戦力である聖戦士のヘルフリートが魔王討伐に向かっている以上、残された我々でアルテミシアを守らなければならない。冒険者諸君、力を貸してくれ……」
大広間に集まる冒険者達や国王軍の生き残りは剣を取って立ち上がった。
「国王のために!」
「王国のために!」
「アルテミシアのために!」
冒険者と国王軍の生き残りは国王に対して跪いた。これ程まで国民に支持されている国王も存在するのだな。これなら作戦は上手く進みそうだ。
「ありがとう。アルテミシアを奪還するには、この場に集まって貰った同士の力が必要不可欠だ。私の作戦は幻魔獣のスケルトンキングを中心とした作戦だ。魔王軍は幻獣率いる魔物の小隊から編成されている! 指揮官である幻獣さえ倒してしまえば、残りの魔獣は我々でも対処できる! 魔王軍の小隊と、我々騎士団が一対一で戦える状況が作れるなら、この戦いは必ず勝利を納める事が出来る!」
俺が大広間に集まった冒険者達、国王軍の隊員に語り掛けると、作戦に同意してくれる声が次々と上がった。
「要するにボリンガー騎士団が敵の幻獣と一対一で戦えるなら負ける事は無いという事だろう? それなら俺達が他の小隊を食い止めれば良いだけの事だ!」
立ち上がって意見を述べたのは、魔術師ギルドのマスターだった。現在、城の外周には彼が書き上げた魔法陣の効果で魔物の侵入を防いでいる。幻獣クラスの魔物の侵入は防げないらしいが、魔獣程度の魔物なら魔法陣に近づく事すら出来ないらしい。
「そういう事だ。皆には囮になって貰うしかない。スケルトンキングとサイクロプス、それにユニコーンが幻獣との戦いに集中出来る状況、そんな状況さえ作る事が出来れば、一体ずつではあるが、敵の小隊の指揮官である幻獣を倒す事が出来る」
「それなら我々が囮になろう」
そう言ったのは暗殺ギルドのマスターだった。先ほどクラウディアから紹介されたばかりだが、陽動に関してこの国で彼の右に出る者は居ないらしい。戦闘力では、戦士ギルドのマスターで聖戦士のヘルフリート、海賊ギルドのマスター、エドガーには劣るらしいが、今回の作戦には適任だろう。
大広間には暗殺ギルドのメンバーが四十人以上も集まっている。魔王軍に奇襲されたにも拘らず、これだけ多くのメンバーが生き残っているという事が、暗殺ギルドの戦闘力、機動力の高さの証明だ。
「ボリンガー騎士団のメンバーが敵の小隊と一対一で戦えるように、他の幻獣は俺達暗殺ギルドが引きつけておこう。俺達は正面から戦う事は不得意だが、敵を引きつける事くらいなら出来る」
正面から敵と戦うのは俺達騎士団のメンバーだ。他の冒険者や、国王軍の隊員は俺達が幻獣と一対一で戦えるように動いて貰う。いくらキングの戦力が高かったとしても、数えきれない程の魔獣と幻獣に囲まれては勝ち目がない。基本的には一対一だ。
「王国軍の兵士と冒険者諸君は、ボリンガー騎士団のメンバーに敵が集中しないように引き離してくれ! 実際に戦闘する必要はない。敵の戦力を拡散させる事に集中してくれ!」
俺達はついにアルテミシア奪還作戦を開始した……。
アルテミシア防衛パーティー:ゲルストナー、クラウディア、キング、アイリーン、クリスタル、ユニコーン、ガーゴイル、サイクロプス
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「私はボリンガー騎士団の副団長、ゲルストナー・ブラックです。幻獣の召喚に協力して頂き、ありがとうございます」
「私はアルテミス王国国王、バルトロメウス・ベルヴァルトだ。クラウディアから話は聞いてる。アルテミシアで市民の救出をしながら魔王軍と戦ってくれていたのだな。この最悪とも言える状況を覆す事が出来るなら、私の権限が及ぶ範囲では力を貸そう」
俺は跪いて挨拶をすると、陛下は俺の肩に手を置いた。まるでサシャの様な神聖な魔力を感じる。俺は今の状況と、魔王軍に対する対抗手段を陛下に伝える事にした。俺の考えでは、クリスタルが召喚したサイクロプス、それにユニコーンとキングが居れば魔王軍との戦いで勝つ事が出来る。
キングの圧倒的な破壊力を誇る攻撃魔法、それにユニコーンの回復魔法。サイクロプスがどれだけ戦闘能力に優れているかは分からないが、キングのサポートや盾役はこなせるはずだ。今まではキングの戦力に頼り切っていたが、サイクロプスが盾役を上手くこなす事が出来れば、後はキングが片づけてくれるに違いない。
こちらには現在、幻獣二体、幻魔獣が一体居る。サシャが召喚したヘルハウンドと合流する事が出来れば、アルテミシアの大半を占領している魔王軍の魔物とも、対等な戦いが出来るだろう。俺が今しなければならない事は、キング、ユニコーン、サイクロプスの力を借りてヘルハウンドの元に辿り着く事。それから、王国軍を全面的に支援して魔王軍の城内侵入を食い止める事だ。俺は国王陛下に自分の考えを伝える事にした。
「実は一つ考えがございます。我が騎士団のメンバーには、団長のボリンガーが召喚した幻魔獣のスケルトンキングと幻獣のユニコーン、それから先ほど陛下と共に召喚した幻獣のサイクロプスが居ます。それ以外には、現在も魔王軍との交戦を続けている幻獣のヘルハウンドが市内に取り残されています。私の考えでは三体の幻獣と一体の幻魔獣が力を合わせて戦う事が出来れば、魔王軍との戦闘では負ける事は無いと思っています」
「私はボリンガー騎士団の戦力を信頼しておる。君達は知らないと思うが、海賊ギルドのマスターのエドガー。それに、戦士ギルドのマスター、聖戦士のヘルフリートと、召喚士ギルドのマスターのアルベルトに魔王討伐を命じたのは私だ。魔王討伐の依頼を受けたエドガーはすぐにボリンガー殿に協力を仰いだ。エドガーがそれほどまでに信頼しているボリンガー殿を私が信用しなければ失礼に当たるだろう。ブラック殿、それにボリンガー騎士団の団員諸君。どうか私に力を貸してくれないだろうか」
陛下は俺の申し出を快く受け入れた。幻獣三体、幻魔獣一体が居れば、王国を占拠している魔王軍との戦いに勝利出来ると思ってもらえた様だ。魔王軍の戦力は確実には把握できないが、今まで遭遇した魔王の手下は、知能の高い幻獣が知能の低い魔獣を従えて一つの小隊として行動していた。
小隊の指揮を執る幻獣さえ潰す事が出来れば、残りの魔獣は俺達や王国軍でも倒す事が出来る。先程の幻獣の召喚によって、城内に避難していた冒険者達の士気が大幅に上がった。それに、俺と陛下のやり取りを聞いていた冒険者達の中には、ボリンガー騎士団の事を知っている者も多く居るようだった。こんな所でサシャの知名度に助けられる事になるとは……。
しかし、いくら強い幻獣と幻魔獣がこちらに居る状況でも、魔王軍と戦うには圧倒的に人数が足りない。城内に避難している冒険者達の力を借りなければならないだろう。冒険者達もこのまま城内に居るだけでは状況は悪化する一方だという事は知っているはずだ。俺は陛下とクラウディア、それに騎士団メンバーで具体的な作戦を立てる事にした。大広間での作戦会議は、冒険者達も自由に参加出来るようにした。
「それではこれから作戦会議を行う! 私はボリンガー騎士団の副団長、ゲルストナー・ブラックだ! 今回の作戦はアルテミシアを占拠している魔王軍の討伐! 冒険者諸君! 我々には先ほど力を合わせて召喚した幻獣のサイクロプス、それに我が騎士団の団長が召喚した、幻魔獣のスケルトンキングと幻獣のユニコーンが居る! 敵は幻獣が魔獣を率いて小隊として動いている、小隊の数は不明! だが、こちらには幻獣以上の戦力、幻魔獣が居る! 勝算はある! アルテミシアの奪還のためにも冒険者諸、君の力を貸してくれ!」
俺が大広間に集まる冒険者に頭を下げると、陛下とクラウディアも俺と一緒に頭を下げた。
「私からも頼もう。国の最高戦力である聖戦士のヘルフリートが魔王討伐に向かっている以上、残された我々でアルテミシアを守らなければならない。冒険者諸君、力を貸してくれ……」
大広間に集まる冒険者達や国王軍の生き残りは剣を取って立ち上がった。
「国王のために!」
「王国のために!」
「アルテミシアのために!」
冒険者と国王軍の生き残りは国王に対して跪いた。これ程まで国民に支持されている国王も存在するのだな。これなら作戦は上手く進みそうだ。
「ありがとう。アルテミシアを奪還するには、この場に集まって貰った同士の力が必要不可欠だ。私の作戦は幻魔獣のスケルトンキングを中心とした作戦だ。魔王軍は幻獣率いる魔物の小隊から編成されている! 指揮官である幻獣さえ倒してしまえば、残りの魔獣は我々でも対処できる! 魔王軍の小隊と、我々騎士団が一対一で戦える状況が作れるなら、この戦いは必ず勝利を納める事が出来る!」
俺が大広間に集まった冒険者達、国王軍の隊員に語り掛けると、作戦に同意してくれる声が次々と上がった。
「要するにボリンガー騎士団が敵の幻獣と一対一で戦えるなら負ける事は無いという事だろう? それなら俺達が他の小隊を食い止めれば良いだけの事だ!」
立ち上がって意見を述べたのは、魔術師ギルドのマスターだった。現在、城の外周には彼が書き上げた魔法陣の効果で魔物の侵入を防いでいる。幻獣クラスの魔物の侵入は防げないらしいが、魔獣程度の魔物なら魔法陣に近づく事すら出来ないらしい。
「そういう事だ。皆には囮になって貰うしかない。スケルトンキングとサイクロプス、それにユニコーンが幻獣との戦いに集中出来る状況、そんな状況さえ作る事が出来れば、一体ずつではあるが、敵の小隊の指揮官である幻獣を倒す事が出来る」
「それなら我々が囮になろう」
そう言ったのは暗殺ギルドのマスターだった。先ほどクラウディアから紹介されたばかりだが、陽動に関してこの国で彼の右に出る者は居ないらしい。戦闘力では、戦士ギルドのマスターで聖戦士のヘルフリート、海賊ギルドのマスター、エドガーには劣るらしいが、今回の作戦には適任だろう。
大広間には暗殺ギルドのメンバーが四十人以上も集まっている。魔王軍に奇襲されたにも拘らず、これだけ多くのメンバーが生き残っているという事が、暗殺ギルドの戦闘力、機動力の高さの証明だ。
「ボリンガー騎士団のメンバーが敵の小隊と一対一で戦えるように、他の幻獣は俺達暗殺ギルドが引きつけておこう。俺達は正面から戦う事は不得意だが、敵を引きつける事くらいなら出来る」
正面から敵と戦うのは俺達騎士団のメンバーだ。他の冒険者や、国王軍の隊員は俺達が幻獣と一対一で戦えるように動いて貰う。いくらキングの戦力が高かったとしても、数えきれない程の魔獣と幻獣に囲まれては勝ち目がない。基本的には一対一だ。
「王国軍の兵士と冒険者諸君は、ボリンガー騎士団のメンバーに敵が集中しないように引き離してくれ! 実際に戦闘する必要はない。敵の戦力を拡散させる事に集中してくれ!」
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