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第二章「王国を目指して」

第七十七話「訓練の生活」

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「師匠の仲間って、皆良い人ですよね。私は騎士団に入れて幸せです。冒険ってこんなに面白いんだって、毎日思うんです」
「そうだね。俺もクリスタルと同じ気持ちだよ。俺は十五歳の誕生日の日に冒険の旅に出たけど、まさかこんなに良い仲間に恵まれるとは……運が良かったのかな。騎士団のメンバーは俺の宝物さ。もちろんクリスタルもね」
「私も師匠に出会えて本当に良かったです! いつも皆に守って貰っていますが、いつか強くなったら、私が皆の事を守るんです」
「今の調子で訓練を続けていれば、きっと仲間を守れる召喚士になれるよ! クリスタルはいつも頑張っているからね」
「ありがとうございます……師匠!」

 俺は久しぶりにクリスタルの頭を撫でた。すると、彼女は嬉しそうに俺の体に抱き着いてきた。心地良い魔力を感じる。クーデルカがクリスタルを抱き上げ、自分の膝に座らせると、彼女はクリスタルの頭を撫でた。まるで母親と子供だな。年齢はあまり変わらないだろうが、クーデルカは魂の状態で長く生き続けている。実際の年齢は肉体の年齢よりも遥かに高い。以前、クーデルカの歳を聞いた事があるが、「体の年齢は十八歳くらい。精神の年齢は秘密」と誤魔化された事がある。

「クリスタル。あなたは良くやってるわ。」
「ありがとう、クーデルカ」
「あなたはきっと偉大な召喚士になる。サシャも追い越せるかもしれない」
「私はそのために師匠の弟子になりました。いつか必ず最高の召喚士になってみせます」
「楽しみにしているわね」
「はい!」

 暫くすると、ルナとアイリーンが稽古を終えて戻ってきた。アイリーンは葡萄酒を一口飲むと、俺の膝に頭を乗せて眠りに就いた。彼女も随分疲れているのだろう。普段は弱音を吐く事は一切ないが、アイリーンは旅の途中で仲間を盗賊に皆殺しにされている。俺がアイリーンの事を守っていかなければならないんだ。

 アイリーンをベッドに寝かせてから、俺はルナを連れて浴室に入った。ルナの翼を入念に洗い、二人で湯船に浸かると、クーデルカがタオルを巻いて浴室に入ってきた。やはりクーデルカの体つきは刺激が強い。

 彼女はそのまま湯船に浸かると、水分を吸った白いタオルが透けて、胸の形がはっきりと浮かび上がった。クーデルカは俺を抱きしめると、彼女の豊かな胸が俺の体に触れた。目のやり場がないな……ルナとクーデルカ、二人の美少女と風呂に入れるのは幸せだが、緊張して気が休まらない。

 俺は今日もクーデルカの体を洗う事になった。タオルに石鹸を付けて、クーデルカの豊満な体をくまなく洗う。恥ずかしさを堪えながら、クーデルカの体を見ないように天井を見上げている。

「サシャ、そんなに目を逸らしたら嫌よ。私はサシャのものなんだから。好きにしていいよの」
「好きにするって……そんな……」

 クーデルカは無言で俺の首に腕を回すと、自分の胸に抱き寄せた。俺の顔がクーデルカの豊かな胸に触れている。なんとも言えない幸せを感じるが、あまりにも恥ずかしい。女性経験が無い俺にとっては刺激が強すぎる。

「サシャ。私も抱きしめてあげる!」

 ルナはクーデルカの真似をして自分の胸に俺の顔を押し付けると、クーデルカは俺の体を後ろから抱きしめた。二人の体温を感じているうちに、俺はあまりにも恥ずかしくなって浴室から逃げ出してしまった。

 彼女達との風呂は魔物との戦闘よりも緊張するな。それからルナとクーデルカの髪を乾かし、ブラシを掛けてからルナを着替えさせえる。

「サシャ! 本読んで」

 と言ってルナは俺に本を渡した。今日の本は「召喚士と魔物の関係」だ。読み聞かせする本の内容は関係なく、ルナとキングはただ新しい言葉を聞く事が楽しいみたいだ。それに、彼等は一度聞いた内容は決して忘れない。元々かなり知能が高いのだろう。二人に言葉を覚えさせるにも、夜の時間にはなるべく本を読んで聞かせる事にしている。

 ルナとキングはもう眠くなってしまったのだろうか、読み聞かせを聞いている内に眠ってしまったみたいだ。キングを抱き上げてベッドに寝かせ、ルナの体に毛布を掛ける。

「ルナは先に眠ってしまったようね」
「そうだね。きっと疲れていたんだろう」
「俺達も寝るとするか……」
「そうしましょう。サシャ、腕枕して頂戴」

 俺はクーデルカに腕枕をし、彼女を抱きしめながら眠りに就いた。

 それから二週間ほど馬車を走らせた。魔物や盗賊の襲撃を受けながら旅を続けると、俺達はついにアルテミス王国に到着した。
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